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猫田による猫田のための、ケーキ。

特に何もない日に、
ケーキが食べられるようになった。

大人になったというよりは、
自由になったってことだ。

何もない日に食べるケーキは、
ひそやかな楽しみという感じがして、
私はとても好き。

ひそやかな楽しみといいつつ、
カフェに行ってはケーキに心惹かれ、
そこそこの頻度でケーキを食べている。

これはひそやかな楽しみなのか?
もはや違うのではないか?

ひそやかでもそうでなくても、
もう自分が良かったら良いです。
自分本位にしか生きられないので。

ケーキを食べるのはつまり幸せってことです。

ケーキは何というか、
コレクター精神が騒ぐフォルムをしている。

おおよそ同じ大きさのもので、
かつ色とりどりのケーキたちが仲睦まじく、
ショーケースの中できれいに並んでいる光景。
いつまでも眺めていられる。

数多並ぶケーキたちの中から、
いくつかを厳選しなければならない。
その苦しみと言ったらもう…

ケーキをショーケースに初めて並べたひとは、
天才でありながら悪魔である。

ひとの欲望を顕在化させる。
洋菓子屋のショーケース、恐ろしい子。

ショーケースから出てきて、
お皿に乗ったケーキを目の前にすると、
ちょっとだけ背筋が延びる。

整ったケーキには必然的に、
きれいに食べねばという義務感が伴う。

横にはフォーク。
時にはナイフも付き添って。

いかに上手く食べるのか。
さながらそれとの一騎討ちのよう。

そしてたいてい私は敗北する。
それは些細であり確かな敗北。

手以外で食べ物を食べるのは、
あんまり得意ではない。
だからコンビニのコロッケが好きだし、
コンビニの中華まんが好き。

いっそ『三月のライオン』の熊倉さんみたいに、
ケーキをワシィッとつかんで、
ンガァッっと食べたい。
いつかどこかでやりたい。

でも基本的に、
整ったケーキの圧に私は勝てないから。
フォークで戦いに挑んで、
未来永劫ちょっと敗北する予定です。

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