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「猫の可愛さ」の発見 ー 映画「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」

明けましておめでとうございます。

書きたい欲が久しぶりに湧いてきたので、ずっと放置していたブログを試しに書いてみる。
(過去の記事に何が書いてあるかわからんから、後で整理しなければ…笑)


新年初映画。
「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」を観てきました。


いやーーー、、、
「絵を描くって素敵!猫って素敵!」な、ちょっと切なくもほっこりハートフルウォーミング、新年にぴったりの希望を持てるお話し!

を期待して観に行き、
激しく裏切られました。

好きか嫌いかと言われるとよくわからないのですが、
見終わった後は頭がぼーーっとして足元がおぼつかず、

映画の言葉的に言うと「地球に帰ってくるのが困難」な状態になったので、
ある種の「強度」がある映画でした。


【ルイス・ウェインとゴッホ】

猫を描くイラストレーターのドキュメンタリー映画ということ以外、
事前情報はほとんど入れずに、
彼が描いた「猫の絵」だけ検索して見てから行きました。


検索した時には、
「なんかこの猫たち、目がいってない、、、?サイコ、、、?
でもなんかかわいいし気になっちゃう!
こういう画風が流行ったんだなぁ。」
ぐらいの気持ちでいたのですが

映画を観て納得。
彼の危うい精神状態の均衡から、
そのまま、あの危うい猫たちは生まれ出ていました。

無理やり単純に言ってしまえばゴッホ的。

見終わってから気づいたんですが、
主演のベネディクト・カンバーバッチは
「ゴッホ 真実の手紙」でゴッホ役を演じていた方だったのですね。


(こちらは2023年1月現在、Amazon Primeの会員特典で見られます。
セリフらしいセリフを使わないのに、危機迫る演技が圧巻です。オススメ🌻)

メンタルやられた画家を演じさせたら
カンバーバッチさんの右に出るものはいないですね。


【ヴィクトリア朝の女性】

話は戻って。
舞台はヴィクトリア朝のイギリス。

この時代は、バッスルドレスやメイドにアフタヌーンティーと、
個人的に好きな要素がてんこもりなのですが、

女性の人生という観点から見るとなかなかしんどいです。

上流階級の女性は、基本的に結婚、それができなければ住み込みの家庭教師(ガヴァネス)になるくらいしか道はありません。
そのガヴァネスも、どちらかというと「残念な、かわいそうな女性」という見方が広まっていた模様。

主人公ルイスが恋をするのは
妹たちの家庭教師として家にやって来た
年上の女性。

この時点で、家族や「世間」から非難轟々。

批判を振り切って結婚するも、
おそらく家庭の名誉はガタ落ち。

「家の格式が命」の時代にこの決断をしたことが、
結果的に妹たちが結婚できない要因の1つにもつながり、
ルイスが生涯にわたって、妹達の面倒を見る運命になったのかな、と思いました。
(その辺ははっきり書かれていないので、想像ですが)


現代の視点、また主人公寄りの視点から見ると、
妹たちはいつまでも兄の懐事情に頼りきりで、
彼女たち自身は何もしてないように見えるので、「なんなんだよ」って感じですが、

当時の時代背景からすると、
妹たち自身、本当にどうにも生きていく手立てがなかったんだろうと思います。

健康な大人の女性たちが(妹の1人は心を病んでいましたが)
暇を持て余しているのに、
何の手立てもなく困窮していく。

ルイスも、結婚相手の家庭教師も、妹たちも、
誰が悪いと言うわけでもなく、
だからしんどい。

女性も外で働くべき!
なんてことは全然思わないんですけど、
選択肢がないって恐ろしい。

今の自分は、
男性女性関係なく、
1人で、家の中で仕事ができるという
奇跡的な時代の条件のもとで
働いてお金を得ています。

孤立やら、
(ネット上での)つながりすぎやら、
なんかいろいろある時代ではありますけど、
働けるっていうのは助かりますね。
ありがた〜〜。

ちなみに、同時代のイギリスの画家と言えば、
超お馴染みピーターラビットの生みの親、
ビアトリクス・ポター


(この映画もオススメ!)

彼女も上流階級の生まれで、
作家・画家としての仕事をすること、
また編集者と結婚することについて、
親から猛反対されて苦労してます。
(それでもやり切る!強い!)



【猫の発見】 

当時のイギリスでは、
猫は忌むべきものとして
ペットにする対象ではなかったようです。

(みんな犬を飼ってたのかな?
ポターさんはうさぎを飼ってたから、うさぎも一般的だったのかしら)

ルイスは、
少し変わったところがある妻が猫をペットとして迎え、可愛がるのを見て、
病気の妻を喜ばせるために猫の絵を描き始めます。

これが、妻の死後も続く
彼のライフワークへとつながります。

ルイスの描く猫を見たイギリスの人たちが、
猫の可愛さや楽しさを発見し、
猫をペットとして飼うようになります。

猫を可愛がる妻の瞳を通して、
猫の可愛さを見出したルイス。

ルイスの瞳を通して見て描かれた
擬人化された猫のイラストを見て、

猫の可愛さを見つけて、猫を愛でるようになるイギリスの人たち。

そこにあったのに気づかれなかった
「可愛い」が
発見され、天才の目から手を通して出力され、
よりわかりやすい形で世に広まっていく。

これも、ルイスが言うところの「電気」のようなものかしら。


日本で「カピバラさん」が流行して、現実のカピバラにもスポットライトが当たってきた過程を思い出しました。

それにしても、映画内の猫が
美化されることもなく、
微妙に不気味な感じでそこら辺をウロついているのも、
なんかリアルで面白かったです。笑


【まとめに入るよ】

地球で生きるのが下手な天才が
愛と重圧と狂気に翻弄されて生きる物語。


ちなみに↓は、今年の年賀状用に
私が描いた猫の絵です。


これくらいの平の凡くらいのほうが
まぁ生きやすくてええんでないの、と思う元旦。

本年もどうぞよろしくお願いします。

みけ みわ子

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