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私と祖父とクレッセントハウス

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「古き良き時代」の面影を、現代までそのままに残したクレッセントハウス。2020年、ついにその歴史が幕を閉じます。様々な想いを胸に、作家として大きな影響を受けたこの場所についてを、… もっと読む
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#古美術品

古代美術商としてのクレッセントハウス 〜西洋古美術の魅力〜 <中編>

(前編) 後編 Q これは中国の古いものですね。 石黒 そうです。中国の隋だと思います。こういうメダリオン、貼り付け模様、これは完全にイランあたりの銅器の打ち出し模様を陶器で真似したものなんです。ですから、唐三彩なんかのこういう貼り付けもようといったものも、こういったものから発展しているし、そういうような意味で面白いですね。イランと中国との交流という意味でこのコレクションに入っているわけです。 ここにあるのは、ガラスのビーズなんですけれども、古代ガラスで、上の段が紀元

平山郁夫氏による、「石黒孝次郎氏の思い出」

クレッセントハウスは、古美術商として誕生し、後にフランス料理店になりました。レストラン時代からをご存知の方で、美術商としての側面をご存知の方は少なくなってしまいましたが、クレッセントハウスの本当の顔は、古美術品で満ち溢れ、各方面の専門家の先生方が、クレッセントで食事を取りながら、英国風の建物の中、アンティークで統一されたインテリアに包まれながら、祖父と古く美しきものについて談笑している、そんな風景だったと思います。 いつしか、古美術商あってのレストラン、レストランあっての古

レストランクレッセント、63年の幕を閉じます

「其の作業は私にとって彫刻であり 絵画だった 比の館は作業に参加した人々の作品であった 夢を実現させる為に どんなに多くの個人や組織が努力された事か 其の方々に深い感謝の意を込めながら 私はこんな夢を思う こゝを訪れた人々が ”古き良き時代"に皆んなが持って居た あの心のゆとりを一瞬でも味わって呉れるようにと そして 一目この館を今は亡き妻豊子に見せたかったと 石黒孝次郎」 クレッセントハウス創立時レリーフより。 レストランクレッセント。1957年に設立されてから63年の

最愛の妻・豊子に捧げたコレクション 〜Mr. & Mrs ISHIGURO Collection 〜 古美術商として始まったクレッセントハウス

母がまとめた記事をこちらに記載します。 こちらは、祖父が寄付を希望した中近東文化センターより出版されている「古く美しきもの」から、館の責任者の方に承諾を得て引用させていただいています。 レストランクレッセントは、もとは、祖父が生涯情熱をかけた古美術商としてのギャラリーでスタート致しました。クレッセントハウスは、レストラン、ギャラリー、チャペル・・・全ての場が一つとなり融合しあって、初めて輝きをもつ館でした。 祖父にとって、クレッセントハウス設立を見ずして若くに亡くな