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夫婦で歩くブルゴーニュ歴史散歩6-12/ディジョン#12

https://www.youtube.com/watch?v=29sqp--qdK4&t=539s

プラルスPâtisserie Chocolaterie Pralus DijoN(78 Rue de la Liberté, 21000 Dijon)はブリオッシュが絶品!・・とのこと。小さなテーブルがあるので、ここで楽しめる。一緒に出るカフェオレもちゃんとしている。
http://www.chocolats-pralus.com/
リベルテ通りを真っ直ぐ駅の方へ歩くと、150m程度で着く。お昼は回っていたので意外に混んでいた。
「ここは、バケットも美味しいのよね。買って帰ろうかしら。今日はボーヌへ戻るんでしよ?お昼はどうするの?」
「ここで、ブリオッシュだと、このままランチはキツくないかい?」
「そうねぇ、この後どこか寄るの」
「予定はない。街歩きしてからバスでボーヌへ戻ろうと思ってる」
「またバスで?列車じゃないの?列車の方が早いのに」
「でも、村までわりと歩くだろ?アレだったら、バスでボーヌ村の前に行く方が良いと思うんだよ」
「そう・・ということは今乗ってもボーヌのレストランに着くのは2時間後・・ということね」
「そうだな。ディジョンでランチ済ますか?」
「ボーヌでいいわ。早いディナーにしよ」
「ところで・・さっき思いつかなかったんだけど、マリーって結婚したのが20歳よね」
「ん」
「で・・馬から落ちたのが5年後。25歳だったの?」
「そうだ早世した人だ。ブリュージュの聖母教会Onze-Lieve-Vrouwekerk(Mariastraat, 8000 Brugge)に埋葬された。マクシミリアンの遺言で、これの心臓がマリーの墓に納められている。
https://www.museabrugge.be/
激動の中で、自分をもって力強く生きた女性だった。
江村洋先生が『ハプスブルク家』の中でこんなこと書いてるよ。
二人は云ってみれば父親が決めた見合い結婚だからな。結婚式の前日に顔を合わせた二人だったから・・『マクシミリアンが初めてブルゴーニュ公国の土を踏んだとき、この国の言葉フラマン語もフランス語も知らなかった。妃となったマリア(ブルゴーニュ公シャルルの王女)もドイツ語は理解できなかったから、夫妻ははじめのうち、たどたどしいラテン語(これが中世から近代にかけての教養人の共通語である)で話し合うという、半ば滑稽な事態も生じた。これは若い君主夫妻の間ばかりではなく、オーストリアから大挙してやってきた王子の供奉の者たち全体と、彼らを迎えたブルゴーニュの現地人との間でごく頻繁に見られた現象である』・・江村洋先生のお話は目に浮かぶようだな」


・・しかしフランス国王の敵愾心は強く、ブルゴーニュは続く戦乱で荒廃した。修道院で守られた葡萄畑は維持できたが、農民も職人も、その畑・産業は殆ど機能マヒに陥ってしまった。唯一製塩所だけが産業として生き残るという状態だった。
それでも1493年に交わされたサンリス条約Treaty of Senlisによって、ブルゴーニュ/アルトワ/シャロレーは(後継者であるマリーの夫)マクシミリアンのものへ戻るのだが、復興するには長い時間が必要だった。

「ブルゴーニュ公シャルル豪胆王が目指したの事の脅威がこの事からよく見えるだろ?
フランス王は自国の東側に、イングランドから北海沿岸、ライン川下流域にかけてひろがる北西ヨーロッパ都市圏と、地中海全般に広がる北イタリア都市圏を繋ぐ巨大国家が出来上がることを何よりも恐れたんだよ。愛憎絡みの恨み話じゃない。それがオノレのものにならないなら徹底的に潰そうとしたんだ。
そしてその一方、北海を握って北西ヨーロッパ都市圏を掌握していたフランドルを政略結婚で取り込もうとした。つまりその成果が出るまでブルゴーニュは半身不随にしておきたかった・・という訳だ。その悪意に巻き込まれた人々は塗炭を舐めた。ブルゴーニュが正常になるまでは100年以上も時間が必要だったんだ」
「・・それが500年前のブルゴーニュね。いまの街を見ながら、その苦労を思うのは難しいわね」
「うん。しかし船舶技術もロジスティックも時代と共に大きく進化するんだ。大航海時代を産み出すほどね。その技術的進化が、ブルゴーニュの北西ヨーロッパ都市圏と北イタリア都市圏を繋ぐハブ・・という利点を意味のないものにしてしまう。ブルゴーニュ争奪戦争は「強者どもの夢の跡」になってしまう。・・考えてみると・・塗炭を舐めながら我慢強く生き残った農民/職人/商人たちが勝った・・ということだな」
「最後に勝つのは民。王ではない・・といういつもの話ね」
「ん。God helps those who help themselves.だ」


無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました