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年末年始に観た映画(NANASE)


遅ればせながら、あけましておめでとうざいます!

年末年始に観た映画を雑多に挙げていきます。

オリヴィア・ワイルド監督『ブックスマート』(2019,米)

 がサイコーだった!
 12月29日に滑り込みで観た話題の映画、2020年私的映画ランキングベスト1!!!

 監督のオリヴィア・ワイルドは、『The OC』『her/世界にひとつの彼女』等で知られる女優さん。初監督作らしい。

 基本的には『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(2007,米)的なノリなのだけど、青春の痛みと輝きのすべてが愛おしくなる、最高の映画だった。

 『スーパーバッド』でいうところのイケてない童貞枠がガリ勉タイプの女の子モリー(ビーニー・フェルドスタイン)とエイミー(ケイトリン・ディーヴァー)で、「皆が遊んでるときに勉強してたあたしたちは、これから勝ち組キャリアまっしぐらだから!」と周りを見下していた2人だったけど、実はバカにしていたクラスメートたちが名門大学に受かっていたりgoogleにスカウトされていたり(!)していた事実を知って愕然。

 で、「高校最後の日に高校生らしい思い出を作るぞ!!」と一念発起して、クラス1の人気者のパーティーに行くことを決意する。

 でも友達がいないのでパーティー会場がわからず、大金持ちの変人クラスメートのパーティーやミュージカルマニアのゲイカップルのパーティーに行ってしまったりしてなかなか本命のパーティー会場に辿り着けない。この展開は王道ドタバタで面白い。女子同士のあけすけな下ネタが炸裂するのも好き。笑。

 やっと辿り着いたパーティーでもお互いの好きな人同士がカップルだったことがわかって2人同時に失恋したり、皆の前で大ゲンカしたり色々あるのだけど、そんな中で、これまで知ろうともせずバカにしてきたクラスメートたちの姿がだんだん見えてくるところが泣ける。

 ダブりのメキシコ系生徒(googleにスカウトされた子)と超美人のファイン先生のワンナイトラブも良かったし、「トリプルA」(サービスが良い、いう意味)というあだ名を女子に呼ばれるとき実は傷ついていたビッチ系美女アナベルのシーンも良かったし、変人ジャレッドがモリーとちゃんと話すシーンも良かったし、失恋はしたけどモリーとエイミーに次の恋の気配があるのも良かった。

 そして何よりも、主人公2人は卒業後離れてしまうし、これからどう生きて行くかわからないけれど、少なくともこの瞬間は永遠の親友であるところに感動する。しんみり別れたあと「やっぱ飛行機最終にするからケーキ食べよ!」というオチも笑いつつ泣けた。



鈴木清順監督『関東無宿』(1963年、日活)

 去年最後に観た1本。まあお約束の任侠映画なんですが、小林旭めちゃくちゃ美しい。

 人を斬った後に着流し姿で雪の中を歩くシーンの様式美よ!伊藤雄之助が出ているところも嬉しい。
 「私ヤクザが好きなのよ〜♪」と言ってホイホイついて行って、結局騙されて売られても、「ま、いいわ♪ 楽しそう、やってみる♪」と言う中原早苗の、何があったんだよって言いたくなるレベルの肝の座り方が面白かった。


A.ヒッチコック監督『サイコ』(1960年,米)

 新年初映画。10年ぶりくらいに観たけど、ストーリーわかっててもやっぱり怖い。

 もはやその名を聞くだけでちょっと怖くなるノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)が、母と2人で暮らしていた頃はどんな生活だったのかを想像するのも楽しい。アンソニー・パーキンスの演技、「一見優しそうだけどヤバイ奴」感に溢れていて、改めてすごい。「人を正面から殴ることのできる人間は殺人鬼にはならない。」と何かで読んだけど、ノーマン・ベイツは正面からは絶対に殴らないでしょうね。

 そんな流れで、アマプラにたくさん入っている未見のヒッチコック映画を何本か観たり。電車の中で話しかけてきた男から「取り替え殺人」を持ちかけられ、適当に流してたら本当に妻を殺されて殺人犯にされかける、巻き込まれ型映画『見知らぬ乗客』(1951年)、ダメ男にベタ惚れして結婚したけどだんだん疑惑が深まってきてノイローゼになる妻の話『断崖』(1941年)など。

 『見知らぬ乗客』は川本三郎の『ハリウッド大通り』でジェニファー・ジョーンズを知り、彼女の不倫に傷ついてアル中になり悲しい人生を送った夫ロバート・ウォーカーの出世作がこれ、とのことで興味を持って観たけど、なかなか面白かった。ただこれで解決するなら最初から警察行けば良かったんじゃ…とは思う。ロバート・ウォーカー、この映画公開後すぐに亡くなってしまったそう。

 『断崖』は微妙。良かったね、という終わり方笑。とはいえ主演のケーリー・グラントの影のある魅力に惹かれた。他も観たい。

 ヒッチコックは煽りの天才なんだな〜(その分煽った挙句ラストが普通だと拍子抜けしちゃう)。


デスティン・ダニエル・クレットン監督 『黒い司法』(2020年、米)

 この監督の映画は初めて観たけど、お父さんが日系アメリカ人だそう。素直に感動するBLM映画

 ろくに裁判もせず収監されていたアラバマ州の死刑囚たちを無償で弁護した実在の弁護士、ブライアン・スティーヴン(マイケル・B・ジョーダン)の話。

 「顔を見たらわかる。」くらいの理由で死刑囚にされてしまったジョニーD(ジェイミー・フォックス)。ブライアンは、彼が犯人ではない証拠がたくさんあるのに誰もまともに調査しようとしないことに憤り、断固として闘う決意をする。

 最初はジョニーDも「ハーバード卒のインテリに何がわかる」という態度を取っていたし、地元警察から嫌がらせを受けたり、ジョニーDの友達に証言を拒否されたりいろんな困難に見舞われるけど、最終的には検察官の良心に訴えて無罪を勝ち取る。

 無実の黒人青年を弁護する話『アラバマ物語』を街の誇りとしながら、今現実に闘っている弁護士には嫌がらせをする矛盾、「ただ街の人々を守りたいだけ」と言いながら真犯人は放置する矛盾、そういうものに打ち勝って、「正義はあるんだ…!」と思わせるところに素直に感動。80年代の事件で、そこまで昔の話じゃないところも考えさせられる。

 本物のブライアンとジョニーDは生涯親友だったそう。


 デヴィッド・エアー監督『エンド・オブ・ウォッチ』(2012,米)

 『黒い司法』のあとに観て、なんとも言えない気持ちになった。 

 ロサンゼルスの警官テイラー(ジェイク・ギレンホール)とマイク(マイケル・ベーニャ)の2人の日常を描いたドキュメンタリー風映画なのだけど、黒人ギャングとメキシコ・カルテルの下位組織が敵対している地域なので、追跡するだけで皆ほんとにカジュアルに銃を撃ってくる。それが日常なんだから、そりゃ性善説ではやってられないよな…と。

 マイクはメキシコ系で、陽気で家族思いのメキシコ人たちの雰囲気もわかるだけに悲しいラスト。

 とりあえず、メキシコ・カルテル・ロス支部(?)の女ボス・ララの行動が完全に男でめちゃくちゃかっこよかったです(※超悪い奴)。「あんたはあたしの女だ…欲しいものはなんでも買ってやるよ」


クロエ・ジャオ監督『ザ・ライダー』(2017,米)

 ロデオ(暴れ馬に乗る競技)を愛するサウスダコタ州のカウボーイの話。

 天才調教師だったブラディは、ロデオに出場した時の落馬による怪我がきっかけで馬に乗ることを医者に止められ、スーパーでバイトなどをしながら生活するしかない状況に(このシーン、『レスラー』を思い出した)。

 ちなみにブラディが兄貴と慕っているレインも、同じくロデオで落馬してかなり重い障害を負い、病院で暮らしている。ロデオってそんな危険なのね…。

 「ロデオが出来なければ何か他のことを始めればいいじゃない」と都会人は思うのだけど、彼らにはロデオしかなくて、次落馬したら死ぬ、と言われてもロデオに賭ける。こうとしか生きられない人たちの姿と、馬たちの名演技、サウスダコタの大自然がすごく絵になっていて印象的。行ってみたくなる。馬、本当に美しい…。

 そしてエンドロールで分かるのが、出演者が全員俳優じゃなくて本人役なこと!馬も含めて、皆演技うますぎじゃないですかね。演技というより普段の生活を撮ったような感じなのかな。

 とても2017年の話とは思えない雰囲気なのだけど(はじめ昔の話なのかと思った)、淡々としていて地味だけど、心に残る良作でした。


以上、年末年始に観た映画でした。

ちょっと雑多な感じになってしまいましたが、今年はもっとたくさん感想を書いていきたいな。

それでは。

K.ROSE.NANASE

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