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猫田による猫田のための、幽霊。

幽霊。

幽霊とは、
理論で説明できるものでなく、
いるかいないかというよりも、
信じるか信じないかで話されるものたち。

ホラーってやつは…

夏ですね。
ホラーコンテンツが幅をきかせる季節です。

ホラーは苦手です。
観ている私を驚かそうとか、
怖がらせようという明確な意思を感じるから。
それがホラーの存在する理由なので、
ホラーとは長期的に相容れません。

ホラーというのは、
人を恐怖させるという目的で、
人によって生み出されたもの。
という認識が間違ってないなら、
ホラーと怪異とは全く別の存在。

なのでホラーは苦手だけど、
怪異のことはまだ苦手ではありません。
まだ身の危険を感じたことがないので。

幽霊というと

怪異と呼ばれるものの中にも
いろいろと種類があるかと思います。

原因不明のなか、
理解不能な出来事が起こる怪奇現象。
そこになにかが存在しているが、
人の理解の範疇を越えてくる化け物おばけ。
不思議なことを引き起こす、
その原因として想像されている妖怪。

そのなかでも幽霊というのは、
なんとなく分かりやすい。
現世の人間との違いは、
肉体のあるなしだけではないのでしょうか。

死んでしまった人とか動物とか、
そういうものの精神エネルギーのようなものが、
何かの理由で残っているもの。
そしてそれを人が視認したもの。
そういうもの幽霊と呼ぶのだと思います。

私は幽霊を見たことはないのだけど、
見える人の話を聞く機会はあるので、
存在するけど見えたり見えなかったりする。
そんなものだと思います。

死んでしまった人の魂というか霊というか、
そういうものの存在について、
私はある程度信じていて。
というのも
そういうような出来事があって、
存在を受け入れる運びとなりました。

幽霊を信じるきっかけ

ある年のお盆のことです。
小学生だった私はいつも通り、
祖父母の家に帰省していました。

その日は迎え盆。
おじいちゃんは「お迎えに」といって、
家のお墓へ向かいます。

「ご先祖様を迎えに行ったんだよ」
おばあちゃんは言います。
「ご先祖様が帰ってくるときは、
外の提灯が一回大きく揺れるの」
「じいちゃんが帰ってくる少し前にね」

「そうなんだ」
私は提灯を見張ることにしました。

おじいちゃんはなかなか帰ってこなくて、
少し退屈になってぼんやりしながら、
軒先に吊り下げられた大きな提灯を
眺めていました。

どれくらいたった頃か、
不意に提灯がぐらりと揺れた。
誰かに横からぽんと叩かれたみたいに、
提灯が動いた。

風が吹いたのだろうか。
いや、風のない静かな夕方だ。
紛れもなく不思議なことが起きた。

そうすると大きな窓の外から、
おじいちゃんの足音が聞こえてきました。

ご先祖様が帰って来たんだ!
そうとしか考えられません。

「帰って来た!」
おばあちゃんに知らせに走りました。
「そうでしょう?」
「仏様のところにいらっしゃるの」
「ろうそくを付けてごらん」

おばあちゃんの言うとおりに
ろうそくに炎を灯してみました。
じぃっと見てみると、
炎は曲がったり揺れ動いたり、
なんだか不思議な動きをしています。

「ご先祖様が帰っているときには、
炎がゆらゆら揺れるんだよ」
「お経を唱えると喜ぶの」
「見ててごらん」

そう言うと、
おばあちゃんはお経を唱え始めました。

ろうそくの炎はみるみるうちに大きくなって、
いっそう強く輝いたり、
ぐらぐら揺れ動いたりした。

全部おばあちゃんの言うとおりになった。

あのお盆の日から、
ご先祖様の存在をなんとなく信じているし、
きっと他の幽霊とかたましいとか、
そんなものもあるんだろうな。
と思っています。

幽霊忌み好み

見たことのないものだけれど、
幽霊はきっと存在している。

もしかしたらいるかもしれない。
そういう幽霊たちのことは、
好いている訳でも忌み嫌う訳でもない。

しかし、
ホラーとして消費される幽霊たちに限っては、
大変おそろしく、そして苦手だ。

通りかかった人であったり、
偶然居合わせてしまった人であったり、
彼らはそういう人をを驚かせ恐怖させ、
果てには呪い殺そうとさえする。
全く理解ができない。

そういう幽霊というのは、
私とうっかり遭遇したとしても、
驚かせ恐怖させ呪い殺すかもしれない。

しかし私としては、
少なくとも私の知る限り、
幽霊の恨みを買うことをした覚えはない。
喧嘩を売った試しもない。
呪い殺される筋合いがない。

特に理由もなく、
ただうっかり出くわしただけで、
精神的にも肉体的にも
被害被るとは御免なのだ。

幽霊的な事情

いや待てよ…
私は思い直す。

幽霊にも事情があるのか?
そう、例えば…。

元は人間だったにしても、
幽霊のことをなってしまうと
とたんに生き物に深い嫌悪を抱いてしまう。

人が恐怖する顔に
とてつもなく興奮してしまい、
つい追い求めてしまう。

私が気づいていないだけで、
知らぬ間に彼らを踏みつけにしていた
私への復讐心が根付いている。

人間の頃に、
普通に恨みを買っている。

もしそうだとしたら、
理解はしないけど、
受け入れはできるかもしれない。

今後出会うすべての幽霊へ

しかし事情があるからといって、
説明もなしに人を脅かすというのは、
正直どうかと思う。

だから、
もし幽霊に頼めるとしたら、
頼みたい。

私と遭遇するときには、
事前に事情を説明してくれないか。

ダメなら事後でもいい。

どうしても人間を妬み呪ってしまうなら、
ああ幽霊になるとそうなのかって思う。

恐怖する顔が見たかったのなら、
できれば私以外が良かったと思う。

知らぬ間にひどいことをしてたなら、
ごめんなって思うし。

ただここに居ただけだけ…っていうなら、
私の勘違いだったわってなる。

何も知らされないままでいるのが、
いちばんしんどい。

幽霊さんたち。
できるだけ穏便に事情を説明してから、
呪ったり驚かしたりしてください。
よろしくお願いします。

による のための、幽霊

私には見えないけれど、
きっと存在している。
怖いものは苦手で、
存在するのは別によくって、
事情を説明してくれるなら、
きっと受け入れて見せる。

それが、幽霊。

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