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歩き遍路12番札所焼山寺

焼山寺参り、それは、歩き遍路にとっては有名な難関の一つ。
焼山寺はお遍路さんが転がるほどの険しい道のりが続くことで有名な「遍路ころがし」と言われる場所。

噂によると、歩き遍路を志した人の約50%がここで諦めるらしい。

藤井寺〜焼山寺までは約6時間、時間がかかる人で8時間弱。
と、これはあくまで平均の数字。
私は成人男性と比べれば一歩も小さいしなぁ…。

全員食堂に集合して食べる夕飯の時、
様子を見たけど、他のお遍路さんはほとんど50〜60代の男性。ご夫婦が一組と、若い女性が私以外にも一人。

前日の藤井寺で食事が一緒になった、歩き遍路は7回目だというおじさまは、「焼山寺?5時間でつくよ、宿は16時には着くんじゃない?」と余裕そう。
そんなわけあるか〜〜〜い!!!

時に参考にならないベテラン遍路さんのアドバイス。

しかも、宿は焼山寺からさらに先…。
17時を超えそうなら伝えてね!と予約時の一言。うーん、自信ないなぁ…。
ゆうにこの日は徒歩移動時間9時間を超えるかもしれない…!

と、まあとにかく心配な気持ちで迎えた朝。
心配で朝ごはんも喉を通ら……ないというわけでもなく。

美味しい朝ごはんはもちろん見事に完食


いざゆかん、焼山寺!!

藤井寺境内にある焼山寺の入り口。
焼山寺みち、との案内。


ベテランお遍路さんに言われた、「16時には宿に着くよ」が気になって仕方ないらむち。

スタートダッシュを早歩きしすぎて、早々にゼェハァ…………。
おかしいなぁ、田舎育ちで高校の遠足で山登りは毎年してたのに。
山が、というより飛ばし過ぎました。
改めて、少し休憩しつつ、息を整えました。過呼吸寸前だった。皆さんもペース気をつけて…。

よく考えてみたら、別に宿は焼山寺超えの客が遅れるのなんて想定内だし、焦る必要なんて無い。変な負けず嫌いが出ちゃったようで。

通過地点を表す目印
1/6なのにゼェハァでした


ペース整えて歩いていくと、見慣れたお二人が。なんと、昨日の宿でお会いしたご夫婦でした。
そう、四国遍路の宿って、行き先も活動時間も似ている人たち。会う確率ってそこそこ高い。
旦那さんの方はお遍路何回目かで、奥さまは初めて。
きっと奥さまと私のペースが似てるんだろうな、この後も休憩中に追い越したり、逆に追い抜かれたりしながら何度も会うことになるのでした。

それにしても焼山寺道、アップとダウンの繰り返し。道というには少々無理のある崖寸前の場所すらある。
弘法大師が通ったみちをそのまま残してあるのだそう。
わらじと僧衣でこの道を渡った弘法大師は本当に偉大…それに続いた信徒の熱意も並々ならぬものです。

山道を進む。眺めはたいしたもの。

宿の人の教えによると、2時間〜2時間半くらいで折り返しの「柳水庵」に到着していればいいペース、とのこと。

宿を出たのが大体7時、なんとか踏ん張って流水庵に9時半頃到着。
いい感じなんじゃね?
ちょっと調子が出てた。

柳水庵を過ぎると、何故か一気に道は下りになります。頑張って登ったのに下るのか…。
ちょっと拍子抜けしていると、道が急に舗装路に代わって、人里が見えた。
ひと山超えたのだ。
藤井寺から焼山寺は、山を二つ越えるような構造になっている。
その人里に降りた時、
「すだち持ってかえる〜〜〜?」
斜面に植えられ青々とした実をつけるすだちの木陰から、農作業着のおばさまが顔を出す。
「いいんですか?」と聞くと「農薬使ってないけん、齧りながら行きや〜」とのこと。
すだちってかじれるの?

みかんの国出身のらむち。
同じ柑橘でもすだちは齧ったことはない。
お魚やお刺身の風味付けに櫛形切りでちょこんと乗ってるイメージのあるすだち。
レモン的な風味だと思ってたのであんまり齧るイメージはなかったけれど…。

目の前の畑で採れたてのすだち

皮ごとがぶり、一口齧ると、酸っぱい味とほのかな苦味と、すだちの香りが口の中に広がって…。
めちゃくちゃ美味しい!!!!
すだちがこんなにそのまま食べて美味しいものとは知らなかった。
見直したぞ、すだち。
ちなみに、同じ柑橘どころとはいえ、愛媛で買うと多分そこそこお高いはずです。
おばさま、ありがとう!!!!!!

すだちのビタミンに少し元気をもらいつつ、残りの道のりを進む。
そこからかなりの登りの連続で(予想はしてた!)ほぼよじ登るみたいな場所すらあった。

ヘトヘトになりながら登ると、「焼山寺」の文字。

登頂です!!!!

大体時間にして12時半頃。
登り始めが7時頃だから、おそらく早い部類に入るのかな。
兎に角登れてよかった〜!!!

お参りを済ませて、お寺の休憩所をお借りしてお昼のおにぎりを食べます。

やっと辿り着いた焼山寺。
お宿さんに作っていただいたお昼ご飯のおにぎり。
ヘトヘトな体にこのシンプルさが最高!

そういえばこの頃になると、同じようなペースで歩いていたご夫婦はあまり見かけなくなっていた。
大丈夫かな、奥さまのほうは少し足が痛そうだった。

少し休憩した後、宿への道を進む。

焼山寺から少し下ると「杖杉庵」という場所に「衛門三郎」の像がある。
これは、弘法大師の逸話「衛門三郎伝説」によるものだ。


衛門三郎像
いろは唄の石碑があるのは、
いろは唄も弘法大師が作ったとされている説から
本当かなぁ…。



愛媛に住んでるひとなら「石手寺」の名前の由来になったひとって言い方の方がわかりやすいかな。お遍路を最初に始めたひととも言われている。


さて、一つここで問題があります。
現在時刻14時、宿まで徒歩約3時間半(予測)。
脚、多分限界。
圧倒的無理…!!!
しかし地図は無常にも、もうひと峠越える宿までのルートを指すのでした。
いややっぱり私の予想当たってましたやん。
焼山寺までは順調だったのですが、疲れに負けてペースが落ちた私の脚が誤算でした。
とりあえず宿には遅れるかもしれない旨連絡を入れて、棒のようになった脚を進めます。

途中の集落で出会ったおばあちゃんが
「焼山寺ぃ?道ひどいやろ、なかなかお参り出来んくらいやからなぁ、ご苦労なことよ」
「どこいくん?植村旅館?ぁ〜あの道路右でずーっと上やわ」

割と離れてる場所なのによく知ってるなぁ、おばあちゃん。
地元のひとはお遍路さんのことを「なかなか出来ない大変なことしてまでお参りをするひと」って感じでそこそこ尊重してくれる。みんな挨拶してくれるし親切だ。

くたくたになりながら旅館到着、17時半。
お風呂にも入って、ご飯を食べている頃に、例のご夫婦にもばったり会った。今日の宿も一緒だったのだ。
ご夫婦も諦めずに無事に歩けててよかった!!
やっぱり焼山寺参りはしんどいねー、とお互い笑い合って晩御飯をいただきました。

美味しい晩御飯。


晩御飯は豪華で、お風呂も気持ちいいし、お洗濯もしてもらって、至れり尽くせり。
疲れが少し吹き飛んだような心地。
今日は、出かける前に地元の友達にもらった「休足時間」(湿布みたいなやつ)貼り付けて寝るぞ!
おやすみなさい〜〜〜!!!



吉野旅館〜12番焼山寺〜植村旅館
33.5km 49693歩

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