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パリのマルシェ歩き#49/ヴァンヴの古本マーケットと蚤の市


「ヴァンヴの古本マーケットに行きたい。で、午後から蚤の市にも寄りたい」
「古本探し?」
「ん。最近、ブキニストが失速してるからな。ヴァンヴまで行きたいんだ」
「そうねぇ、セーヌの周りは観光客用のお土産ばかりですものね」
「ん~、開いてないとこも増えた」
「いいわよ。でもいっぱい買い込むと帰りが大変よ」
帰りはUberで‥と思ったけど、言わなかった。

Marché du Livre Parc Georges Brassens(104 Rue Brancion, 75015 Paris)は14区。地下鉄は13番Porte de Vanvesが一番近い。距離的には、Marché Puce de Vanves(16-18 Av. Georges Lafenestre, 75014 Paris)の方が近いんだけど、先に古本マーケットへ寄ることにした。
実は、食事の場所の問題なのだ。蚤の市の回りには何もない。古本マーケットの方は割とある。だから本漁りをした後、どこかで食事した後、蚤の市に行くというコースを考えたのだ。
「古本マーケットの前にイタリアンが有ったろ?お昼はあスこにしよう」
「了解」

それで日曜日の朝遅く、10時ごろにPorte de Vanvesへ到着した。目の前にトラムT3aが走っている。トラムの道に沿ってルフェーブル通りをporte Brancionへ歩く。
「この通りのもう少し外側にティエールの城壁南側が有った。さっきの、地下鉄の出入り口が有ったPorte de Vanvesも、この交差点porte Brancionもティエールの壁の通用門だった。いまはカケラも残ってないけどね。門の名前と、パリから門へ向かう通りにブランションRue Brancionとして残ってるだけだ」
300mほど市内に向かって歩くと左側にジョルジュ・ブラッサンス公園Parc Georges Brassens(2 Pl. Jacques Marette, 75015 Paris)が見える。古本マーケットはその入り口近くにある。
「ここはパリ市南側の食肉市場だったんだ。マルシェ・オ・シェヴォーMarché aux Chevauxという名前だった。その名の通り馬肉市場だったんだよ」
「馬肉?」
「ん。使役用としても馬は重要だったしな。食用にも使えた。20世紀半ばまで、この公園の中に幾つもの厩舎/屠殺場/取引場が有ったんだ」
「いまは何もないんでしょ? 」
「ん。一部に当時使われていた壁面や煉瓦作り建物が有るくらいだ。それと鐘楼が残っている。あとは解体されてる。閉鎖は割と遅くて1970年初頭だって。そして暫時、公園になっていった。古本マーケットが出来たのは1987年になってからだ」
「意外に新しいのね。でも見た感じ、馬肉のための屠殺場という雰囲気は全然ないけど」
「そだな」

Marché du Livre Parc Georges Brassensはブランション通りから入れる。柵のような真鍮の扉を抜けると、屋内式のマーケットである。約8.7ヘクタールあるという。出店者は20ほどで、各出店者たちは専門分野が有るようには見えなかった。それでも出店者の一人に「I am looking for an unusual book on wine or whiskey」と訪ねたら、少し離れたコーナーを指差した。だいたい誰が何を得意にしているかは、わかっているようだ。こういう時は聞くのに限る。
教えてくれたコーナーで、傍にいた出店者に同じことを訪ねると、スラスラと本を目の前に並べてくれた。・・なるほど。当たり前なものが大半だったけど、幾つか稀覯本が並べられた。
Jancis Robinson"The Oxford Companion to Wine"の旧い版があった。それとサルバドール・ダリの"The Wines of Gala"があった。これには驚いた。
Charles Walter Berryの"French Wines" や Michael Broadbentの"The Great Vintage Wine Book" が並べられた。
「これいいわね」と嫁さんが手にしたのはElizabeth Davidの"A Book of Mediterranean Food"だった。
最初は、綺麗な写真の載った古本探しと思われたが、少し経つと出店者が持ってくる本が大きく変わった。・・値段も替わったけど。


無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました