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ジンファンデルの話#04/ナパワインはブサ可愛かったのに

カルフォルニア・ワインの「フレンチ化」は、今世紀に現れた大きな特徴です。ナパバレーでさえ、カルトワインの大半は全くフランスワインに瓜二つです。美味しさの起点をフレンチに置いているとしか思えないものばかりです。まったくアメリカ的ではない。
・・というと物議を醸しだすかもしれませんね。では一体何が"アメリカワイン"ぽさなのか?と。
例えば、イタリア各地のワインを飲めば、そこにはその土地らしさのベクトルを強く感じます。例えば、ドイツワインを飲めば、やはりドイツ的な個性を感じます。それはスペインでもそうです。そうした「しさ」を感じるワインが、アメリカ西海岸にもあります。
そうした曰く言い難い土地から醸しだされる「らしさ」が、土地のワインの面白さだと僕は思うのですが、マーケットを見つめると、そうした「らしさ」よりも、売れる量のほうが遥かに重要なンだな・・と思ってしまうものが多くなった。
そんな風に思ってしまいます。
たとえばイタリアのスーパータスカンなどはその典型です。世界種の葡萄を使い、最新製法を駆使して最も巨大なアメリカマーケットが喜ぶワインに徹する・・そこには「らしさ」などはない。ま。日本酒で言うなら 獺祭でしょうか。"らしくぶらず"を否定した"個性だけ"のモノ。それも「売れること」だけを目的とした"個性"を追いかけるのが21世紀的な風潮なのかもしれません。
オレゴンは、後発故にピノノワールに特化し、それも徹底的にフレンチピノ化した。公式なブラインドにおいても、オレゴンピノはブルゴーニュピノと分かち難くそっくりなことが確認されています。
コロッケのモノマネどころではない。まったくそっくりなのです。オマージュ/ブリコラージュしていない。僕はそこに「奇異」を覚えるのですが・・その話はしない。

実は、カルフォルニアワインを見つめると、そこには良くも悪くもアメリカワインぽさがあった。特にその「ぽさ」はジンファンデルに、カベルネ・ソーヴィニオンに出た。ダメダメなピノにもあった。はは♪ブサかわいいってヤツですね。それはそれで、僕個人は好きです、
しかしフランス国内の大きな生産者が、カルフォルニアへ進出すると、高品質な、あたかもフランスワインのようなクオリティ/味わいのワインを作るようになると・・小生産の所謂カルトワインの生産者も一斉にフレンチワイン化したのです。それが今世紀の西海岸ワインの特徴だと云えましょう。
僕らはいま、カルフォルニア製ピノノワールを飲むとき「美味しい。まるでブルゴーニュに比べて遜色がない」と褒めます。僕はその言葉を聞くたびに・・美しい写真を見て「まるで絵のようだ」と褒め。美しい写実的な絵を見て「まるで写真のようだ」と褒める人々を思い出す。
まるで・・で良いのか

フランスのENTAV-INRAの呪縛から如何に逃れるか・・これが今後のカルフォルニアピノ/オレゴンピノの目指す所のように思えます。もちろん新世界においても・・です。
しかしそのためには飲み手の協力が必要です。「まるで・・のよう」から解き放れた飲み手の支持が無ければ、らしく・ぶらぬワインは生まれません。育ちません。
土地のデバイスが顕著な葡萄ピノノワールだからこそ、それは可能だと僕は信じます。

無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました