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【ウェル、トゥデイズ・フォーチュン・イズ?】 (忍殺TRPGソロアドベンチャーシナリオ5より)

待望の第五弾シナリオ

6/9、ニンジャスレイヤー公式よりソロアドベンチャーの第五弾が発表された。今回の冒険はツキジ・ダンジョンに潜って冷凍マグロを発掘するというもので、TL上では様々なサンシタが活躍し、UNIXをハッキングし、ハッカーの指を折り、巨大バイオズワイガニに食われ、POPした死神に無慈悲に爆発四散させられていった。

今回も折り良くリアルタイム参加できたので、リプレイ風作文をもってサンシタの冒険を書き残しておくことにしようと思う。

サンシタ生成

今回も新規サンシタを生成して冒険に挑もうと思う。早速ダイスを振ってみよう。

カラテ       4    体力        4
ニューロン     2    精神力       2
ワザマエ      1    脚力        2
ジツ        1    万札        0
DKK       0    名声        0
◇装備や特記事項
カトン・ジツLV1
◆ウィルス入りフロッピー:ハッキング難易度-1、使用後D6で3以下が出ると喪失
能力値合計:7 総サイバネ数:0

中々悪くないサンシタができた。ほんの少し強いカラテに貧弱なニューロン、壊滅的なワザマエ。ジツも使えるがLV1のカトンというのがむしろサンシタ感を増す絶妙な味付けとなっている。精神力2のため最大二発で打ち止めというのも「サンシタなりの切り札、ヒサツ・ワザ」という趣があってとてもよい。

このまま初めてもいいのだが、もう一味加えるために生い立ちマイナースキルも適用してみよう。ダイスを二回振り、出目は1と1。『○ジンクス』を獲得した。

11『○ジンクス』:特定のジンクスやブツメツなどを気にする昔気質の伝統主義者や敬虔なブッダ信奉者、あるいはアンタイブディスト(反ブッダ主義者)などであろう。このPCはシナリオ開始時ごとにD6を振り、偶数なら【精神力】が+1、奇数なら【精神力】が-1される(これにより【精神力】が0未満になる場合は、代わりに【体力】を-1する)。この修正はそのシナリオの間のみ有効。

ソロシナリオでも適用でき、メリットもあればデメリットもある、わかりやすくて面白いスキルだ。きっとミッション前にオミクジやコイントスなどで運勢を占い一喜一憂するようなニンジャなのだろう。これで俄然キャラが固まってきた。

◆ツーアップ(種別:ニンジャ)        PL:三笠屋

カラテ       4    体力        4
ニューロン     2    精神力       2
ワザマエ      1    脚力        1
ジツ        1    万札        0
DKK       0    名声        0

◇装備や特記事項
カトン・ジツLV1
◆ウィルス入りフロッピー:ハッキング難易度-1、使用後D6で3以下が出ると喪失
○ジンクス:シナリオ開始時にD6を振り、偶数なら【精神力】+1、奇数なら【精神力】-1

能力値合計:7 総サイバネ数:0

名前はコイントス関連で調べたらどうもそういうゲームがあるらしいのでそれから取った。さあ、このジンクス頼りのサンシタニンジャ、ツーアップは見事ツキジ・ダンジョンから冷凍マグロを持って帰還できるのだろうか?

◆◇◆


前回までのあらすじ:ニルヴァーナ・トーフ社の工場で働く青年ヤヌマ・モニヒロは、突如として工場を襲撃してきた武装アナキストによって瀕死の重傷を負う。ニンジャソウルが憑依しニンジャとなって蘇った彼は、ケオス渦巻く工場から脱出すべく行動を開始する。最後の難敵モーターヤブ(大破寸前)を切り抜け、見事工場からの脱出に成功したヤヌマだったが、彼の前にクロスカタナのエンブレムを付けたニンジャが現れた。彼らはヤヌマをニンジャ組織ソウカイヤに勧誘したのだ・・・!

【ウェル、トゥデイズ・フォーチュン・イズ?】

ゴンゴンゴンゴンゴン!ガンガンガンガンガン!ゴンゴンゴンゴンゴン!ガンガンガンガンガン!

立ち並ぶ灰色のマグロ加工施設から響くインダストリアルノイズ環境音。潮風に乗って届くのはミキサーにかけられるマグロの血生臭いニオイ。ここはツキジ。スシを常食とする日本人の胃袋を一手に担う、ネオサイタマの食の玄関だ。

「ひでぇ場所だなァ・・・服にニオイがつきそうだぜ」

立ち並ぶマグロ処理施設のスキマを縫うように歩きながら、不機嫌に鼻をひくつかせる一人の若者あり。彼の名はヤヌマ・モニヒロ。ニルヴァーナ・トーフ社の工場で働くどこにでもいるマケグミ労働者であった・・・つい先日、工場に武装アナキストが襲撃してくるまでは。今の彼はニンジャだ。名前をツーアップと言う。

あの日、アナキストにハッキングされた警備用モーターヤブに撃たれ死にかけたヤヌマは何故かニンジャとなって蘇った。ワケもわからず無我夢中で工場からの脱出を試みる彼の前に現れたのはこれもまたニンジャで、混乱の極みにあるヤヌマをニンジャ組織ソウカイヤへと勧誘した。

ニンジャでありながらNRSに陥りかかっていたヤヌマはロクに理解もしないまま首をガクガクと振り、あれよあれよと手続きが進められ、気がついた時にはソウカイニンジャとなっていた。

自分の置かれた状況、そしてソウカイヤがネオサイタマを牛耳る恐るべきヤクザ組織であることを正確に理解できたのは、トコロザワ・ピラーのトレーニング・グラウンドで否応無く殺人カラテトレーニングを叩き込まれ、爆発四散寸前に解放されてツーアップというニンジャネームを与えられた時である。

(クソーッ!死なずに済んだのはいいがこんな組織は絶対イヤだぜ!何とかして逃げ出さねぇと!)

元来小心者かつ消極的な善人であるツーアップは決定的にヤクザに向いておらず、日々のミカジメ料徴収などもイヤで仕方なかった。何よりイヤなのはヤクザライフを送る日々を過ごすことでそれに慣れ、何も思わなくなってきている自分自身であった。自分がどんどん善人でなくなっていく感覚に彼は震えた。

(このままじゃ死ぬぜ・・・俺の魂が死ぬぜ!畜生、俺は特に善行はしないけど悪行もしないことでコストを支払わないままいいヤツでいたいのに!)

何とかしてカネを作り、キョートなりオキナワなりに逃げ出そう。ヌケニンだ。ネオサイタマの外に抜け出せば組織の追っ手もかかるまい。何の機密も知らぬサンシタを必死に追うメリットも無いはずだ。

ツーアップはそう考えカネを貯めようとしたが、サンシタの稼げる小遣い銭程度ではとても逃亡資金には届かなかった。モータルハントという手もあったが、気が進まないのでやめた。彼は極力善人でいたいのだ。

「だからこそ、このミッションはチャンスだ・・・トレジャー・ハントなら別に悪いことじゃねぇ、むしろ資源の有効活用ってヤツだからな。エコロジカル・ミッションだぜ!」

ツキジ・ダンジョンに眠る旧世紀の冷凍マグロを発掘せよ、というソウカイヤ首魁ラオモト・カンの命が下された時、ツーアップは真っ先に任務を受諾した。旧世紀の汚染されていない冷凍マグロといえば今では宝石や黄金よりも価値がある。発見したとなれば相当のボーナスが期待できよう。逃亡資金の大きな助けになるはずだ。

しかも誰かを殺したりイクサをしたりする必要も(恐らく)無い。ツキジ・ダンジョンにはマグロやオーパーツ目当ての探索者やスラッシャーも多くいると聞くが、さすがにニンジャを目の前にしてはNRSを起こして逃げ帰るに違いない。ツーアップのカルマは穢れず、善人のままでいられる。

「ドーモ、モーターロクメンタイです」「ウープス!?」

突如として響いたこの場所に似つかわしくない合成女子高生音声に驚いて振り返る。見れば握り拳ほどの大きさの六面体が、青いLED光を発しながらヒトダマめいてフワフワと浮遊していた。ソウカイヤの用意したサポートドロイド、モーターロクメンタイ。通称D6だ。

「ド、ドーモ、D6=サン。ツーアップです。驚かせないでくれよ・・・」ツーアップは慌ててアイサツを返す。「ツキジ・ダンジョンと言われて驚きましたか?恐ろしい場所ですからね」「いや、アンタに驚いたんだが・・・まぁいいや」

「でも大丈夫、私がずっとそばにいてナビしますよ」D6は自信ありげに縦回転する。実際、ダンジョン探索などツーアップは初めてだ。案内役がいるのは素直にありがたい。

「そいつはドーモ。ところで入り口は・・・」「さっそくあなたをツキジの最深部へと01転送しますね」「エッ?」理解不能な返答に目を白黒させるツーアップをよそに、D6はLEDを明滅させながら激しく回転し始める・・・すると、ツーアップの体が指先から01分解され始めた!

「オイオイオイオイオイオイオイ!何だよこりゃ!?どうなってんだよ!?」激しく狼狽するツーアップ。D6を止めようとするが、ドロイドは一足先に01分解されきって消滅している!「オイオイオイオイオイオイ!?」そう叫ぶ口もすぐに01分解され、彼はツキジ地上から姿を消した。

◆◇◆

「グワーッ!?」突如として虚空に現れたツーアップは、ウケミも取れぬまま背中から地面に叩きつけられた。「グワーッ冷てェ!?」装束を通してなお痛みすら感じる強烈な冷気。露出している腕や指先を急いで床から引き剥がす。あと数秒遅れれば皮膚をはがすハメになりかねなかった。「寒いぞ畜生!?」悪態と共に吐き出された息は真っ白だ。

「転送が終わりました。寒いですか?あなたはツキジ最下層にいますからね」傍らに浮遊するD6がこともなげに言ってのける。「転送!?最下層!?」転送というのも理解できぬが、まぁそれはいいとしよう。ニンジャがいるならワープもあるかもしれないし、テックの力は凄いからだ。しかし、まさかいきなり最下層とは!

「ダンジョンアタックってのは、もっとこう上の階からじっくりやっていくもんだろ・・・最初っから最終フロアに放り込むとかアリかよ・・・」寒さに身を縮ませながら呟くが、一方で合理的であることは認めざるを得なかった。浅い階層はすでに調べつくされており、未発掘の冷凍マグロがあるとすれば最下層の可能性が高いのは道理だ。

背負っていたダッフルバッグから、探索用に用意しておいた厚手の防寒着を取り出して着る。それでもなお刺すような冷気!「指が冷てェ・・・!」スリケン投擲や連続側転の邪魔になってしまうので指先を覆う手袋ははめられない。かじかむ指を何とか温めようと懐に入れると、装束のポケットに入っていたコインに触れた。

「いけねェ!こいつを忘れてたぜ!」

ツーアップは慌ててコインを取り出した。これは彼のジンクス。何か重要な事案、勝負事の前にコイントスを行うことにより運勢を占うのだ。表なら幸運、裏なら不運。他人から稚拙なブードゥーだと笑われることもあるが、これによって彼の精神テンションは確実に上下する。良くも悪くもだが。

「さて、今日の運勢は?」

コインに向かって真剣に呟くと、彼はそれを親指で強く弾き、高々と跳ね上げた。落下してくるところを掴み取り、おそるおそる掌を広げる。

○ジンクス 判定
出目3(偶数) 成功 【精神力】+1→【精神力】3

「イェーフー!ワオ!見ろよD6=サン!ヤッタゼ!表が出たぞ!」結果を見たツーアップはガッツポーズを繰り出し、その場でひとしきりデタラメなダンスを踊った。D6は迷信深い蛮人を見て哀れむ文明人のように、冷ややかに青くLEDを光らせた。

「コイツはいい!今日の俺はツイてるに違いねぇ!サクッとマグロ見つけてガッとボーナスせしめて、そんでとっととこんなヤバい組織からはオサラバだぜ!」

コインを懐にしまい、意気揚々と歩き出すツーアップ。だが前方に人影!「ウープス!」慌てて身を隠し様子を窺う。防寒着を着たクローンヤクザが、マグライトとドスを手に徘徊していた。(ソウカイヤの・・・じゃねぇなありゃ。クロスカタナが見えねぇ)恐らくどこかのメガコーポが放ったマグロ探索ヤクザであろう。

「彼らは深部で出会った相手を攻撃してきます。スリケンで始末してやりましょう!」「物騒なアドバイスをドーモ!」これがリアルヤクザやスラッシャーならNRSで黙らせられるが、クローンヤクザは恐れを知らぬ。威嚇もいいくるめも不可能で、敵対した以上殺すか殺されるしかない。

(相手はクローンだし、これはギリ殺人じゃねぇよな・・・ノーカンだノーカン)理論武装して自分の善性を守りつつ、ツーアップは寒さにかじかむ右手を開く。掌が燃えるように熱くなり、小さな炎が起こると、次の瞬間にはスリケンが生成されていた。物陰から身を乗り出し、投擲!「イヤーッ!」

難易度:NORMAL(必要出目4)
【ワザマエ】判定 2 失敗

カーン!(シマッタ!寒さで狙いが・・・!)見当違いの方向へ飛んだスリケンが壁の配管に当たり金属音を響かせる!「ナンオラー!?」即座にヤクザが反応。ツーアップと目が合う。「アー・・・ゴキゲンヨ?」肩をすくめて愛想笑い。「ザッケンナコラー!」ヤクザはドスを構え突撃!「クソーッ!ツキはどうしたツキは!」ツーアップは防御的カラテを構える!

難易度:NORMAL(必要出目4)
回避判定 6,4,2,6 成功

「スッゾオラー!」「あッぶね!アーポウ!」「グワーッ!?」ツーアップはヤクザのドス持つ腕を打って逸らし、顔面に強烈なエルボーを突き刺す!吹き飛び倒れるヤクザ!「立ってこいよ!ニンポをお見舞いしてやるぜ!」倒れるヤクザに向かい、デタラメなミスティック・サインを作って威嚇!

「アバッ・・・」ヤクザはしばらくビクビクと震えた後、動かなくなった。まるで死んだマグロだ。この寒さならすぐに冷凍マグロの仲間入りとなるだろう。流れ出した緑色の血液も、すぐに温度を失って凍りついていく。

「フゥーッ・・・スリケンは外したが、ドスは避けられたし、カラテ一発でカタがついた。やっぱツキがあるってことだよな、ウン」

ツーアップは己の幸運を再確認すると再び歩き出した。やはり最下層にも探索の手は伸びている。モタモタしていては他の探索者やソウカイニンジャ(勿論ツーアップ以外のニンジャも探索しているのだ)に先を越されてしまう。

「頼むぜ俺のツキ・・・マグロ見つけるまで涸れないでくれよ・・・」

ツーアップは懐に手を入れてコインを撫でながら凍りつく回廊を歩く。その後ろから、呆れて首を振るように横回転するD6がふわふわと続いた。

◆◇◆

「クソーッ!適当に歩いてても寒いだけじゃねぇか!」数分後、広大なダンジョンを当てずっぽうに歩き回ることの愚かしさにツーアップはようやく気づいた。「D6=サン、何かプランはねぇのかプランは!?」ドロイドはもはや失望を隠せぬようにため息めいた駆動音を鳴らし、感情のこもらぬ合成音声で彼にアドバイスを与えた。

「なるほど、ハッキングかインタビューか・・・ウーン・・・」ツーアップは悩む。彼のニューロンはお世辞にも優れているとは言えず、ハッキングは不得手だ。オマケにUNIXというものは融通が利かず、たった一度失敗しただけで強固なロックがかかり、あろうことか矢を放ってくることすらある。ウワサではハッキングに失敗してUNIXボウガンを食らい爆発四散したニンジャもいるという。他人事とは思えない。

「なら拷問か・・・?」悩むツーアップから発せられた言葉に反応し、D6が嬉しげにLEDを明滅させる。それしかない!と言わんばかりだ。(コイツ、本当にただのドロイドか?)先ほどの転送といい怪しい限りではあるが、実際のところ拷問の方が確実ではあるのだろう。

これほど劣悪な環境でありながら、周囲には人の気配があり、隠しようもない生活のニオイが漂っていた。いかなる理由があってかは知らないが、この酷寒の旧世紀廃棄施設には相当数の人間が住み着いているのだ。少し探せば見つけるのも容易く、拷問によって情報を吐かせることは難しいことではないはずだ。だがそれは邪悪な行いであり、ツーアップの善性を大きく揺るがす魂へのダメージとなるだろう。

確実性を求めるなら拷問。善性を守るならハッキングだ。さて、どちらにすべきか?

▶︎選択肢1:旧世紀UNIXを探してハッキングし、周辺情報を得る

「よし決めた!ハッキングだ!今日の俺はツイてるからな!」ツーアップは己の幸運を信じた。今日の自分ならどれほど低い可能性でも成功を引き寄せられるはずだ!ジンクスによって決意と自信に満ち溢れたニンジャの傍らで、D6は露骨に不機嫌そうな駆動音を立てた。

「それにコイツもある!」ダッフルバッグからウイルス入りフロッピーを取り出す。以前ヤクザ事務所へミカジメ料徴収に行った時、借金のカタに奴隷労働をしていたハッカーが彼の前でニューロンを焼き切られて死んだ。その時のドサクサにまぎれて机の上にあったものをくすねてきたのだ。これもハッキングの大きな助けになろう。

「UNIXのありそうな場所は・・・オッ?」ツーアップのニンジャ視力は「築地電脳中心」と書かれた古いカンバンを前方に認める。「ホラ見ろ、やっぱりツイてる」防寒着越しにコインをぽんぽんと手のひらで叩き、彼はウキウキ気分で歩き出した。

「オイオイオイオイオイ」生きているUNIXを見つけ飛びついたツーアップは、そのUNIXのあまりの旧式ぶりに愕然とした。「クソッ、そうだよな!ここは時間が止まってンだよなァ!」キーボードの配置からしてまず違う。あらゆる規格が現行UNIXとは微妙に異なっているのだ。当然、ハッキングも困難を極めるだろう。

「だがよ、今日の俺はツイてんだよ!」勢いよくスロットにウイルス入りフロッピーを差し込む!認識された!「ほら見ろ!テクノウィッチ様々だぜ!」コードロジストの生み出した電脳のヤマイが、旧世紀UNIXを容赦なく蝕む!プロテクトが緩む!そのスキを突き、「イヤーッ!」猛烈なタイピングを開始!

難易度:HARD(必要出目5)
ウイルス入りフロッピー使用:難易度 -1 難易度:NORMAL(必要出目4)
【ニューロン】判定 3,6 成功 フロッピー使用後判定 4 成功

キャバアーン!鳴り響く祝福の電子的ファンファーレ!「ヤ、ヤッタ!」旧世紀UNIXをウイルスと幸運で見事屈服!モニタに映し出されたのはワイヤフレーム地図、そして未発掘と思しきマグロ倉庫位置情報!

「イェーフー!見ろ!ヤッタゼ!テンサイ!」ツーアップは喜びのあまり飛び上がって空中ガッツポーズを繰り出し、着地後に激しくデタラメなダンスを踊る!「ツイてるツイてる!今日の俺はなんだって出来るぜ!」懐からコインを取り出して熱烈なキス!D6は相変わらず不満気な駆動音を響かせていたが、やや感心したようにLEDを明滅させた。

◆◇◆

「ワオワオワオ!なんてこったよ!」辿り着いたマグロ倉庫の隔壁を開き、目の前に現れた光景を前にして、ツーアップの興奮は最高潮に達した。「ハッハー!こりゃァ・・・オイオイオイ!ええ、一体いくらになるんだよ!?」

そこにあったのは汚染されていない旧世紀の冷凍マグロの・・・山!まさしく床に山と積まれ、または天井から吊り下げられ、あるいは切り分けられて保存ボックスに入った大量の冷凍マグロが、広大な倉庫を満たしていたのだ!保存ボックスの切り身一つでも恐らく同じ重さの黄金よりなお価値が付くだろう。まして丸ごと一匹のマグロが、この数・・・!その総額は国家予算に匹敵せんばかりでは!?

「やりました!大量の冷凍マグロです!」D6もさすがに興奮を隠し切れぬように激しく8の字飛行してLEDを明滅させている。「言ったろ、今日の俺はツイてるってな!」飛び回るD6に対してハイタッチめいた平手を繰り出し笑うツーアップ。D6は軽く揺れながらも満更でもないように縦回転。

「しかしまぁ、持って帰るのはこれが限界だな」保存ボックスを手に取る。これと倉庫の位置情報を提出すれば後はソウカイヤの回収部隊がつつがなく仕事をしてくれるはずだ。ツーアップの任務はこれにてほぼ完了である。これだけの大発見、ボーナスもさぞ弾まれることだろう。キョートやオキナワに行くには十分な「シューーーーーッ!」「アイエッ!?」

怒号と共にマグロの山の一つが噴火したように吹き飛び、周囲にマグロが散乱した。マグロの山から姿を現したのは・・・「オイオイオイオイ!オイオイオイオイオイ!」ナムサン!怒り狂った巨大バイオズワイガニだ!隔壁を開けたことで眠りを覚ましてしまったのか!「なんでこの寒さで普通に生きてんだよ!?」生命の神秘だ!

「シューーーーーッ!」バイオズワイガニはハサミを振り上げる!「ウェイウェイッ!俺はニンジャだぞ!ニンポを使うぞ!コワイだろ!?」ツーアップは慌ててデタラメなミスティック・サインを繰り出して威嚇!「シューーーーーッ!」だがズワイガニはまるで怯まない!

「アーもうわかった!本当に使うからな!カニ・バーベキューになって後悔しろよ甲殻類野郎!」ツーアップはそのままデタラメなミスティック・サインを続ける。すると、その指先に炎が生じた!これこそはニンジャソウルが彼に与えしミスティックニンジャアーツ、カトン・ジツ!

「ニンポを!食らい!やがれ!」人差し指に収縮させた炎をズワイガニに向かって解き放「グワーッ!?」つ直前にD6がツーアップの後頭部に強烈な体当たり!

「いってェ!何しやがんだこのポンコツ!」ジツを中断させられ激憤するツーアップ!だがD6は彼よりもなお凄まじい剣幕でLEDを光らせる!「何を・・・アッ」ツーアップは周囲の冷凍マグロの存在に気づく。ここで炎を使えばせっかくの完璧な冷凍保存が台無しだ!

「畜生、そういうことか!」彼は片手で小さくD6に詫び、そのままスリケンを生成!ジツが使えぬ以上これしかない!「イヤーッ!」投擲!

難易度:NORMAL(必要出目4)
【ワザマエ】判定 4 成功

「シューーーッ!?」スリケンは見事命中!だがなんたる強固な甲殻と強靭な生命力!まだ死なぬ!「オイオイマジかよ!?」「シューーーーーーーーーッ!」バイオズワイガニはやや怯みながらもハサミを振りかざし迫る!「クソーッ!来るなら来やがれ!今日の俺はツイてんだよ!」防御的カラテの構え!

難易度:NORMAL(必要出目4)
回避判定 4,5,3,1,4 成功

「シューーーーーーーーーッ!」「アーポウ!」振り下ろされるハサミ。ツーアップは横殴りのカラテフックを繰り出してハサミに横の衝撃を加えて軌道をずらす。CRAAASH!床に叩きつけられるハサミ!自身の生み出した衝撃で怯むズワイガニ!スキありだ!

「今だ!」ツーアップはスライディングを繰り出してズワイガニの体の下をくぐり、背後を取る!「行くぜ!ヒサツ・ワザ!」デタラメなカラテ演舞を素早く繰り出すと、渾身のカラテ・ストレートをズワイガニに叩き込む!「アーポウッ!!」

難易度:NORMAL(必要出目4)
【カラテ】判定 5,6,3,3 成功

「シューーーーーーーーーッ!」カラテ・ストレートを受けたズワイガニは倉庫外まで吹き飛ばされ、壁に激突。ブクブクと泡を吹いた後、ガサガサと素早く横歩きで退散していった。「イェーフー!見たかカニ野郎!ニンジャなめてンじゃねぇぞ!」「ヤッタ!」ニンジャとドロイドは勝利の快哉を叫んだ。

「何度でも言うぜ、今日の俺はツイてんだ。それに、D6=サンのおかげでヘマせずに済んだしな」ツーアップは懐のコインを取り出して握り、D6に向かって拳を突き出した。意図を察したD6は拳に自身をぶつける。あまりに滑稽なニンジャとドロイドのフィストバンプ。二人は声とLEDで笑い合った。

倉庫隔壁を締め、再びバイオズワイガニが入ってこられぬようロックをかける。これでソウカイヤの回収部隊が来るまでマグロは守られるだろう。「あとはこれを持ってソウカイヤの本拠地、トコロザワピラーに帰るだけです」

「ああ、さすがに疲れた!あの転送ってヤツでパーッと頼むぜ」「ちょっといまパワーが足りないので、01転送はできません。歩いて帰りましょう」「オイオイオイオイ!」

「そういや帰り道わかんねぇんだけど。そこらの住人に聞くか?」D6が期待に満ちたLEDを光らせる。「・・・いや、拷問はしねェよ?」LEDを消灯させ、地面スレスレまで高度を落とすD6。「なんだよこのドロイド!?」

ニンジャとドロイドは楽しげに騒ぎながら帰路を歩く。遠く離れた区画で、彼らと同じ任務についていた邪悪なサンシタが赤黒の死神に爆発四散させられた音も、彼らのところには届かない。今日のツーアップはツイていたのだ。

◆◇◆
【万札】+15 【名声】+1
◆◇◆

ゆったりとした座席に体を沈ませながら、サケのグラスを口に運ぶツーアップ。「うまい」ニヤリと笑う。さすがにカチグミ・クラスのサービスは違う。窓から見える景色に刻一刻と近づいていくキョートを感じながら、彼はチョッコビン・エクスプレスのシンカンセン旅を心行くまで楽しんでいた。

あの後、国家予算にも匹敵するマグロ資産を得たことで大変機嫌のよくなったラオモトは、ソウカイニンジャ全員にボーナスを与え、シックスゲイツはもちろん上位アンダーカードやチバのお気に入りのニンジャまで連れて慰安オンセン旅行に出発した。トコロザワ・ピラーに満ちるオマツリめいた雰囲気の中で、一介のサンシタが出奔したことなど誰も気にしなかった。ツーアップは見事ヌケニンに成功したのだ。

「キョートについたら何すッかな・・・」働き口も住むところも何も決まってはいないが、何とかなるだろう。なにしろ自分はニンジャだ。オマケに頼りになる相棒もいる。「なぁ、D6=サン?ニンジャならでは、ッて仕事とかねぇかな?」

隣の座席には高級ザブトンが五枚積まれており、その上でD6が心地良さげに駆動音を響かせていた。出奔のドサクサで『いつの間にか』『荷物に紛れ込んでいた』ので、なし崩し的に連れてくることになったのだ。

「コンビ組んでニンジャ探偵でもやるか?カトゥーンみたいによ」ツーアップの問いかけに、D6はクスクス笑いめいてLEDを光らせる。「ニンポとカラテで事件解決してよォ・・・」サケが入ったツーアップは上機嫌で他愛の無い話を延々と続け、D6は楽しげにLED相槌を返す。キョートへの快適な旅。だが!

CRAAAASH!!「「「アイエエエエ!?」」」突如として窓を破り、一人のニンジャが車内に乱入してきたのだ!「オイオイオイオイ!?」(まさかソウカイヤの!?)ツーアップは反射的に身を隠す!

「ドーモ!ハイウェイマンです!カチグミの皆さん、ただちにカネをよこせ!さもなくば殺す!」「「「アイエエエエ!?」」」ナムアミダブツ!ニンジャ列車強盗だ!

「アイエエエ命だけは」「イヤーッ!」「アバーッ!」財布を差し出そうとしたサラリマンをスリケン殺!非道!「よこしても殺す!私の気分次第だ!なにしろニンジャだからな!」「「「アイエエエエ!!」」」乗客絶望!

(オイオイオイオイ!カンベンしてくれよ!何でよりにもよって俺の乗ってるとこに来るかね!?)ツーアップは悪態をつきながらそっとニンジャの姿を確認する。装束やメンポにクロスカタナ紋は無い。(ソウカイヤの追っ手ってワケじゃねぇな・・・)単純にニンジャの強盗か。

(なら逃げの一手だぜ!)荷物とD6を抱え、窓から飛び出そうとするツーアップ。その瞬間、隣の座席で震える子供と目が合う。恐怖と絶望。その視線が、彼の魂と善性を万力めいた力で締めつけた。

(畜生、俺は何もしたくねぇんだよ!悪いことしねぇならいいヤツってことでいいだろ!?)だが、ここで逃げ出して、自分を善人だと思えるか?(ええい、クソッ!わかったよ!)ツーアップは荷物を降ろし、懐を探ってコインを取り出した。

「さて、今日の運勢は?」

コインに向かって真剣に呟くと、彼はそれを親指で強く弾き、高々と跳ね上げた。落下してくるところを掴み取り、おそるおそる掌を広げる。D6が彼の顔を覗き込む。ツーアップはニヤリと笑ってみせた。

「ハハハーッ!死ね死ねーッ!カネをよこせーッ!」ハイウェイマンは周囲にスリケンをバラまく!スリケン・ハッピーだ!「アーポウ!」「グワーッ!?」その横面に叩き込まれる強烈なカラテストレート!

窓を割って車外に吹き飛ばされるハイウェイマン!BRATATATATA!「グワーッ!?」列車強盗団撃退用の搭載ガトリングガンから吐き出された弾丸がハイウェイマンをネギトロに変える!「サヨナラ!」爆発四散!

「ホラ、やっぱうまくいったろ?今日の俺はツイてんだよ」カラテストレートを叩き込んだ拳を開き、表側を向けたコインをD6に見せる。D6は笑うようにLEDを明滅させ、相棒の手の前に自身を突き出す。ツーアップは拳を握り、滑稽なフィストバンプを行った。二人は座席に座り直し、キョートへの快適な旅を再開した。

【ウェル、トゥデイズ・フォーチュン・イズ?】 終わり

無事生還

というワケで、我がジンクス頼みのサンシタニンジャ、ツーアップ=サンは見事ダンジョンから生還することに成功した。正直ハッキングが成功するとは思えなかったので自分でも驚いている。本当にあの日のツーアップ=サンはツイていたのだ。

本格的?戦闘

今回は公式ソロ第五弾にして初の「一撃で倒せない体力設定のある敵」であるバイオズワイガニが出現し、今までイベント感の強かった戦闘シーケンスがグッと本格的となった。この絶妙な「サンシタなら何とか倒せる」感を持った敵とのイクサは適度な緊張感があり実際タノシイだったので、第六弾にも是非期待したい。

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