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どうぶつの終末期医療を考える

こんにちは!みんなのミカタ。第10投稿目です!記念すべき2桁*°⋆*
投稿久しぶりになってしまってスミマセン💧

というのも、最近、重症の子に当たることが多くって…何例診ても、患者さんは十人十色だから色々と悩むところが多く、医療の難しさを実感しています。

今日は少し振り返りながら、終末期医療について考えてみたいと思います!

色んな意見も聞いてみたいです.


印象的だったの症例の振り返り

①食欲不振が主訴の猫ちゃん。

食欲不振で来院し、胃腸炎を始めオーソドックスな治療をしたけれど全然反応せず、検査値を見ても全然異常がなくて、唯一、炎症の値だけが高い状態でした。

画像診断で、肝臓から肺の方に臓器が飛び出しているような所見があって、横隔膜ヘルニアを疑い精査を提案しましたが、持病の心臓病により麻酔をかけるのを躊躇されていました。

いったん入院治療に反応してくれたのですが、
そこから入退院を繰り返します。腫瘍の可能性を考え、上診を何度か提案するも、入院で一般状態が回復すればなんとか…と先延ばしになっていました。

だんだん弱っていって、胸水が溜まって、その精査によって、初めて癌が発覚しました。
原因は、横隔膜ヘルニアかと思っていた場所が
実は癌で、もう手を施すことができず、やむなく
胸水による呼吸困難で亡くなりました。

精査を勧めていたとはいえ、費用も桁違いですし、オーナー様の意思を尊重した上で、できる範囲で、
検査検査検査…となってしまい、結局原因を追究できずに終わってしまったことが悔やまれます。
強硬的にでも精密検査を受けさせるべきだったのか…。自問自答しても答えが出ないものです。


②慢性腎臓病が悪性転化したわんちゃん

ずっと腎臓病を患っていて、できる限り補液に通ってくれたわんちゃんがいました。
腎臓の値は常に高く、慢性的に貧血で、だんだん食が細くなっていましたがなんとかつないでいる状態でしたが、
ある時いきなり発作が起こって、そこから一気に状態は悪化し、数日で亡くなってしまいました。

腎臓病は治らない、いつかは悪くなると頭では
わかっていても、悪性転嫁が急激すぎて、病院に入院して数日の間に亡くなりました。

どんどん変わっていくわんちゃんの様子に、ご家族の気持ちがまったくついていかず、涙を流される姿が目に焼き付いています。
私も、治療方針や目的は話すものの、正直見込みがないことを伝えるのが心苦しく、オーナー様の話を聞くしかできなくて、辛かったです。


③肥大型心筋症で来院した猫ちゃん

この子はまだ4歳と非常に若い猫ちゃんで、今までなんの症状もなく普通に元気に過ごしていたらしいです。
あまり病院に来たこともなく、来院時にもなんの異常もなかったような子でしたが、いきなり開口呼吸をし始め、状態がどんどん悪化し、来院されました。

人生で初めて心臓の超音波検査をしたそうですが、
その時にはもう肥大型心筋症が進行していて末期の状態、心臓に血液を貯めるスペースがほとんどなくて、ギリギリなんとか拍動している状態でした。
心臓病治療をできるだけ施しましたが、慢性経過でそうなってしまった心臓を元に戻すことはできません。翌日に亡くなってしまいました。

ご家族の方は、まさか4歳という若さで、しかも
心臓病で自分の子を亡くすなんて夢にも思っていなかったからでしょう、衝撃とともに後悔と悲しさで溢れていました。。。
ただ、そんなに若いのに心臓の検査なんてしないのが普通の感覚ですし、雑音もなく無症状で進行する
ことも多いので、獣医からもリカバリーできなかったのが悔やまれます。


各場面での迷い

獣医師が患者さんの意思をどこまで尊重するのか。

獣医師がどこまでより踏みこんで患者さんに検査や治療を提言すべきなのか。

逆に、家族側はどこまで判断をして、どこから
獣医師に委ねるべきなのか。自分はどんな形で
問題に直面していけばいいのか。

-正解はないと思います。

まして獣医療は人間の医療と違って、かけられる
時間やお金も千差万別だし、動物は言葉を話せない
から本人の意思を確認することもできない。

自分達ですべてを決めなければならなくて、意思は
家族の中でもすれ違うのが当然だし、決断は
いきなり迫られる。自分が予想だにしなかった事実
を突きつけられて、冷静に判断できる人なんて
そういないですよね。

それで涙を飲む結果になった時、
あの時あぁしていれば…と後悔が残ることもあるでしょう。

これはご家族だけでなく、獣医師も一緒です。
何例経験していたとしても、家族によって考え方は
違うし、それまでにたくさん診させていただいて、
人間関係もできているし、獣医師も人間だから
感情移入をしてしまいそうになる時があります。

ご家族に寄り添うという面では大いに気持ちを
共有したいけれど、

医学的に選択肢を正しく判断して正しく伝える
こと、いざという時1番冷静に対処することも必須です。

いざ、というシーンはいつ来るかわかりません。
いつ何時何が起こってもいいように、また、
いつ何時何が起こる可能性があるのか?
日々勉強も必要です。


各体験から感じたこと

いろんな方がいて、いろんな考え方があるけれど、共通して言えることもあると思います。

それは、目の前のことに一生懸命になること、
誠心誠意向き合うことが大事だということ。

基本的なことだし、当たり前のことなんだけれど、
そこがいかにできているか、が意外と重要なんだ
と思います。


確かに後で振り返れば、ああすればよかった、
こうすればよかったと、思い返すことはたくさん
あるでしょう。しかし、その場、その一瞬のことを
思い返すと、悩んで悩んで下したその決断に、
納得はいくと思います。

「諦めたくはないし、逃げのような言葉は使いたくないけれど、それでも自分は精一杯考えたし
向き合ってこの決断をしたから、その結果が
これなら受け入れられる」

そう思える答えがBESTだと思います。残された家族
の方も時間と共にキズを癒して笑って日々を過ごせるようになること。
また新しくペットを飼うのなら、笑顔で、
動物に感謝をしつつ新しい命と向き合えること。

その気持ちに持っていけるように、とことん
向き合って、とことん議論して納得して進んでいけばいいと思います。

獣医師も、提示された条件下では十分な検査や
やりたいことができない、ということが多々
あります。ただ、それでも、だったらここまでは
できると、できるだけの選択肢を提示し、メリットデメリットを説明し、
託された動物にできる限り向き合うことはできます。

それに、患者さんの心と真正面から向き合うことは
プライスレスです!

そうやって頑張ってやっていると、相手に伝わるんですね。

亡くなった後、しばらくしてから、患者さんがわざわざ出勤の日に合わせて来てくださってお礼を言ってくれたり、たくさんのお礼の品を頂いたり、私自身の体調を気遣うような温かい言葉をかけて下さったりと、私自身も心が温まる経験をさせて頂けました。

自分では、ただ一心不乱に、どうしようどうしよう
と駆け抜けていた印象なんですが、患者さんは
思ったよりも細かい所まで見て下さっていて、
本当にありがたい限りです。

終末期医療など、難しい症例に対してどう接する
べきかの正解はない、と先程書きましたが、相手を
慈しむ心でまっすぐに向き合って出た結論が正解、
と言えるのかもしれません。


人は優しさに救われるし、やさしさに溢れる存在

結局はまごころが大事、慈しむ心が大事、と
考えましたが、これは、一般的な人間関係にも
言えることだと思います。

自分が誰かから受けた恩恵を、別の形で、別の人に
つないでいく。

優しさのリレーにより、人は心温まる経験ができるし、より成長できるし、濃厚な人間関係の構築に
つながるんだと思います。

後輩など、自分の話を聞きに来てくれた人が
感動して帰ってくれたり、仲間の悩み相談をうけて
ハレバレした顔で帰ってくれたり…。

なんで自分に返ってくるわけじゃないのに施すの?
と聞かれることがありますが、それは過去に自分も
そういった恩恵を受けているから今の自分があるんだし、いいことは巡り巡っていつか自分の所にまた
違う形で帰ってくると考えているからです。

そして、何より相手の笑顔が自分に力をくれる気が
します。自分も笑顔になれるし、この経験は何にも
代えがたくて、とても楽しい。

人はみんなやさしさや真心を心の奥に持っている
んだと思います。

獣医師という形で、職業に関連しても良し、

人間関係を構築する中でちょっと意識してみるだけでも良し。

相手と本気で向き合うことを、これからも続けたいと思います。

現役の臨床獣医師が監修する、オンライン上での動物好きどうしのコミュニティや、気軽に獣医師とも相談できる場を作りたいです。将来アプリやネットサービスに繋げられたらと思っています。活動資金に充てますので、よろしければサポートをお願いします♡ あなたの1クリックがとても励みになります!