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Margo-物語と糸- #31 |『秘密の花園』を染める 7

今回の物語はバーネットの『秘密の花園』。7つめの糸は「コマドリ」です。

小鳥は小さな頭を一方にかしげ、やさしい、輝く目でおじいさんを見上げました。その目は黒い露のしずくのようでした。どうやらこのおじいさんにはよく馴れていて、ちっともこわがってはいないようすです。小鳥はちょん、ちょん、とあたりをはねまわり、種や虫をさがして、せわしなく地面をつつきました。そのようすを見ていたメアリは奇妙な気がしてきました。元気のよいこの小鳥があんまりかわいくて、まるで人間のように思われてきたからです。小鳥は小さな丸い体ときゃしゃなくちばしを持ち、足はほっそりしていました。


 お屋敷にきたメアリが一番最初に心を寄せたのは、この人懐こいコマドリでした。英語名は「Cock Robin(クックロビン)」といってイギリスではとても馴染み深い存在で、マザーグースの歌にも出てくるほど。赤やオレンジの胸の色がきれいで、黒い瞳が愛らしい鳥です。このコマドリが案内役となり、メアリは秘密の庭に導かれていきます。

人懐っこいキュートな野鳥
物語のなかでコマドリは重要な登場人物ですが、日本ではあまり馴染がありません。どんな鳥なんだろうとネットで検索してみて、その愛らしさにハートを打ちぬかれてしまいました。
まんまるの瞳と体。線のように細くて長い足に、鮮やかで美しい羽色……とても魅力的な鳥です。色は違いますが、シマエナガを初めてみたときと同じ感動を覚えました。

小説家であり児童文学作家でもある梨木香歩さんの本によれば、コマドリはイギリスでとても愛されている鳥で、クリスマスカードに描かれる常連なのだそう。日本でいうところのスズメやハトみたいなものでしょうか?

しかも本当に人懐っこいらしく、物語のように庭仕事する人のそばで遊ぶらしいのです。そのため間違って人に踏まれてしまうこともあるのだそう。日本でおなじみのスズメやハトではありえない事故ですよね。

バーネットは庭を愛し、その庭でコマドリと交流していたようで『白い恋人たち』という本にはまるで恋人に会うようにコマドリとの逢瀬を楽しんでいるエッセイが収録されています。
メアリの心の扉を最初に開くというとても重要な役割をコマドリが担うのも、なるほどという感じ。メアリがコマドリに抱く温かな愛情は、バーネットの想いそのままなのでしょう。

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