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小説/黄昏時の金平糖。【タイムレコード0:07】#3 暁愛華葉、木暮葉凰の6月1日

木暮葉凰(こぐれ はおう) 
  6月1日 水曜日 午後3時35分
          愛知県 夏露中学校 会議室

「こんにちはー」
「はーい、木暮葉凰さんね、ここの席に座ってー」
「了解です」
 ため息を付きたくなるのを堪えてパイプ椅子に座った。
 なんで俺が校外学習の実行委員やんなきゃいけないんだよ。
 クラスの中でじゃんけんに負けたやつがやるという運試しな企画をやり、楽勝じゃんとか言いながら挑んだところ、全敗、よって俺がやることになったという事実を納得したくなかった。

 俺が気が沈んでいた時、チャイムが鳴った。
「全員揃ったかな。それじゃあ─」
 先生が号令を掛けようとした時、10組の席に座っている女子が制した。
「先生?涼路さんが来てないみたいです」
「え、あぁ本当だ」
 その女子が暁(あかつき)さんだと気付くのに時間がかかった。
「どこに言ったんだか、、、」
「そのっ、わたさん、さっき先生に捕まってたので、、、」
 小さいが、芯がある、まさに隠れ歌手のような地声の小泉(こいずみ)さんが発言した。
 、、、てか涼路、何してんの、、、。
「「はあ、、、」」
 暁さんと自分の声がハモった。先生も頭を押さえる。これは、実行委員のダルさだ。涼路は関係ない、多分。
 みんなが諦め始めたその時、勢いよく戸が開いた。
「遅れてすみませんでした!」
 涼路が入ってきた。
「、、、気の毒だな、お前」
「え?」
 先生が低い声で、何を労っているのか、はたまた呆れているのか分からないようで、涼路はきょとんとしていた。

暁愛華葉 6月1日 水曜日 午後4時30分
          愛知県 夏露中学校 会議室

「んで?俺は出発式を担当すりゃあいいのね」
「あぁ。私は開会式と閉会式」
「自分が到着式ねー」
 会議の結果、葉凰、わた、私の担当は式の進行係になった。まさか、式典を、しかもこの癖が強めの3人でやることになるとは。
「あ、決めたー?それなら台本配るから覚えてきてねー」
 先生の声がし、台本を手渡された。10分の喋る内容が書いてある。
「先生?期間とかって?」とわたが訊いた。そしたら、先生は「明日にリハーサルがあるからそれまでに」と答えた。葉凰は、思わず「は?」と声を出していた。自分も言いたかったが、流石に先生の前では言えない。
 明日?え、なんか早くない?

 そんな無理なことを─と思ったところで、先生から軽い声が飛んできた。
「まぁ、木暮も涼路も頭良いからいけるだろ?それに暁は学年一優秀なんだから」
 いや、まじかよ。
 そんな信用してたのか、私のこと。
 これはやってやるしかないなぁ、と目を鋭くした。余裕を見せるために、少し口角も上げて。
「お?愛華葉、気合い入ってるね」
 なんなんだよ、お前は。
 私は、飄々としているわたに余裕な顔を見せてやった。

読んでいただきありがとうございました!
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