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EXIT兼近さんの『むき出し』と非行をつくるもの


お笑いコンビEXITのかねちーこと兼近大樹さんの自叙伝的小説『むき出し』を読みました。
(以下、「かねちー」と呼ばせていただきます)

テレビで見るEXITはテンションが高すぎて見てるのが辛い…
どちらかといえば苦手なタイプでしたが、

TV番組の「坂上どうぶつ王国」でEXITの2人が
自給自足生活を送る大家族を訪問した際に、

大家族の中のひとりの男の子とかねちーが2人で歩いている場面で、
男の子が
「うちはテレビが見られないから、鬼滅の刃の話題についていけない」などと、小学生らしい切実な悩みをポツリポツリと語りだし、

そのとなりでかねちーが、
すごく、その男の子と同等の存在として、共感しながら、はげまそうとして、でもうまい言葉も見つからなくて、
言葉を懸命に探すようにしながら隣ににいた、その姿が

いつもと違い、とてもリアリティーのある人間の姿に見えて、

そのシーンが強く印象に残りました。


その後、日本を騒がせた強盗事件の首謀者と
かねちーは以前、接点があったと言う記事を読み、
逮捕歴があるということも知り、
その流れでこの本の存在を知り、
彼はいったいどういう人物なのかな、と興味を持ちました。


今回、この『むき出し』を読んで、

生まれてくる環境を選べない子どもの
やり場のない苛立ちやじれったさを強く感じて

選べないなりに、そこでなんとか生きていくしかなかった人たちへの
共感とか、無視できない気持ちみたいなものが
彼の中にまだあるのかな、という感じがして、

大家族の中の男の子に寄り添っていた時の彼の姿がまた思い浮かびました。



彼が過去に重ねてきたたくさんの罪や暴力についても書かれていました。
(どこまでがフィクションかは明記されていません)

どうしてそんなことをする人間になってしまったんだろう。

家がどうしようもなく貧乏だったから?
暴力が普通にある家だったから?
勉強ができないから?
近づくことができるのが、自分と似たような境遇の人間だけだったから?
それとも、環境のせいではなく、彼の生まれ持った素質だから…?


罪を犯す人を作る環境とか、
教育の意味について考えさせられる。

中学の頃、学校にいた不良の子たちも、
こんな行き場のない気持ちを抱えていたのかな。


犯罪を犯す人は怖いし、
近くにいてほしくない、
塀の中から出てこないでほしい、
断絶していたい、という気持ちはある。

でも、かねちーが
留置場の中で初めて読んだ本のおかげで、
視界がぐわっと開けて
自分が今までしてきたことの意味と罪を理解したように、

誰が、何がきっかけで、どう変わるかって
ほんとにわからない。



少し前にこの、
「ケーキの切れない非行少年たち 」という、実在の児童精神科医が見た非行少年たちを扱った漫画も読んだんだけど


何巻かで、
自分がした罪の意味や重さをほとんど理解できていない非行
少年が、
少年院のプログラムを受けて、
同じような犯罪の被害者遺族の話を聞くことで、

初めて、自分以外の人間の人生や気持ち、
被害者側の立場を理解して、強く罪を悔いた描写があった。

側から見ると、
酷い罪を犯すようなどうしようもない人間に対して
矯正プログラムなんて効果があるのかなって疑問に思ってしまうこともあるけど、

ちゃんと刺さることもある。

もちろん、何も変わらないこともある。



表の世界と日陰の世界

こっちの人とあっちの人


断絶しているようでいて、
地続きで、

こっち側だって安心していたって、
状況次第で、あっち側の人間になる可能性もあって。


正直、サイコパス的な、
もう救いようがない犯罪者もたくさんいると思うけど、

更生させたい
わかりたい
助けたい

普通に生きたい
表の世界を歩けるようになりたい

そういう取り組みとか、気持ちも
やっぱり大事なんだなぁ、

誰に、何が効果があるかってわからないんだなぁ、
としみじみ思いました。


「自分以外の人間にだって人生がある。
 自分意外の人間も痛みを感じる。」

そういう、当たり前だと思っていた想像力や共感する力が
世界を無事に回していて

そんなことを考えられないくらい
余裕のない生き方しかできない子どももいる。


戦争やら何やら物騒な世の中ですが、
大きなことは動かせなくても、

日常の小さな想像力、
ちょっとの気持ちの余裕、

そういう小さなものが近くの人に、
なんらか優しく作用して、
平和が回っていくのであって、

当たり前に思えることが、
結局大事だなぁって。

や、なんかトピックが大きすぎるので、
このへんで終わります。



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