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Week4-2)マンガ制作を授業に取り入れる方法

MediaSmartsのオンライン講座「Making Media Across the Curriculum」、四週目のゲストスピーカーは大学教授のJason Weiser氏。彼からマンガ制作を授業に取り入れる方法について動画でレクチャーがありました。

その内容を以下にまとめます。

Jason Weiser氏は25年間ストーリーテリングとメディアアートを教えてきた。新型コロナを機にカレッジの一週間のオンラインコースを基にして8歳以上を対象にしたマンガデザインコースを作った。今回のレクチャーはそれを基にしている。

1.表現媒体としてのマンガの魅力

① 紙と鉛筆とペンだけ、最低限の備品や準備で制作できる
② 視覚を重視する生徒が、文字に限定された場合よりも簡単に自分の考えを表現できる
③ 言葉の壁を越えて感情的な物語を伝えるのに非常に効果的(例:航空会社やレゴの説明書)
④ 生徒が自分自身独自の物語を作る機会や、生徒が読者に気を配る機会がある
⑤ 仲間やグループでの刺激的な共同作業の機会がある

マンガ制作ために絵の描き方を教える必要はないが、絵を描くことは、マンガ制作を計画実行するためにとても役に立つ。そのため、生徒に絵を描かせることを勧めるが、フィードバックはストーリーテリングとページの構造に集中すること。
生徒の学習に役立つのは、マンガの物語の表現方法、例えば他のメディアとの類似点やマンガ独自のものを知ること。

2.マンガの構成要素

マンガ制作にあたって、漫画の読み方について確認すること。
A) ページ:複数のコマで構成され、アイディアや相互作用、物語の瞬間などが1ページでわかるようにデザインされる
B) コマ:キャラクター、場所、物、動きを表現する。読者の注意を引くために構成され、ページ上の他のコマと関連する。
C) フレーム:他のコマと視覚的に区別するためのコマの境界線
D) 吹き出し:キャラクターが話した言葉や考えたこと
E) ガーター:コマとコマの隙間で、読者に次に何が起きるのか考えさせる間

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3.ページデザイン

マンガは、すぐに前に戻って読み直すことができたり、ページ全体を同時に見ることで、隣り合わせでないコマとコマを繋いでいる。製作者はそのような特徴を理解し、効果的なレイアウトを使用する。
例)

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① 左上から右側に読んでいく、標準的なデザイン(北米のマンガは左から右に読む)
②登場人物の動きを意識したデザイン。人物は左上から右下に移動する。
③ページの中心→左上→右上から右下へ視点を移動するデザイン

以下の6コママンガは配列通りに読むと1-2-3-4-5-6の順番になるが、3のイラストの効果で、1-2-3-6-3-4-5-6-3の順番で読まれる可能性が高い。このようなアイディアで読者を楽しませるのも良い。

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4.コマのデザイン

①映画を参考にする
・カメラフレーム(与える情報の範囲設定)
Wide:私たちはどこにいるか/Medium:誰がいるか/Close:何をしているのか
・カメラアングル(気持ちを表現する)
Looking-Down Shot:キャラクターが非力、不幸、困っている
Eye-to-Eye Shot:読者とキャラクターが一体となっている
Looking-Up Shot:キャラクターが力強い、支配的、読者が畏敬の念を抱く

② コマの切り替えのタイミング
Scott McCloud著の「Understanding Comics: The Invisible Art」に詳しい。並列したコマをどのように描くか、は6つに分類できる。
Moment to Moment/Action to Action/Subject to Subject/Aspect to Aspect/Scene to Scene/Non-Sequitur

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③ 動作の書き方
ジャンプする、泳ぐ、ダンスする、登る、飛ぶ、落ちる、持ち上げる、押す、などの動作は、まず正反対の動きを入れてから動いた後の動きを描く
(例:ハンマーを頭上に振りかぶっている絵→ハンマーを振りかざしている絵)

④時間の流れをコントロールする
コマの大きさ、余白、密度は読者の時間の感覚をコントロールできる。
・大きく、特に詳細に描かれたコマは読者を引き留め、より長くその部分を読んでいるという気分にさせる。
・同じ画像を複数回連続して載せると、間を強調できる。
・文字がないと読んでいる時間を短く感じ、文字があると長く感じる。文字がある方が長く感じるのは、登場人物がそのセリフを言うのをイメージするから。

⑥ 吹き出しの工夫
・吹き出しの書き方で、登場人物の話し方や感情を表現できる(吹き出しの線を点線・波線にする)
・セリフの長さ、で感情や登場人物の性格を表現する
・擬音語、特にデザインが工夫されたものは表現に役立つ

5.授業の進め方

経験上、生徒は授業の各段階で何をすべきかわからないと興味を失っていくので、明確にするのが良い。私がこの講座をする時には、毎日課題を出す。

1回目:何か(怪獣、椅子、なんでも可)に帽子を被せた絵を描いてもらう
→そのキャラクターが帽子を狙った誰かから帽子を取られないようにするための4コママンガを描く
2回目:そのキャラクターとウサギが何かをする4コママンガを描く
3回目:車を食べる4~6コママンガを描く
4回目:木を描き、顔もしくは服やアクセサリーを付け、木のキャラクターを作る
5回目:キャラクターの日常を4コママンガで描く
→課題は次第に発展させていく

共同で制作するのも良い。生徒が一コマ描き、次の生徒がその続きを一コマ描く、それを繰り返して物語を作っていく方法もある。

6.宿題案

宿題は個人的な思考や考察を促すものにする。授業の開始5~10分は提出された作品を褒めるようにすると良い。

私は5つの課題を出している。
① 個人的ストーリー:初めての体験(1~2ページ)
② 手順説明マンガ:情報を整理し、わかりやすく提示する(8コマ(イントロ、6手順、結論))
③ アクションマンガ:スポーツ、ダンス、ジャンプ、など
④⑤最終課題の準備(最終課題の話の準備、最終課題の作成(3~5ページ))

7.まとめ

マンガは、生徒がストーリー、自己表現、デザインを探求する上で、非常に魅力的な方法だ。生徒は、物語を構築したり、複雑なアイディアを説明したり、行動を示したり、自分自身について話すことを学ぶことができる。マンガ制作で学んだことは、小説や映画、グラフィックデザインなど、ストーリーテリングとデザインが最重要視されるあらゆる媒体の学習に応用することができる。マンガ制作は難しいが、満足感の高いものであり、ぜひ活用してほしい。

このレクチャーを受けて

私自身、この講座を受けていかにマンガが計算されて制作されているのだ、ということを思い知った。生徒の多くは絵を描くのも、マンガを読むのも好きだ。マンガのデザインが、どのように読者へ与える印象に作用するのか、について考えながらマンガ制作をすることは、生徒に多くの気づきを与えることができるだろう。そして、今後、マンガをはじめとするストーリーテリングやデザインが用いられたメディアを見た時に、メディアの消費者としてだけでなく、メディア製作者としての目線、つまり冷静にメディアを判断できるようになるに違いない。

冒頭画像:freepik / 本文挿入画像:レクチャースライドから引用

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