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123天文台通りの下町翁 雑記帳~平野啓一郎「死刑について」を読む~

元は死刑制度は積極的に必要とは思わないまでも、被害者とその家族の心情を思えばやむ無しと考えていた平野が、その後、小説家として作品を執筆すること、熟慮を重ねるうちに、死刑廃止派に至るようになる。そこに至る思考の過程が、大阪弁護士会主催の講演記録をもとに、日弁連「死刑廃止の実現を考える日2021」講演時のコメント等を加えて再構成した内容となってこの本では展開される。

被害者が尊重され、どう救済していけるか?人間に対する優しさという大切な価値観が社会に浸透していき、孤立、困窮した被害者を社会で支えることが、同時に加害者の置かれた劣悪な生育環境などにも目を向けることにもつながり、犯罪加害者となることを未然に防ぐ、国はそのための努力をすべきと平野は提言する。

「憎しみ」で応じる社会のままか?「優しさ」を持った社会に変わるか?どうするのかと問う一冊だ。



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