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「客は情報を食ってる」という言葉が改めて名言すぎると思う件

こんにちは、Miknerianです。

最近更新できていないなという気持ちがある一方で、ここは思ったことを気ままにつぶやこうと思っているアカウントなのでまあいっか、と思って最近更新していないMikenerianです。

今日は、「客は情報を食ってる」という言葉が改めて深い、というテーマで書きます。

字面だけでは「は?」という感じであり、「とりあえずラーメン旨そう」で終わるタイトルですが、断言します。

この言葉の真意を理解することは、今の経済を理解することと同等の価値があります!

いやそんなの知らなくて良いよ、と思うかもしれないですが、以下私なりにこの言葉の真意について以下解説したいと思います。

元ネタについて

この言葉は「ラーメン発見伝」というマンガで、主人公最大のライバルにして宿敵の「芹沢さん」が第一巻で主人公に言い放つ台詞です。

ラーメン発見伝自体は20年以上前に連載されたマンガですが、去年「ラーメン再遊記」が連載されるなど、今なお人気の衰えないグルメ漫画です。

俗に「ラーメンハゲ」とも呼ばれる芹沢さんですが、ラーメンの腕前は一流で、マーケティングにも詳しいので日本屈指の名店を経営しているという設定です。


「客は情報を食ってる」と言い放つのは、主人公である藤本がラーメンハゲの経営する店にヒロインの佐倉さんと訪れた時です。

その店は鮎の煮干しを使った最上級のラーメンを食べれるということで、大勢の客が並んでいます。

ラーメンには「濃口ラーメン」と「淡口ラーメン」がありました。

長時間並んでやっとの思いで店内に入ると、折しもテレビ局の取材班が来ていました。

中にはリポーターに対して、「鮎の風味が絶妙で…」などと語りだす客もいます。

そんな中で主人公は、周囲が「濃口ラーメン」ばかりを頼みだす状況であえて「淡口ラーメン」を食べる勇気が出ず、「濃口ラーメン」を注文します。そして率直に「濃口ラーメン」は微妙です、とリポーターに対して言ってしまいます。

その結果、先程のリポーターに絶賛していた客と口論になってしまい、店のバックヤードで芹沢さんと初の対面を果たします。

最初は「鋭い客もいるものだ」と感心していた芹沢さんですが、主人公が屋台を営んでいるという話を聞き、突然「チッ、同業者かよ」とあからさまに嫌な顔をします。

そして言い放つのが、有名な「客は情報を食ってる」という台詞です。

実は「濃口ラーメン」では鮎の風味が吹き飛んでしまうため鮎の味を感じることはできないのですが、多くの客はこってり味で人気もあるということで「濃口ラーメン」を頼み、鮎の風味がするとありがたがって食べているという裏事情があります。

つまり主人公の感想は正しく、リポーターに対して「鮎の風味が絶妙で…」と語っていた客は、感じるはずもない鮎の風味を感じていたわけです。

重要なのは、それが「鮎を使用した最上級のラーメン」というメディアの「情報」を鵜呑みにしていた結果であることです。

すなわち、「客は情報を食ってる」というのは、自分の舌で感じた味覚ではなく、メディアが喧伝しているような「情報」を頼りにし、あたかもそれを食べているかのように「錯覚」している客を揶揄した言葉なのです。


情報化社会でこの傾向は加速している

この台詞が今でも陳腐化されず素晴らしいと語り継がれているのは、あまりにも現代社会における「食文化」を的確に言い表しており、むしろその傾向は強まっている状況にあるからです。

我が身を省みると、自分の舌で味を判別することは極めて困難です。

焼肉屋で懇切丁寧に肉の部位を解説されても、正直焼いている瞬間にはその情報を忘れてしまい、「とりあえず旨ければいい」となっています。

しかしながら、もし「食べ◯グ」などで「高級なサシの部位だけを使用…」といった解説があると、あのときのサシは旨かった…などと、事実と異なる感想を述べているかもしれません。

このように、現代社会において「何かを食べる」という行為は、「対象の情報」とセットで紐付いた一つの体験になります。

・高級食材のみを使用!満足間違い無しのコース料理です
・幻の名店「◯◯」の新商品です!絶対満足できるスイーツです
・フランスの名店「◯◯」で10年修行したシェフが送る、贅沢クルーズ旅行

このような情報を頼りに、お店の情報を鵜呑みにしていないでしょうか?

むしろ、「していない」と断言することのほうが困難な状況です。

それこそ自分で釣った魚を自分で調理するといった地産地消のプロセスが無い限り、私達は「◯◯で獲れた」や「◯◯が作った」といった「情報」から逃れることはできないのです。

最近はウェブ上でどんな飲食店でも情報が載っているので、むしろそういった「情報」を頼りにお店を選ぶことも増えています。

そこで我々は、「◯◯が良かった」や「◯◯がおすすめです」といった、再現性の保証のない、第三者の意見ですら鵜呑みにして料理に対面することとなります。

そこに対して自分なりの感想があればまだ良いのですが、「◯◯って書いてあったしまあ良いか」や、「◯◯ってレビュー通りの味だった」というように、ただ情報を鵜呑みにした感想を抱いてしまうことすらあります。

これが「客は情報を食ってる」という状況ではなくしてなんと言えるのでしょうか。


自分の「感覚」、自分なりの「感想」を忘れてはならない

ここまで「客は情報を食ってる」という皮肉について、現代社会において深く根ざしている状況であると解説してきました。

しかし私は、「情報がある」こと自体を悪いとは思っていません。

知らないお店へ行くということは、昔はとてもリスクのあることでした。

何が出てくるか全くわからない、蓋を開けてみないとメニューもわからないというのは、一種のギャンブルであり、そんな一昔前の状況を、今となっては想像するのも難しい状態です。

しかし今は少し検索すれば老舗からチェーン店まで、あらゆるお店の詳細なメニューや感想までわかるようになっています。

「◯◯はレビューの点数も高くて安心できる」といった感覚は、情報社会が作り出した素晴らしい成果です。

しかしながら、安価でそれなりに旨いものが食べられる今の時代だからこそ、自分なりに「自分はこのお店が良い」、「自分はこういったテイストが好きだから、このお店はちょっと違ったかも」といった感想を持つことが大事だと思います。

まとめると、「ハズレを引かないため」、「参考とするため」に情報を利用することは全然良いのですが、「情報を鵜呑みにする」という状態だけは避けなくてはならないと思います。

というのも、「情報」が溢れているという状況は、裏を返せば「この情報を拡散して欲しい」と思っている人がいるということです。

その目的が「とにかく人を集めて金を払ってくれれば誰でもいい」みたいな人だったら、僕は嫌です。

ちゃんと「◯◯という分野で◯◯な特徴がある価値の高いものだから、興味のある人は来て欲しい」というような想いでやっている人に対して、対価としてお金を払いたいです。

ラーメンハゲの営む店は、まさに「客は金を払ってくれればいい」という価値観のラーメン屋です。そしてその姿は、「自分の理想の味」を求める主人公と絶妙に対比されています。「ラーメン発見伝」は、まさに不朽の名作といえるでしょう。

もちろん誰もが「特定の価値に対して対価を支払う」という構造では、十分な利益が出ないであろうという現代の飲食店事情もあり、そういったところも含めて「ラーメン発見伝」は非常に上手く描かれています。旨い漫画だけに。

余談ですが、「特定の価値に対して対価を支払う」という傾向はIT業界だとSaaSの流行を皮切りに、今まさに発生していることですね。その状況で利益を獲得するには、どうすればいいかという戦略は今後非常に重要です。

ということで宣伝っぽくなりましたが、今日は結論「情報を鵜呑みにせず、自分の感覚を大切にしよう」という話でした。


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