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木挽町新古細工#05/けんけんぱ

拗ねて片寄る布団の外れ 惚れた方から手がのびる

うちの店で待ち合わせをしてお帰りになるご夫婦が多い。いずれも鴛鴦な方ばかりだ。昨夜もおひと組あった。ところが旦那さんのほうが中々いらっしゃらない。付きあい酒が長引いているらしい。それでも漸う来られると奥様が開口一番言われた。
「もう呑むだけ呑んじゃったでしょう」
「そんなことあらへん。ええとこで、おいとったわ」
「うそ。もう目が据わってるわよ。」
「すわってへん、すわってへん、しゃがんどるだけや」
「いつも訳わかんない言い分けするの」奥さんが僕に言った。
「だから酔っ払ってないなら、片目ケンケンしてみなさいよって、いつも言うの」
「片目ケンケン?」とうちの嫁さんが言った。
「そう。片目つむってケンケンさせるの」と奥さんが言った。
「するんですか?」僕が言う。
「もちろんするで。でもな、酔っ払って片目ケンケンは転ぶかもしれんからな。玄関のチャイム鳴らす前に廊下で二・三度練習してから帰ることにしてるンや」
「そりゃ大変ですね」と僕が言う。
「ん。で、そのときに転んだりするんや」 
「ほんとにバカみたいよね。ドン!と音がするからソッとドア開けると、玄関の前に転がってたりするの」と奥さん。嫁さんと二人で大笑いしてる。

ケンケンね。懐かしい言葉だ。
"けん"は片足のこと。これに"ぱ"をつけるとケンケンパという遊びになる。"ぱ"は両足。けんけんぱで片足片足両足ということ。
ロウセキで地面に丸を書いて、その上をポンポンポンと跳ぶ遊びだ。両方からスタートしてスピードを競い鉢合わせたらその足のままジャンケンをして勝ち抜けて行き、相手側のスタート地点に先にたどり着いたほうが勝ち。 今の子はしないだろうなぁ。

「ケンケンパって、アメリカにもあるんですか?」と奥さんが僕に聞いてきた。
「ホップスコッチHopscotchって言うんです。ありますよ。差異はありますけど、似たような遊びです。でも日本ほどシンプルじゃないです。」
「やっぱりケンケンするの?」と奥さん
「あ。どうなのかな。片足でケンケンすること。英語でなんていうのかな?・・こんど娘に聞いてみますね。」
「マスタが調べ終わるまで、我が家は片目ケンケンパ無しやな」旦那さんが言った。
「なにそれ」

無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました