見出し画像

湿地に住む少女

2021年の元旦から素晴らしい本を読了しました。
全米で500万部以上売れています。もちろん2019年で最も売れた本です。著者は動物学者であり、70歳で刊行した本書が初めての小説でした。

ノースカロライナ州の湿地に住むカイアの64歳の生涯の物語です。

彼女の父親は第二次世界大戦で足に傷を負い、障害者手当が唯一の収入源です。家とは言えない小屋に住み、妻や子供たちに暴力を振るいます。

プア.ホワイト、もしくはホワイト.トラッシュとも言いますが、主にアメリカで言う後者は単に貧しい白人を指すだけでなく、人格的にも劣っているという侮蔑的なニュアンスです。

まず母親が出ていき、兄弟たちもいなくなり、カイアは6歳で一人で生きていかなくてはならなくなります。
人間というものはどんな状況下でも生きようとする生存能力は凄いものだと驚嘆します。

後半は殺人事件が起こり、真犯人がある人によって明らかになります。

読後も深い余韻を残す良書でした。

湿地を取り巻く自然の描写が素晴らしいと思います。
冒頭を少し引用します。

「湿地は、沼地とは違う。湿地には光が溢れ、水が草を育み、水蒸気が空に立ち昇っていく。緩やかに流れる川は曲がりくねって進み、その水面に陽光の輝きを乗せて海へと至る。いっせいに鳴きだした無数のハクガンの声に驚いて、脚の長い鳥たちが-まるで飛ぶことは苦手だとでもいうように-ゆったりとした優雅な動きで舞い上がる。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?