猫田による猫田のための、長傘。

梅雨だ。

ここのところいつも
雨ばかり降る。

雨は嫌いじゃないけれど、
いつもよりも心配事が増える。

鞄の中身は大丈夫かな。
この靴を履いても大丈夫かな。
タオル要らないかな。

その代わりに一つはっきりするのは
迷いなく長傘を持てるってことだ。

私の長傘は世界一かわいい。
パステルカラーのペンギン柄。

木製の柄のその傘は、
たくさんの骨が並んでいる。
安心感のある黒い骨。
たよりがいのある黒い骨。

それを覆い隠すように、
パステルグリーンの傘布が
ぴんと張られたかわいい傘。

開いた傘の縁いっぱいには
いろどりよりどりみどり、
7色のペンギン達が肩を寄せて
おしくらまんじゅうをする。

雨の日の気分は、
長傘を使えるってことで
ボーナス１ポイント。

たかが１ポイント、
されど１ポイント。

雨の日はたくさんのペンギンを連れて、
お散歩をするんだ。

雨の日のペンギンは
心なしか楽しげに見える。
雨粒がポンポン鳴ると、
パステルカラーのペンギンが、
跳び跳ねている気がしてくる。

ペンギンを連れて歩く私は
最強なのだ。

駅へと向かう道は、
いろんな傘で行く手を塞がれる。

でもどの傘よりも、
私の傘とペンギン達が
いちばんかわいい。

シンプルな傘と道をゆずりあって。
真っ黒な傘が突進してきて。
ビニール傘がぶつかって。
でもどんなことがあっても、
私の傘とペンギンはかわいい。

みんなかわいいから大丈夫。
みんないるから大丈夫なのだ。

猫田による猫田のための、雨傘。