夫婦で歩くブルゴーニュ歴史散歩6-11/ディジョン#11
https://www.youtube.com/watch?v=EWXMq2-6CCc
https://www.amazon.co.jp/Marie-Bourgogne-Ou-grand-h%C3%A9ritage/dp/2875931598
マリー・ド・ブルゴーニュMarie de Bourgogne(1457-1482)は、ブルゴーニュ公シャルル豪胆王の一人娘だった。彼がナンシーの戦いで死んだとき、マリーは20歳だった。シャルル豪胆王死後、名実ともブルゴーニュの支配者になったフランス王ルイ11世は、自分が名付け親だったことも有り後見人を装っていた。そして我が子シャルル8世との婚約を勧めようとした。シャルル8世はこのとき7歳だった。
マリーはこの政略結婚を嫌悪した。実は、シャルル豪胆王はオーストリア大公ハプスブルク家・フルードリッヒ五世の子マクシミリアンと彼女が結婚することを望んでいた。オーストリアとの血縁関係は、何よりも強い安定と繁栄をブルゴーニュにもたらすからだ。彼女もそのつもりでいた。
しかしフランス王ルイ11世は強く我が子シャルル8世との結婚を迫った。マリーはこれを拒否しため幽閉された。それでも断固拒否するマリーにあきれ返ったルイ11世は、彼女に大特許状という文書に署名させてブルゴーニュ領ネーデルラント・へントGentへ追いやった。彼女のシンパたちがブルゴーニュ領内で暗躍しないためである。このヘントで、マリーはマクシミリアンに切々なる手紙を書いた。自分は今でもあなたとの結婚を望んでいると・・
„Sie dürfen nicht daran zweifeln, dass es, was uns betrifft, meine feste Absicht ist, der Entscheidung meines Vaters zu folgen, und dass es mein Wille ist, Ihnen eine treue Gattin zu sein. Ich bin sicher, dass Sie mir gegenüber dieselben Gefühle hegen.“
この手紙を読んだマクシミリアンは1477年5月21日にウイーンを出発し8月18日にヘントに到着した。
そこで新郎新婦は初めて出会った。そして翌日1477年8月19日、ヘントの聖バーフ教会Sint-Baafskathedraalで挙式を挙げた。
「ヘントの聖バーフ教会Sint-Baafskathedraalって初めて聞いたわ」と嫁さんが言った。
「東方正教会側の聖人だ。ヘントのバーボSaint Bavo of Ghentと云われる。600年代に出た聖人だ。よく剣と鷹を持った騎士として描かれる人だ。ハヤブサの守護聖人だと言われる。ヘントにある聖バーフ教会は彼のためのカトリックの教会だ」
「行った?」
「行ってない」
「行ってないのにしゃべってるの?」
「ごめん。江村 洋先生の本で読んだ」
「ふうん。ま、こんど行きましょ」
「はい・・で。フランス王ルイ11世は激怒した」
「そりゃそうでしょ」
「大特許状という赦免状を出して、財産も相応に渡してのしっぺ返しだったからな。そのうえ資金繰りに困っていたマクシミリアンに用立てまでしてるんだ。まあ怒った怒った。そしてこれがきっかけで、15年に及ぶブルゴーニュ継承戦争が勃発しているんだ」
「資金繰りを用立て・・って、マクシミリアンはオーストリア大公ハプスブルク家の一族でしょ? お金に困っていたの?」
「ん。困っていた。・・・それに」
「それに??」
「そうとうチャラい奴だった。マクシミリアンは自分をテアダンクという名前に換えて三冊自伝的小説を書いているんだ。これがなかなかのメロドラマ冒険小説で、読むと不快になるよう自己撞着作品だ。彼の本『テウルダンク』で、主人公テアダンク(自分のこと) が、美しき花嫁ミス・エルンライヒのもとへ向かう旅路で、様々な危険に出会い、これを克服するという話だ」
「映画になりそうね」
「なってる。デンマークでtvドラマ化してる」
「見てる?」
「見ないの?」
「見たよ。ちょろっとね。感想はノーコメントだ」
「あ・そ」
「ところがだな・・」
「あ・でた。ところがだか」
「ところがだな・・結婚5年後、1482年。マリーは馬から落ちて死んでしまうんだ。唐突にね」
「あらま。お子さんは?」
「三人いた。長男・二女三女だ。
ちなみにインスブルックInnsbruck宮廷礼拝堂Hofkirche Innsbruck(Universitätsstraße 2, 6020 Innsbruck)にマクシミリアン慰霊碑があるんだが、ここにはマリーのブロンズ像があるよ。
https://www.tiroler-landesmuseen.at/haeuser/hofkirche/
「行ったの?」
「行った。前々職時代に。仕事で。ホーフブルク宮殿Hofburgがデカかった」
無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました