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時の迷い路 第六話
第二章 始動(二)
少女を取り囲んだ光はその眼をくらまし、しばしの間、視力を奪った。再び視界の中がはっきりとしてきた時、どれほど時間が経ったのか少女にはわからなかった。
小高い丘の上に立っていた。後ろには黄金色に光る林がある。しかし、道はない。いったい自分が通ってきたのがこの林なのか、それとも別に道があったのか、少女には皆目分からなかった。
眼下には人家とおぼしき家がまばらに建っていた。数軒並んだ家々を田畑が囲んでおり、少し離れたところにもまた、畑の中に二、三の家が固まって見えた。
正面にある山からは川が流れ出て、農地の間を縫い向こう側へ続いている。その通る先には緑が途切れ途切れになっている地帯があった。色が変わっているところは建物の屋根か。市街地なのだろう。
川が田園地帯を離れて下流に行くにつれ太くなっているせいか、ずっと先までその筋を目で辿ることができた。水の流れは町の中央を通り、遠くで弓なりに蛇行している。川面はきらきらと美しく輝き、草原か森か、ともかくも美しく色付いた土地の間を、遥か彼方まで光の粒子が瞬いている。
太陽はちょうど頭の真上に来ていた。お昼頃だ。
そう思うと急に空腹を感じる。そういえば何も飲まず食わずで歩き続けてきたのだ。当然、胃も空っぽになるはずだ。
少女は上着のポケットを探った。残念ながら突っ込んだ手が捕まえたのは小さなチョコレートの包み一つだけだった。食べてしまったら後がない。
しかし意識した途端に、空腹は耐え難いほど強くなってきた。
家が建っているところまで行けば、せめて水だけでも恵んでもらえる可能性がある。そこまでせずとも、川の水が綺麗なら飲めるかもしれない。
そうした漠然とした望みが頭に浮かび、少女の手は再びポケットの外に戻った。足はもう、草が伸び放題に伸びる緩やかな丘の斜面に踏み出していた。川面は真珠の粒が連なっていると見紛うほどで、煌めきに引き寄せられるように、少女の背中は林から離れていった。
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