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はじめての伊東・前編

先日、ふと思い立って伊東を旅行してきた。

思い立ってというのはちょっと違っていて、元々「一人旅に行きたい」という願望自体は抱えていた。しかしどうしても家を空けることへの恐怖心というか、本当にこんな贅沢しちゃったいいの……?みたいな罪悪感というか、細かく描写するのは自分語りにも程があるので控えるが、まあ二の足を踏んでいたのである。踏みまくって地は固まり、石橋はロケットランチャーで破壊して端っこを進んでいくような性格なので時間が出来てもなかなか行けずにいた。焦がれているのに恐怖心が邪魔をして動けないというのは傍から見ているとじれったいが、本人としては本当に本当に怖くて情けなくてどうしようもないものなのだ。


しかしそんなことをついったーでぼそぼそ呟いていた所、大変心温まる言葉や声援をいくつも頂いた。
そうしてようやく、行ってみてもいいのかな?……行っちゃおうかな?………行くか!みたいな気持ちになれたのである。背中を押してくれたフォロワー各位、友人各位には感謝してもし足りない。

ということで「行くか!」の決意の1時間後、サイトのHPからようやくホテルの予約をし、旅行の予定が決まったのである。
かなり情けない所のある旅行記ではあるが、よければ読んでいってくれたら嬉しく思う。そしてこれを読んだ、同じく恐怖でどこかに行けない人の勇気に繋がったら幸いだ。




シンカンセンチョットタベヤスイアイス


そんなわけで迎えた当日。新幹線すら一人で乗ったことがなかったため、もうチケット取る時点でアワアワする。しかし現代機器は大変親切なため、遠出の旅行のイロハも知らんクソザコにも優しい。ボタンはわかりやすいし、チケットも一枚で出てくるので親切。わからんことがあった時、駅員さんが丁寧に教えてくれる。東京駅、機械も人間も優しすぎる。ありがたい。
完全に初めてのことに対してチキりまくる性質があるので内心ではまだまだ二の足ステップしていたが、ありがたさを頂いたおかげでどんどん恐怖心が減っていくのを感じていた。

という恐怖心減量タイミングで手を出したのがそう、シンカンセンスゴクカタイアイスことスジャータのアイスである。
残念ながら店内販売は終わってしまったのだが、駅のホームでは引き続きアイスが売っている。サーティーワンも売っている。カップドリンクも売ってるし売店もふたつある。この美味しさの大洪水をうちの地元にもちょっと分けて欲しいと思うが、新幹線のホームって思ってた以上に長い。はちゃめちゃに長い。こんだけ長いなら転々とサービスがあるのも頷けるというものである。

そんなわけでアイス食いたい。めっちゃ食いたい。そんな気持ちでいっぱいになり、私は20分前にも関わらず売店に向かった。
ところで皆さん、新幹線発車20分前という言葉に付いてどう思うだろうか。時間があると見るだろうか。もうちょっと余裕があると思うだろうか。
私は20分前だとすごく焦る。いざ待つと「ちょっと早かったな……」と思うのに、体は勝手に動くのである。石橋ロケットランチャーメンタルは余裕を持つという言葉を越えて、多分遊ぶ時間とか余裕を自ら捨てているような気がする。
なので内心ひやひやしながらアイスを買いに行き、新幹線を待った。当然まだ時間があるのだから、手の中で無駄にアイスがひんやりしていく。
そうしていううちに新幹線は到着し、うきうきで座り、アイスの蓋を開けた。
さすがのカタイアイスもこれだけ時間を置いたのだから……とちょっと怖くなっていたのだが、どっこい天下のスゴクカタイアイスは格が違う。開けてスプーンを差し入れてみたら、なんと程よく食べやすくなっているではないか。20分経っても溶けないアイスって存在するんだ……と感心してしまった。


わぁい


いちごおいしい。めっちゃうまい。なんかチーズケーキぽさもあり、食べてると楽しくなってくる味だ。他の味も食べてみたいところである。

それにしても新幹線、スゴクハヤイ。40分くらいで東京から熱海に辿り着いてしまう。しかも熱海の先には名古屋も大阪も岡山もある。えっすごい。この新幹線、そのまま乗ってると名古屋とか着いちゃうんだ。すごいな。ほんとにどこ行っても自由なんだ。すげー。すげーすげーと言っていたらいつの間にか着いていた。ありがとう、新幹線……

勢いで稲取へ向かう


熱海で降りたら次は伊東へ。と思ったのだが、なんかこのまま電車乗ってると第二の目的地・稲取に辿り着くらしいと気づいたため、予定を変更して一日目に稲取に向かうことにした。ちなみにこう書くとまるで計画をしていたかのような物言いだが、そういうものは全くしていない。行き方は流石に調べたが、時間はこうでこの次にここに行って……みたいなタイムスケジュールを全く立てていない。バイブスで動いている。考えなしと考え過ぎの0か100かしか無いらしい、自分は。

まあ同じ沿線だしちょっと揺られてりゃ到着するだろガハハ!とか思って揺られていたら、なんだかんだで2時間くらい経ってしまった。それもそのはず、私はあくまで伊東から伊豆稲取までの所要時間が頭にあったのであって、熱海から伊豆稲取までは1時間半くらいかかるらしい。そうとも知らず「結構時間かかるなあ~」とぼんやり思いながら過ごしていた。こうして書いていると計画の立て方が死ぬほど下手ですね。

旅行に行った日は奇しくも雨で、傘が手放せない日であった。なので窓の外に広がる海も灰色ではあるし伊豆半島も黒っぽいなにかなのだが、でも海は広い。すっごく広い。おかげで移動中も楽しかったのである。尻はちょい痛かったが。

八百比丘尼と煮付けとニャンコ


なんだかんだで旅行の1日目の午前中はほぼ移動に費やしてしまったが、無事に稲取に到着した。
ここ伊豆稲取の漁港には八百比丘尼の像があり、なんと煮付け……というかキンメダイが有名なのだという。
「八百比丘尼」「煮付け」いまこのふたつのワードで思い浮かぶものはもちろん「ちいかわ」であろう。現在島編において葉っぱちゃんたちの罪と愛が描写され、更新されるたびに阿鼻叫喚の渦を巻き起こしている最高作品である。小さくてかわいいやつの説明か?これが……
ちょうど旅行の数日前に煮付け回が投下され、そこで回ってきたツイートにより稲取に八百比丘尼の像があり、煮付けも食べられるということを知った。
「ちょうど静岡行くしええやん!寄ろう!」くらいの気持ちだったように思う。今ならわかる、「寄ろう」の距離では確実にない。

さて、着いたはいいものの「稲取漁港のはじっこに像がある」という情報しか持ち合わせていなかった私は、とりあえず左に曲がってひたすら歩いてみることにした。キャリーバッグを持っているためめっちゃ肩が重い。ヒィヒィ言いながら歩く。が、端っこに像の姿は無かった。

ここでもう一度スマホで像の場所を調べる。もっと早くやれと己を叱咤しつつ調べてみた所、ようやく詳しい場所が書かれているサイトを発見した。なんと反対側だそうである。わぁい。

稲取漁港は開けているため、反対側もよく見える。恐る恐る自分の位置とは逆方向を見れば、なんとわかりやすく赤い鳥居があるではないか。またやってしまった。そう思いつつ、まあえっか、と気を取り直して反対側までのそのそ歩いて行った私であった。


八百比丘尼像

到着!八百比丘尼像、案外小さめだ。なんと首も無い。隣のふたつはなんだろう?色んな事を思うが、まずは手を合わせる。


八百比丘尼像について詳しく書かれているぞ


こちらの八百比丘尼様、なんと稲取の道祖神なんだそうだ。詳しい説明は画像を見て頂けるとありがたい。不純な目的で訪れてごめんなさい……と思いつつも、実際にこの目で見る八百比丘尼に関する造形物は初めてだったのでワクワクが止まらなかったことも確か。私は人魚だの肉だの不老不死だののことを365日考えているような人間なので、ここ数か月のちいかわもここ最近のツイッターも楽しく見ているし、今この状況も好奇心が抑えきれなくて破顔していたと思う。これからも旅行に行く際は八百比丘尼に纏わる場所を訪れたいもんですね……

人魚だの不老不死だのを愛するあまり書き殴ったお話たちもついでに見てって(宣伝)


ねこがいた。かわいいね。


お昼を食べるぞ


さて、この時点ですでに午後1時を回っており、朝ごはんもろくに食べていなかったため私の胃袋は限界を迎えていた。えげつなくお腹が空いた。
そこで、この八百比丘尼像に向かう途中にあった「網元料理徳造丸」さんへ足を運ぶことにした。

前述したが、私が稲取にやってきた目的はもう一つあり、そのひとつが「煮付け」である。無論人魚の煮付けは食べられないし食べたくも無いが、稲取漁港近辺では名産の金目鯛の煮付けが美味しいと言うではないか。ウッキウキのペッコペコで徳造丸さんの2階へレッツゴーした。


どしゃぶり漁港

さて、煮付けを食べるのはもちろんとして何を食べようか。メニューを見てみると、稲取で撮れたお魚をふんだんに使ったぜいたくメニューが沢山並んでいる。そしてその贅沢さは、普段私が食べるものの値段よりもかなりする。チキンゆえ怖気づく。
しかし、恐怖を乗り越えて旅行に来たのに怖気づいてどうする。何よりなかなか来られる機会もないし。そんな風に珍しく思い、私は2100円の刺身定食を頼んだ。頼むときも緊張していたが、店員のお姉さんは優しく応対してくれた。ありがたい。


おいしすぎるお通し。お酒が飲みたくなっちゃうね

まず私の元に現れたのがお通しの野沢菜の生姜昆布付けとイカの塩辛三点セット。味はノーマル塩辛・うにいか・三升漬となっている。イカにうにをまぶしても許されるのか。そんなセレブ×セレブみたいなカップリングが許されるのか。果たして仲良くなれるのか、ウニとイカって。
恐る恐る食べてみる。どれも美味しい!しかもうにいかが一番美味しい。私は飯が来ていないにも関わらず塩辛をもくもくと食べ進めた。正直米か酒が欲しい気持ちはあったが、それ以上にもっと食べたいの気持ちの方が勝ち、延々と塩辛を食べ続ける人間になった。美味しい!!!!!野沢菜も美味しいよ!!!


おさしみもりあわせ。まぐろとイカと大量の桜エビと……あと一個忘れちゃったな……

続いてやってきたのがメインのひとつ・お刺身の盛り合わせ。
元々伊東はわさびが有名らしいとChatGPTが言っていたので、ちょっとだけわさびを食べてみる。あんまり辛くない!おいしい!なんならわさびとしょうゆをご飯にのっけて食べたい。
そして肝心のお刺身だが、これまた美味しい。ちょっと忘れてしまったが、左のおさしみも美味しかったしまぐろも肉厚。なにより手前のイカのお刺身が美味しいのなんの。私は感動しすぎてもうニッコニコで飯を食っていた。ちなみに左の桜エビだが、本当に籠いっぱいに入っている。さすがにツマとかで底上げしてるだろと思ったら、底の方に控えめにツマがある程度。籠の2/3は桜エビだと思って頂きたい。いいんですか?桜エビをこんなに頂いてしまって………

煮付け

そしてとうとうメインディッシュ2の金目鯛の煮付けが届いてしまった。
針生姜こそ乗っていないものの、完全にあれと同じ照りである。一瞬身構えた。
しかし食べてみればこの金目鯛の煮付け、めちゃくちゃ美味しい。別所で聞いたところによると、醤油と砂糖のみで味付けされているため特別甘めに仕上がっているんだとか。柔らかい身に甘辛いタレ、添えてあるお野菜二種もありがたい。人生で外で煮つけを食べる機会はあまり無かったように思う。そのため美味さもひとしおであった。


黄飯とお吸い物。

そして何と言っても忘れてはいけないのがこの黄飯とお吸い物である。
黄飯というのはくちなしの実によって黄色く色を付けられたご飯で、お祝い事の際に食べられたりするんだそうだ。そして仕組みはわからないが、魚によく合う。ものすごく美味しい。
特に奥の方のお吸い物が本当にじんわりと温まる良いお味であった。嬉しすぎて最後の方までニコニコで食べていた。嬉しすぎてレジのお姉さんに「超美味しかったです………」と感想を伝えた。伝えんと申し訳ないと思ったからである。

定食のため、結構お腹いっぱいになった。しかし魚メインの食事であったためか、満腹もなんだか不快じゃない。胃もたれとかしない。私はすぐ胃がもたれてしまうクチなので、この後にも移動が待ち受けている身としては本当に嬉しかった。

行きよりも帰りの方が雨脚が弱まっていた。稲取の街並みを見ながら歩く散歩はなんだかものすごく贅沢だ。こういうことを本当のぜいたくと言うのだろう……などと駅に行ってみたところ、今その瞬間電車が出発したところだった。次の電車は1時間後である。

やっぱりなんか、もうちょっと考えて行動した方がいいかもしれない。
ちなみにこの後行った「かやの寺」の「消災の道」という真っ暗な道を歩くパワースポットの3歩目で壁に激突し、干支マニ車占いではあわや大凶を引きかけたりした。やっぱりなんか、ちょっと気をつけるところは気を付けようと思う私であった。


さて、さらっと書いて終わろうと思っていた旅行記だが、この時点で5000字ちょいである。これ以上書くと読んでる方も疲れてしまいそうだと思うので、前編はこれにて終わりとさせていただく。
中編へ続く。

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