不思議な縁
荒俣宏という作家、博物学研究家、妖怪研究家、翻訳家、客員教授、タレントなどの肩書きがある博覧強記の人がいる。
稀代のビブリオマニアでもあり、「帝都物語」の印税1億5000万のうち1億4000万を古本購入に費したという。
ある日、彼は水木しげる宅に行き、僕を弟子にしてください、と土下座した。荒俣は水木を平田篤胤以来の妖怪研究家として尊敬していたのだ。
水木しげるは軍隊入隊前、エッカーマンの「ゲーテとの対話」上中下三冊を雑嚢に入れて南方まで持っていくほど傾倒していた。
荒俣宏「戦争と読書」にはこんなことが書いてある。
「ゲーテとの対話」の訳者、亀尾英四郎というドイツ文学者は、なんと偶然なことに米子出身です(糀町)。境港にきわめて近かった土地です。
彼は昭和20年10月に栄養失調死してしまいます。配給制度を死守し、闇の物資には一切口をつけませんでした。自分の食べる分を全て四人の子どもたちに譲っていました。
亀尾は自らの信条に生き、亡くなった。
以って瞑すべし。
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