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コルドリエ修道院01/サンテミリオン村歩き#14


ガアデ通りを坂下に向かって行くと、東の村外れへ向かうポルトブルネ通りの道との二股にぶつかる。ポルトブルネ通りは、ゆっくりな登り道だ。少し行ったところ右側にオーベルジュ・コマンドリーAuberge de la Commanderie(2 Rue de la Prte Brunet, 33330 Saint-Émilion)というホテルがある。
http://www.aubergedelacommanderie.com/
ここは僕のお気に入りで、わりとよく利用する。二階の部屋の窓がサンテミリオン村に向いており、村が一望できるからだ。朝起きた時に、窓から見た景色が何とも宜しい。窓を開けると聞こえてくる村の音も、とても宜しい。
部屋数は幾つもないので予約は取り難いがトライする価値は充分あると思う。

そのホテルの前にTHE CORDELIERS'CLOISTERコルドリエ修道院跡がある。
コルドリエCORDELIERとは、Corde Liés (取り付けられたロープ)のことで、フランシスコ会の修道士が纏う茶色のマントの周りに、足元近くまで垂れる重い結び目のロープのことを指す。フランシスコ会修道院という意味だ。
いまは、サンテミリオン村唯一のクレマンを手がける生産者の持ち主になっていて、Les Cordeliers Cremant de Bordeaux Exclusive Brutが知られている。
https://www.wine-searcher.com/find/les+cordelier+exclusive+brut+cremant+de+bordeaux+france
予約無しで見学できるので、ぜひ寄ってみたほうがいいと思う。

オーベルジュ・コマンドリーのちょうど目の前。ホテルを出るとTHE CORDELIERS'CLOISTERコルドリエ修道院跡の大きな石造の門がある。すぐに保存状態の良い回廊がある。此処は定期的に様々な村のイベントが催されていて、地元の食品の生産者が集ってマルシェを開いている。ワインもそうだけど、こうした地元の生産者に逢えるのが嬉しい。
僕らもオーベルジュ・コマンドリーへ泊った時は、こうしたマルシェに朝一番で何回か訪ねた事がある。
その時のことを話したい。

その時は、朝から雨で朝食が終わってから何処へ出かけるか考えあぐねていた。嫁さんが言った。
「昨日、前のコルドリエにマルシェやりますというプレートが出てたわよ」
「ん。行ってみよう」
着替えをしてホテルを出た。・・とはいっても通りを跨いだだけだが。
コルドリエのマルシェは意外に混んでいた。歩いているのは観光客というより、村の人たちのように見えた。こうしたマルシェは、きっと生活の中で買い物の手段として必須なのかもしれない。そんなふうに思えた。
「旧い回廊なんでしょ?ただの遺跡にしないで、こうやって生活の中で使っているなんて素敵よね」嫁さんが言った。
「もともとは、村の外に在ったそうだ。1100年代後半1200年代全般に建立したものらしい」
「らしい?」
「村の北にある畑Clos des Menutsの中に、最初の修道院の名残が僅かに残っているそうだ。僕は見てない。Menutsというのはガスコン語で"小さい"という意味だそうだ。おそらく村の中に移った後も修道院は有ったんだろうな」
「それで"小さい"という名前?」
「そうかもしれない。ちなみにClos des Menutsはメゾン リヴィエールがの所有している。Clos Des Menutsという名前でワインを販売してるよ」
https://www.clos-des-menuts.com/
「どうして村の中に引っ越ししたのかしら?修道士が増えたのかしら?」
「戦争だよ。フランス王妃だったエリノアールが王室を出奔して、唐突にガスコーニュの領主だったアンリ二世と結婚したろ?そして二人はアンジュー帝国を興した。1154年だ。その時、サンテミリオンは自動的に彼らのものになったんだ。最終的にアンリ二世は英国王になる。そのためサンテミリオンは英仏戦争の中に巻き込まれてしまうんだ。村が外敵を防ぐために城壁を作ったのは1100年代後半だ。城壁の外Menutsに有ったコルドリエ修道院は戦火に塗れた。おそらく修道士たちは城壁内に逃れていただろうな。たしかに戦争が終わったが抗争は納まらなかった。コルドリエ修道院が略奪から逃れて移転することに決まったのは1338年だ。建物は、完成するに50年要した。1383年までかかった」
「城壁内へ越したのは戦争が終わってからなの?」
「フランスとアンジュー帝国の戦争は1259年に後者が敗北したことで終わってる。しかしギュエンヌ領主とユー伯爵およびギネス伯爵の抗争は終わってなかったんだよ」

無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました