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夫婦で歩くシャンパニュー歴史散歩3-3-1/ランス旧市街散歩でガロロマンを見つつ戦争について考える


https://www.youtube.com/watch?v=JCktpBo1MzQ

●Musée Saint-Remi de Reims
53 Rue Simon, 51100 Reims,
http://www.musees-reims.fr/

サンレミ博物館へ行くにはバス06がいい。駅名はそのままSt.Remi。サン=レミ旧大修道院の傍らにある。ここには何度も通う必要ない。一度いけば十分だが、サンレミ博物館のほうは極めて面白い。イルドフランス(中央フランス)を核にして、先史時代からルネサンスまでの人類史を豊富に扱っているのだ。展示物は、先史時代/ガリア時代/ガロ・ローマ時代/メロヴィング朝時代そして中世と共に、ギリシャ/エトルリアの遺物。そして古代の武器、装備、制服など、幅広く"欧州史"を見つめている博物館だ。これほど充実しているのは他にない。
僕が足繁く通っているのは1階の17世紀ごろの食堂とキッチン部分を利用したガロ・ロマンのセクションで、此処はモザイク/彫刻/埋葬石碑/陶器/模型などで埋め尽くされている。ハイライトはローマ軍総司令官フラウィウス・ヨヴィンSarcophage de Jovinの石棺で、見事なレリーフで往時の栄華を見事に伝えてくれている。

1階地域考古学セクションには部屋が7つ。それぞれが年代別にまとめられ、先史時代から中世の終わりまでがテーマだ。見るべきはアウグストゥス帝(A.C.4)の息子たちが建てた慰霊碑の遺物である。中世・ゴシックの部屋は、何回も続いた戦禍で燃え尽きてしまった市内の建物の残骸をコレクションしている。中で有名なのは13世紀の音楽家の家の1階部分を再建したもの、そして廃墟となったサン・ニケーズ教会の遺物だ。タペストリー室には、聖レミの生涯を描いたタペストリーがある。これは1523年から1531年に制作されたという。続く三つの部屋では、ロタール王の頭/サン レミの燭台の脚/リムーザンの琺瑯など、年代別に500年分が展示されている。同修道院と大聖堂の歴史を追っている。その先に有るのが地域軍事史セクションで、ここはガリア戦争からドイツの降伏に至るまでを追い、武器/装備/模型などが年代別に展示されいる。展示物を含め12世紀の修道院の様子を状態よく保存しているのが素晴らしいと思う。


「ランスは戦争の傷跡をしっかりと残しているのね」嫁さんが言った。
「何度も何度も色々な戦争に晒されてきたからな。ノルマン人略奪から始まって、パリ革命時代の略奪まで、多くの財宝が支配者たちによって簒奪された。そして第一次世界大戦だ。あの戦争は人類史上最初の総力戦だった。徹底して機械による代理戦だった。その代理戦によって戦死者数はカタナ持って兵隊同士が戦うより格段に増えたんだよ」
「機械による代理戦・・」
「そう・・人類が粛々と重ね積み上げてきた無数の文明と文化が、機械によっていとも簡単に瓦解焼失したしたんだよ。そして第二次世界大戦だ」
「シュワちゃんのターミネータってそのことなのね」
「ん。"機械と言う花嫁"はヒトの五肢として強大に発達した。ヒトは世界を半日で一周できるし、どこまでも巨大なモノを飛ばせる力を持った。・・でも」
「でも、心は??発達した身体に見合ったほど育っていないということ??」
「サンレミ博物館の地域軍事史セクションは、正にその人間の愚かさ/稚拙さのモニュメントだ」

僕らは、博物館の大階段からファザードをしばらく黙って見つめた。そして黙ったまま博物館を出た。
「くたびれた。お茶しよう」
「・・そうね。重すぎ」
「・・たしかに。直視すべきだが、晒されてはいけない"負のオーラ"だ」

博物館をでると、シモン通りを挟んでバンク・ポピュレールBanque Populaireが見える。
その横に①Le Flechというレストランがある。
2 Esp. Fléchambault, 51100 Reims,
https://www.nobigroupe.com/flech-reims/
サンレミ博物館で草臥れた体力を此処で休めよう。

「サンレミ博物館は古い施設じゃない。市が此処を博物館として指定したのは1978年8月だ。それまで此処は病院として使われていた頃のままだった。1968年より、先の大戦の破壊から少しずつだが街の修復を試みる事業が始まるようになってきて・・その一環として、この修道院をサンレミ博物館にしたんだよ」
「え~そんなに新しかったの?」
「ん。実はね、ガリアまで辿れる博物館は、ランスにはまだ此処しかないんだ。サンレミ博物館の建立はとても重要な試みなんだよ。ガロロマンだけじゃない。フランク人の手に落ちてからのランスをテーマにした総括的な博物館も、ランスには今のところ此処しかないんだ」
「そんな風には思わなかったわ。もう何百年も、このまま在ったと勝手に思ってたわ」
「違う。素材は有ったが、整理はされていなかった。それができるのは、ランスは歴史が多層的に詰まった街だからだ。それは此処でしかできない仕事だ。素晴らしい仕事だと僕は思うな」


無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました