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ゆく水や 何にとゞまる 海苔の味#02

【いわゆる僕らが知ってい薄い乾燥海苔は「板海苔」という。基本形は縦7寸横6寸が本寸法、全形という。これを10枚合わせて1帖。うちの年寄りどもは「焼きのり」と言っていた。そういや、佃の叔母は裏表を煩く言ってたことを思い出した。海苔は簀に貼って乾かすが、もう片面は刷毛を使って撫ぜる。その刷毛跡が残るのだ。
「焼くときゃね、表を焼くんだよ。間違って裏から焼くと焦げ目ができるからね」と言ってたな。
・・この稿を書きながら、気になってキッチンから山本山のいただきもンの箱を開けてみた。
ん~たしかに、裏表はあるな。真っ黒で裏表のない奴だと、勝手に思い込んでた。海苔見ながら、しきりに感心している僕を不審に思ったようだ。
「NYCで時折見かける真っ黒けの人。目がないと裏だか表だか判んないひと。焼き海苔はアレと同じだと思ってた」
「"おかずのり"ばかり食べてるからよ。海苔に裏表があることは誰でも知ってるわよ」と呆れかえられた。
"おかずのり"と言うのは全形を8つ切りにしたもの。これはこれで筒に入れて売られてる。最近はコンビニでも見かけるサイズだ。
「なるほどなぁ~だったら、桜紙にも裏表があるのかなあ~」
「あるわよ」と即応された。
ふうん、さっそく銀座通りのイトーヤに見に行ってみた。なるほど、裏表ある。詳しそうなオジサン店員に聞いてみた。
「手すき和紙は、手漉きした紙を圧力をかけて脱水したのちに、木製の干し板に張り付けて乾燥させます。そのとき張り付けるのに刷毛を使います。鳥の子系の紙の場合、刷毛の跡が付いたほうが裏です。奉書系の紙は張り板のほうが裏になります」なるほど、海苔と同じだ。鳥の子系/奉書系という知らない言葉が出てきちゃった。

なぜ「和紙」として連想したかというと、板海苔の製法は間違いなく浅草あたりに有った紙漉きの技法の転用だからだ。


無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました