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【愛すべきポンコツな日常②】19歳のころ

最近ふと、「初めてのデートで観に行った映画」のことを思い出すことがあった。

1995年、19歳。
大学受験に失敗して浪人生活を送っていた頃。

当時はまだ携帯電話も持っておらず、初めてお付き合いした彼との連絡手段は電話(家電)か手紙だった。

電話をかけると家族が出るから極度に緊張をしたのをよく覚えている。

受験が終わってから、その夏までの数ヶ月間、月に一度くらいのデートを重ねていた。

映画デートもその一つ。
場所は確か渋谷の東急文化会館の映画館だった。

その頃、予備校で仲良くなった女の子が「とてもいいよ」と勧めてくれたのが『マディソン郡の橋』だった。
変に素直な私は何の疑いもなく、彼を誘って観に行く計画を立ててしまう。
彼も『マディソン郡の橋』についての予備知識がなかったためか、拒むこともなく二つ返事で応じてくれた。

いざ映画を観てみると、既婚女性が夫と子供の留守中に他所から来たカメラマンと恋に落ちるという、中年のラブストーリーだった。
それでも、私は映画に入り込み、感情移入しすぎて気がつくと号泣していた。まだ、初めて男性と交際を始めたばかりの19歳だったにもかかわらず…。

彼は、極めてクールな感想を抱いていた。
「俺はリアリストだから、賛同できない」とのこと。

その時は正直、「なんて冷たい人なんだろう」と思ったけれど、現実的にものを見ることができる人は不倫に賛同なんてできないのだろうなぁと今はよく分かる。

先日、Amazonプライムで約30年ぶりに『マディソン郡の橋』を観てみた。
美しいラブストーリーではあるのだけど、30年前ほどは入り込めないし、全く泣けなかった。

それよりも、”心から愛した永遠の4日間”を胸に秘め、妻として母として現実を生きた主人公の女性の生き様に深い共感を覚えた。そして、家庭のために誠心誠意尽くした女性の遺言として「マディソン郡の橋」のところから散骨をして欲しいという願い。最後はこの身を彼に捧げたい、という思い。
その描写にとても感動してしまった。

先日、48歳になった。
少し長生きをしたとしても、もう人生後半戦に入っているのは間違いない。
残された時間をどう生きるか、さらに、人生の終わりにどうしたいか…そろそろ真剣に考えてもいい時期かもしれない。



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