短歌⑯

三すくみ ひとごとのように意見するあなたに勝訴の見込みはないのに 

地下にいる蝉の暮らしが不幸だと言う権利など私にはない 

あの夏に勇魚が海のまんなかで吹き上げた潮 今胸に落ち 

おやすみをいつか最後に言う日にも横にいたいと思うあなたへ 

もうずっと疑っていることだけど当たってそうで聞けないでいる 

食べ過ぎと夜寝る直前気付いたら反省しても腹筋はせず 

あの人はパステルカラーのような人 輪郭線が空気に溶ける 

二人とも一人っきりでいるのなら時間も距離も怖くない夜 

ライターのカチッが固くなりすぎて守りたいものも分からなくなる 

勝利でも敗北でもない杯を ただ忘れられないあなたのために


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