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『Tomizo~僕と親方の造園日記』①第一印象

親方と出会ったのはちょうど5年前。僕が28歳で、親方は72歳だった。

僕は、文系の大学を卒業後、なかなか定職に就けずにいた。

そんなとき、叔父さんから知り合いの造園屋を紹介された。

文系インドアのこの僕を、叔父さんはよく紹介できたもんだなー。職人の男魂でも身につけろってことかなぁと思いながら、恐る恐る事務所の扉を開いた。

そこには、
小柄で顔は小さく
手足も細く短い
お腹はぽっこり
いわゆる
ハンプティダンプティ体型の親方がそこにいた。

猫っ毛で白髪まじりの短髪が、ポマード(整髪料)で光っている。

目は細すぎて、開いているのかどうかすら分からない。うっすらまぶたのすき間から、黒目らしきものが見える。

印象①】親方は、略すべきではないところを略す

初めての会話がこれだった。

トミゾー「あんた、どこ?」

僕「???」

トミゾー「あんた、どこ?」

僕「どこ??えっと、ここにいます…????」


トミゾー「あー、あんた、どこから来た?」

僕「あー!えっと、西町からきました!ノリゾーです!宜しくお願いします!」

トミゾー「ん?なんて?」

僕「えっと、西町からきました!ノリゾーです」

トミゾー親方は、少し口元笑みをうかべて頷いたような気がした。
僕は、次にどんな質問がくるのかドキドキしていた。

1秒後 無言 

2秒後 無言

3秒後 無言

4秒後 無言

5秒後 無言

そして、6秒後、ついに一言発せられた。




トミゾー「ん、なんて??」

耳とおぉぉぉい!!!!!

しかも、一回ちょっとごまかして、聞こえてるふりしたー!!!!!


そう、親方は、略すべきではないところを略す。
そして、驚くほど、耳が遠い。

文脈を読み解く能力なしでは、会話ができない。

そして、なんど聞かれても、めげずに説明できる寛容さがいる。

叔父さんは、だから文系の僕を紹介したようだ。

ガッテン!!!





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