監督生-アレステル-

※注意※
オリジナル監督生のつぶやきみたいな感じです。
がっつりオリジナル設定あるので受け付けない方は閲覧を控えてください。
また、あめりはツイステを始めて一週間も経っていないためキャラの把握に齟齬や解釈違いなどがあるかと思われますが、「そっちの世界線のツイステではそういう感じなのね」程度の寛大なお気持ちで閲覧ください。


「おーいアレスー」
放課後。グレート・セブンの石像が並ぶメインストリート。
隣を歩く猫…モンスターの”グリム”と一緒にオンボロ寮に向かうため歩いていると後ろから手を振りながら駆け寄る橙色から声を掛けられる。
声の主は”エース・トラッポラ”。
ハーツラビュル寮の一年生で、入学したての一日目にはまだ雑用係だった自分たちにちょっかいを掛け、学園長から大目玉をくらった…仲間?
今やオンボロ寮の監督生として無事ナイトレイブンカレッジの生徒としてグリムと通えるようになってからはクラスが一緒ということもあり、よく話をするし昼食もご一緒したりする。
振り返って、返すように手を振った。
「どうしたの、エース」
「寮に戻るんだろ?トレイ先輩からクッキー貰ってさぁ、一緒に食わねーかなって」
「おー、クッキー!コイツが食わなくてもオレ様は食うんだゾ!」
まん丸な眼を爛々と輝かせ、グリムは耳の炎を揺らめかせる。
「エース!抜け駆けは許さないぞ!」
「あれ、撒いたと思ったんだけどな~」
遅れて走ってきた藍色の青年にエースは悪びれる様子もなく手を後頭部に当ててニヤリと笑う。
両手を膝に当ててゼェゼェと肩で息する彼は”デュース・スペード”。
エースと同じハーツラビュル寮生で同じ1年A組だ。
ハーツラビュル寮のとある先輩からエーデュースと呼ばれるくらい一緒にいる。彼もまた、入学してすぐ学園長に大目玉を喰らい、危うく退学になるところであった一人である。
「何、エース。デュースを撒いて取り分増やそうとしてたの?」
「いや~?そういうつもりじゃなかったけどぉ」
「はぁ…まぁ追いついたから良い。ほら、アレステルの寮に行くんだろう」
「そうだゾ!早く戻って早く食うんだゾ~!!」
汗を拭い、ため息を吐いてデュースは移動を促した。
ぴょんこぴょんことご機嫌に先導するグリムについていくように、エース、デュース、そして俺…アレステルは自分とグリムしか所属していない寮、"オンボロ寮"へと向かった。

オンボロ寮―――
かつては多くの寮生で賑わっていた寮らしいが、アレステルとグリムが入学する頃にはボロボロな――とても趣きのある――建物へと変貌していた。
というのもオバケが住み着き、寮生をからかい追い出していたそうだ。
害はあったけれども特段対処する必要はないというのが学園の認識らしく、グリムと共にオバケに遭遇するまで学園長すらオバケの存在を忘れていたようだった。
住み始めた頃は家具が壊れていたりクモの巣が張り巡らされ、まるでヴェールのように真っ白い埃が辺りを覆っていたが、今は学園生活の片隅で少しずつ片付けを進め、客人を通せるくらいに談話室は片付いている。
他の部屋…使っていない寝室などに関してはノーコメントで。

休みの日にDIYをして作ったテーブルと椅子にエースとデュース、そしてグリムが机にかぶりつくように座っている。
俺はハーツラビュル寮寮長のリドル先輩にいただいたティーセットで紅茶を淹れて三人がつくテーブルまで持って行った。
「お、それリドル寮長が前にくれたやつ?」
「そう。自分たちで使うには勿体無い気がして…お客さん来てくれるまで置いてた」
「お茶会すら出来ないなんて、って哀れんでいたからな、寮長は」
「机とか椅子とかは作れても食器は中々作れないから助かったよ」
ソーサーを置き、極力音を鳴らさないよう二人の前にカップを置く。
テーブルの中央にはトレイ先輩から貰ったクッキー。その横にティーカップとお揃いのティーポット。
小さな薔薇にトランプのスートが小さく輪をかくように描かれたシンプルながらとても可愛いらしいティーセットだ。
豪奢とは言いがたいが、普段使いしやすいようにというリドル先輩の心遣いが見て取れる。今淹れた紅茶も、リドル先輩からいただいたものだ。

落書き用

「さって…本題なんだけどさ」
サクッとクッキーをかじってエースが話の口火を切った。
「アレスってさ、何処から来たの?」
「そういえば…アレステルの故郷の話は聞いた事がないな」
「んん~~!サクッとした食感で中に入ったチョコチップがホロ苦くてそれがまた良いアクセントになってるんだゾ!」
二人の言葉を遮るようにグリムがクッキーの食レポをする。聞いているだけで美味しそうだ。
苦笑まじりでグリムの言葉をながし、二人に向き直る。
「故郷…ね。学園長も知らない場所だから言ってもわからないと思うけど…」
「知らねー場所の話とか面白そうじゃん!聞かせてよ」
興味津々とばかりに目を輝かせる二人に根負けし、ぽつぽつと語らせてもらおうと思った。

「俺、日本ってところから来たんだ」
「ニホン?初めて聞くな」
「学園長は異世界とか、そういうところから魂が呼ばれたんじゃないかって」
「へーぇ…不思議なこともあるもんだな」
こくり、と俺は頷く。
「割と平和な国だったと思う。…多分。いろいろ問題はあったけどね」
「ふぅん。王様とかは?」
「王様…国を統治する人はいたけど個人ではなかったね。団体って感じ?」
「それは…色々意見が分かれたりしただろう」
眉を顰めるデュースだが、嫌悪やらの感情はなくただただ心配してくれているようだった。
まぁね、と小さく笑って話を続けた。
「俺の家は小さな一軒家でね。母さんと父さん、兄貴もいたよ。…今はどうしてるんだろうな」
「母親はどんな人だったんだ?」
「優しい人だったよ、いつも笑ってた。父さんはあまり喋らない人だったけど俺らをしっかり理解してくれて適切な対応をしてくれたと思う」
「へー…いい家族なんだな」
「うん。記憶が曖昧で…最後の会話とかは、覚えてないんだけど」
「そもそもなんで魔力がないアレスが鏡に呼ばれたんだろうな?」
「さぁ、それはわからない…。学園長はこの学園に必要な存在だから呼ばれたみたいな事言ってたけど、それも定かじゃないと思う」
「なぁなぁ、そのニホン?ってトコにしかない美味い食いモンってねーのか?」
ザクザクとクッキーを頬張りながらグリムが横入りしてきた。
本当に食べ物が好きなんだなと思い、フと口元に笑みが浮かぶ。
グリムの口端についてクッキーの粉をそっと指先で拭い、ん~…と声を漏らし目を細める。
「そうだなぁ…その国々の特色で何とか食っていうのがあったんだけど、日本だと”和食”だね。魚とか…野菜とか、基本的にあっさりしたものが多かったよ」
「美味しいのか?」
「うん、俺は好きだったよ。こっちに来てからは全然食べれてないけど…ツイステッドワンダーランドって言うんだっけ?此処では濃いめの味付けが多いように思うな」
日本で食べた味を思い出すように目を細め、紅茶を口に含む。
砂糖もミルクも入れていないストレートティーは口の中の油を程よく喉奥へと流し込み口中に爽やかさをもたらした。
「あっさり…塩とか?」
「塩もあるし、あとは醤油とか味噌とか…味噌は濃い目にはいるのかな」
「…ミ?…なんだゾ?それ」
「大豆を発酵させた調味料だよ。単体だとすごくしょっぱいんだけどお湯で溶かしたり出汁と混ぜると美味しい味噌汁が出来るんだ。ほかにも甘味噌で蒟蒻や大根につけて…」
「ストップストップストーップ!呪文か?!呪文なのか??!」
「え、いや…」
「聞いた事がない言葉ばっかりでどれもこれも想像がつかないんだゾ~…」
「あー…まぁそうだよね、聞いた事なかったら呪文にも聞こえるか」
指先でポリポリと頬を掻く。なんと説明したら良いだろうか…。
特に声は上げないがデュースの眉間にも皺が寄り、悩ませているという事がよくわかった。
「そうだゾ!お前、その~…なんだ?よくわかんねーやつ作ってくれなんだゾ!」
「え?!」
「お、それいーじゃん。故郷の味ってーの気になるし」
「おいグリム、エース。それはアレステルの負担が大きすぎないか?」
「なんだよデュース。お前は気になんねーの?」
「うっ…気にはなるが……」
デュースはもごもごと口篭り目を逸らす。
確かにこちらに来てからは食堂のビュッフェで美味しいものをいただいてばかりだ。それ以外でもトレイ先輩におこぼれに与る形ではあるがタルトを食べさせてもらい、リドル先輩からは恐れ多くもお茶会に誘われる事も少なくない。

…色んな人に、ご馳走になってばかりだ。
幸いこのオンボロ寮にもキッチンがある。
実家にあったものより立派なもので使いこなせる自信はないが、お茶を淹れるためだけに使うにはやはり勿体無い。
もう少ししっかり片付けて、調理器具や食材を揃えて作ってみるのもいいだろう。
…あまり利用したことはないが、あの、なんでもあるらしいショップ――Mr.Sのミステリーショップ――では日本の食材は手に入るだろうか。

「…わかった、今すぐにってのは無理だけど近々作ってみるよ」
デュースをいじるエースとグリムはその言葉を聞いてこちらに顔を向ける。
ぱぁっと音が聞こえるくらいわかりやすくグリムの表情が明るくなった。
「え、マジで?やったぜ、言ってみるもんだな」
「やったゾ!お前の手作り料理は初めてなんだゾ~!」
「ぼ、僕も食べさせてもらっていいのだろうか…」
「勿論、その時はデュースも食べてよ。四人前くらいなら作れると思う」
その言葉にデュースもほっとしたような笑みを見せた。


さて、頑張って片付けないとな。

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