新・ユネスコ教育勧告の「ICTの活用」試訳をしてみる(第6条(l))

ユネスコ(国連教育科学文化機関(UNESCO))は1974年に、本邦では俗に「1974年ユネスコ教育勧告」と呼ばれている、ユネスコ加盟国に対して要請することがらを記した文書を採択している。今年2024年、その勧告を新しくしたものを採択する予定がある。
教育はそのひとつの役割が人権と基本的自由のためにあると標榜しているのがユネスコだが、その新しい勧告の最終案(UNESCO, 2023)、「目的」の部に、もとの勧告には含まれていなかった概念である「メディアと情報のリテラシー、コミュニケーションとデジタルのスキル(Media and information literacy, communication and digital skills)」という項目見出しがある。
世界の国々は、ICT(情報通信技術)の活用と教育をどう結びつけようとしているのかを表している、一つのものの見方として、その部分だけだがこの勧告(案)の仮訳をつくってみた。


【2023年ユネスコ教育勧告(改定最終案)】  
Ⅱ 目的
第6条 具体的には、教育は変革的であるべきであり、読み書きの能力と計算能力の強固な基礎を築き、次のような知識、技能、価値観、態度、行動の発達を可能にするものでなければならない:
(l) メディアと情報のリテラシー、コミュニケーションとデジタルのスキル:
情報や知識を、さまざまなチャンネルやテクノロジーを通じて効果的に検索し、アクセスし、批判的に評価し、倫理的に作成し、利用し、広める能力。それはまた、オンライン・オフラインを問わず自分の権利と責任を理解しつつ、そして、デジタルの安全性を高め、プライバシーを保護するために、安全で効果的、洞察力に富み、敬意を払った方法でデジタル環境に関わりながら、偽情報や誤った情報、ヘイトスピーチ、ジェンダーに基づく暴力を含むあらゆる形態の暴力、有害なコンテンツ、オンラインでの虐待や搾取に対してレジリエンス(回復力)があり、それらを察知でき、それらに対抗する能力も意味している。


ICTの活用を通じ、たとえば児童生徒が色々と悩む場面や、場合によっては意見に相違のある人との対話に挑戦するなどの教育活動を求めているようでもある。また、この目的は学校の教育だけでは荷が重い。児童生徒や学校だけでなく家庭や社会も、このような能力が備わることを目指さなくてはならないだろう。

United Nations Educational, Scientific, and Cultural Organization (2023, June). Recommendation on Education for Peace and Human Rights, International Understanding, Cooperation, Fundamental Freedoms, Global Citizenship and Sustainable Development. https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000386653

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