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映像編集の仕事とは

YouTubeやSNSから最近では映画に携わるようになってきた筆者ですが映像編集に関して改めて学んだので書いていきます。


編集は撮影前から始まっている

編集はポストプロダクションと言われる通り、撮影が終わった後に行われる作業だと思われがちです。しかし実際はドキュメンタリーやホームドラマでない限りは撮影の前から企画やコンテなどで映像の完成像が出来上がっています。
編集をしていると「編集でなんとかする」と思うことがありますが、撮影や予算、企画自体に無理がある場合はそもそも編集でどうにもできなかったりすることもあります。
編集には時間の経過を決める横の編集と、色や特殊効果を重ねる縦の編集がありますが、撮影前から気を使わないとどちらかの方向で不具合が出てしまうものです。

編集では感情を取っ払う

撮影をすると「この撮影は大変だったなー」とか「この俳優さん頑張ってくれたなー」というのがあります。
そこに感情を引っ張られると「せっかくだから使おう」と作品が面白くなるかどうかではなく働いてくれた人に申し訳ないと言う気持ちで編集をしてしまいます。
しかし一番重要なのは「視聴者が見て面白いかどうか」です。
ちなみにフレッドジンネマン監督は撮影が終わった後にアルプスの山に登って一度映画のことは忘れてから映画を完成させていたそうですね。
そこまでしなくとも作品に対する客観性というのは重要かと思います。
個人的にはそうした意味でも撮影前に絵コンテを作っておくのは客観性を取り戻す上で必要なのかと思います。

決定的瞬間を探しだせ

写真家はわかりやすく目の前の出来事に対して決定的瞬間を写真として収めると評価されます。
映像も似ており、数千フレームある中からこれだと思う1フレームを見つけ出してそこをいかに魅力的に伝えるかを考えることも大切になってきます。
役者をオーディションする際に何人も見ていると誰が良いのかわからなくなってきますが、編集作業も数千もあるフレームから何が良いのかをオーディションをかけて選び抜き最高の形で発表するという仕事なのかもしれません。

繋がりが大事とは限らない

商業作品の場合は一番大切なことは視聴者が面白いと思うかどうかです。
映像には「繋がり」というものがあり、さっきまで右側に立っていた人物が次のシーンで左に立っていたら繋がっていないことになり視聴者はそこに疑問を持ち映像に集中できなくなります。
しかし流れが自然で勢いを大切にしたいなどの理由があれば繋がりが大事とは限りません。
朝起きてご飯を食べシーンを1から説明するよりも、目が覚める、冷蔵庫を開ける、食事をする…など時間を飛ばしてテンポの良さを大切にすることもあります。
編集者ウォルター・マーチの6つのルールでは、(1.感情 2.ストーリー 3.リズム 4.視線 5.スクリーンの二次元性 6.三次元空間の継続性)の順番でカットを入れるらしく「繋がり」は六番目で一番重要度は低いようです。

足が痛いからと言って足を切ればいいわけではない

「足が痛いんです」と患者が言ったときによく調べもせず「じゃあ足を切り落としましょう」という医者はいないでしょう。
同じく編集でもこのシーンが悪いからと言ってカットするのではなく、そのシーンを見せるまでの流れが悪かったり余分なものが入っていたり不足していたりする場合があります。
そのシーンが面白くないのは何が原因なのかの根本がわからない限り編集をしたとしても良くなるとは限らないでしょう。
編集は脚本やコンテと同様に一回目で良いものになる可能性は低く、何度も何度も重ねながら編集を繰り返すことで良くなることがあります。

カットは瞬きに似ている

例えば今あなたは画面を見ているわけですが、一旦あなたの左後ろに何があるかを見てみるとしましょう。
この時、画面から左後ろに視線を移す間で瞬きをしている場合が多いのですがこれが映像でいうところのカットでつまり場面転換は人間の生理現象に近いものがあると言えます。
人間が別の箇所を見るときや思考をする際に瞬きをするように、映像の区切りを作るという意味で編集でカットを使うのかもしれません。
逆に目の前で面白い物事が繰り広げられていたら瞬きをするのを忘れることもあるかもしれませんが、映像でも1917のようにワンテイクとしてカットを入れずに変化を見せることもあります。
考えてみれば会話をする中で無意識に相手がどのタイミングで瞬きをするかは予測できますが、下手な映像というのは役者の瞬きのタイミングやカットのタイミングがずれているからなのかもしれません。

リズムを意識する

会話には流れがありリズムがあるように、映像もどのタイミングで見せられると心地が良いのかというリズムがあります。
リズムは大雑把な流れのようなものなので、流れの中にある無駄な要素を排除することが編集とも言えるかもしれません。
また展開の速いシーンではカットの量が増えたり、それは実際に人が瞬きや心拍数が増えることに似ているかもしれません。
しかし編集者の精神状態であったり何度も何度も編集で同じような画面を見続けることでリズムが狂って音痴のような流れになりかねないため、そうならないように何らかの対策をとって客観的な意見が必要になる時もあります。
編集段階では「良いかも」と思っても公開した後にダメな点に気がつくことはよくあるものです。

共同作業をするべきか

映像編集といえば一人で部屋に籠って作業をするイメージがありますが、例えば映像の素材だけで数千時間を越えれば流石に一人で編集は無理になります。
すると共同作業をする形をとるのですが、一方で共同作業には一貫性の欠如というデメリットもあります。編集者によって色味が変わったり、伝えたいテーマのニュアンスが把握できていないとチグハグになります。
しかし一方で共同作業をすることで客観性が生まれたり、お互いに成長できる部分もあるため大いにメリットはありそうです。
ちなみにヨーロッパ絵画が絶頂期だった時期には名匠は助手を雇い、やがて助手が成長して名匠へとなるというサイクルができていたようです。日本でいう漫画家のアシスタントが漫画家になるようなものですね。
ここは作る映像の予算や体制によっても変わってくるかと思います。


まとめ

SNSなど気軽に投稿する動画であればいいのですが、商業作品となると多くの人がその作品に関わるようになるため気軽に進めることが難しくなっていきます。
それでも編集に関していえばある程度はSNSだろうが映画であろうが共通する部分もあると思うので、初心者だったとしても四則演算のように何かしら初期段階で学んでおくと役立つ気がしています。


参考書籍


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