たかなし
元日――不肖の住む古い木造の住宅も揺れて、窓から見える電柱も電線もぐわんぐわん揺れまして。しばらくはあたふたとしておりました。
そして……。
書けぬ。いつものアレが、再発。
元日の地震からこちら、不安がつのって、心配が高じて、気もそぞろで。書けぬ。
火を使うのも控えるようになって、寒い三が日、松の内を過ごして……。
アレよという間に、もう10日。その間、何も手つかず。
――しかも。
そういう、気分が塞ぎそうなときにかぎって。例年と違う現象が。
以前の日記でも書かせて頂いた、庭の小鳥たち。
あの小さくて可愛い野生たちが、今年の冬は……正月の揺れからこっち、ピタリと、ぱたりと。全く姿を現さなくなってしまった。
例年なら、やかましいくらいのスズメたちの喧騒、ヒヨドリの絶叫で目が覚める冬の朝のはずが……カーテン越しに空が白み始める頃になっても、
シーン ……という、沈黙の音だけ。
沈黙の春はここにもあった。 やだー
それが1日だけではなく、数日、正月三が日からずっとその沈黙が続いてしまうと……不安の上に、凶兆とか予感とかいう重しが、暗く、冷たく。乗っかってしまって。
――地震の前には、野生動物がおかしな動きを見せるという、俗説。
ナマズが暴れるとか、犬猫、ネズミが騒ぐ。鳥たちがいなくなるとか、そういうやつ。
個人的には、俗説、証拠のない迷信だとは思いつつも……。
あれだけにぎやかだった庭が、たった1日でこれほどに沈黙してしまうと……理性に、不安が勝ってしまう。否、理性が不安にすがってしまう。不安に、依存して「だから仕方がないんだ」という逃避の理由にするようになって……。
――10日ほど、無為に、ムダにしてしまって。
或日。
T氏「おう。どうせ何も手につかないんなら、これでもやって遊んでろ」
……と。こんなページを紹介していただいて、不肖もぽつぽつと。
性格診断テスト
不肖の診断結果
不肖「なるほど……。 いわれてみればそうである 感ありますねえ」
T氏「なお、俺は建築家タイプだった」
不肖「……仲介タイプの天敵じゃないですか やだー それはそうと」
不肖「私の書くお話のキャラクターに、あんまり深慮策謀タイプと言うか、計算高いタイプが出てこないのは……私の性格と申しますか、無いものは書けない、創作は作者の限界を越えられないため。という可能性がビー玉レベルサイズで存……?」
T氏「そうだっけ。まあ、直情型とかそういうのが多いような――悪党はゲップが出てくるぐらいいっぱい出てきて、いっぱい死んだからどれがどれやら」
不肖「……あと、私のタイプは人の触媒を、中間にあってアレコレするのが得意、そういうタイプだとありますね。うむ、なるほど」
T氏「中間といえば。お前が資料だと言って会社に持ってきた本の――」
不肖「ありましたねえ、そういう小話。……ビールくらいは飲んでもいいじゃないですか、やだー」
T氏「だったらシャキシャキ書いて、飲み代を稼ぐんだよォ」
不肖「華厳の滝のごとく真っ直ぐな正論が、弱ったココロにざくざくと」
先程の「中間になりたくない男」は、本書に綴られた一編。
私の敬愛する大作家、開高健先生が編纂した世界の小咄集です。世界を股にかけて旅し、様々な美食や美酒、珍味怪味を体験し、数多の食卓を楽しんできた開高健先生が――海外のテーブルマナーのひとつ、席にあったちょっとした笑話を、そのシチュエーションごとにあつめて。フルコースの食前酒から前菜、スープ、肉と魚、そして最後の甘いものから葉巻、締めくくりに水を一杯。という流れで、様々の笑話が集められているとても楽しい本です。
この本が出版されたのはもう40年も前ですが……その内容、小咄自体は、全く古びていないというか。おそらく100年後の食卓でも、火星植民地やくじら座タウの調査船の中でもそのまま使えることうけあいの――くすっと笑える、ちょっと考えてお腹痛くなるぐらい笑う、人類共通の話題でニヤニヤしちゃう、笑ったあとに考えさせられる。そんなお話しが満載の一冊です。
そして……本日。朝の庭で。
「んっ? ん? んっ、んんん???」
おまえかーーーーーー!!
庭に、大きな猛禽が、鷹が来ておりました。種類はよくわかりませんが、オオタカの若鳥のようにもハイタカのようにも見える、でかい猛禽くん。
これが、庭の木に止まって野鳥の眼光で獲物を探しておりました。
正月早々、庭に鷹がくるとか。吉祥っぽくはありましょうけれど……。
そりゃ、小鳥たちもいなくなりますよねー。
小鳥遊=たかなし
これを考えた人、思いついた人って、よく野鳥を観察しているなあと感心した、そんな冬の朝でした。
かくして。
書かねばならぬ。いざ生きめやも(誤訳風味)
年明け早々、仕事をためてしまい、こちらのnoteも更新が間延びしてしまいましたこの不肖、打ちひしがれて草臥れてしまいそうな体と精神に鞭しつつ、今年も頑張ります。
末筆となりましたが、能登半島地震で被災された方々に心からお見舞い申し上げます。被害にあわれた方々、地域が一日も早く平穏な日常を取り戻せますよう心からお祈り申し上げます。
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