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フワフワした不安という世相

大阪の心療内科で24人の方が亡くなった。放火の疑いが強い。また,昨日はタレントの松田沙也加さんが転落死された。自死の可能性もある。

コロナ禍のいま不安が増殖していると感じる。大衆心理はどうなっているのか。昨日のある出来事を通じて考えてみたいと思う。

昨日,実業家の前澤さんが「宇宙からのお金配り,ハズレなし」というイベントを行った。私は彼が先日宇宙に200億円を払って行ったニュースをみて苦々しく思っていたのだが,単純にお金がもらえるならと興味をもった。

彼が企画したのは新たに作っていた寄付専用のアプリに登録させ,お金配りは抽選で行われ,その際にLINEの友だち登録が必須というものだった。寄付専用のアプリでは,「1万円を1人に配ります。条件は自分のツイッターアカウントをフォローすること」というたくさんの人が行う告知分とそれに応募する数万の人々が溢れていた。とりあえず手続きを一通り済ませ,抽選に参加しようとしたらサーバーダウンでつながらない。ツイッターでは500円当たったというツイートがあふれている。「たった500円か」とがっかりし,お金が貰えるというだけで群がった自分に自己嫌悪を抱いた。

ところがしばらくするとツイッター上に「100万円当たりました。私をフォローしてくれた人から抽選でお金をあげます」というツイートが山のように溢れだした。抽選のなかに100万円の当たりがあったことから,500円の当たり画像を加工した人間が詐欺をし始めたようだ。そこに群がるたくさんの人。お金が欲しいという人が自分以外にもたくさんいるということが可視化されていた。それと,冷静に考えてこれだけたくさんの人がお金を欲しがっているのに自分一人に100万や1000万などの多額の金額が前澤氏から貰えるはずがないということに気づいた。500円がせいぜいなのである。

冒頭に書いた不安は,大衆心理としてフワフワした心理状態を表しているとも考えている。あらたなオミクロン株の流行と先行きの不透明感,行動制限,無差別殺人の多発,著名人はじめ自殺者の増加。誰もがいま不満を抱えて生活し,ちょっとした甘い言葉に「お金が貰えたら気分が変わるかも」と淡い期待を抱く。そういう不安定な心理状態にあるのが今の大衆心理ではないか。

前澤氏のお金配りについては,お金を欲しがる人の膨大なデータを1人500円と引き換えに手に入れ,寄付のアプリの宣伝を行う巧妙なビジネスだろうと思う。彼がいうように自分にはもう必要がないという理由でお金が余っていて,本当に社会に還元したいなら,自分をアピールする必要はないはず。また,寄付をアピールするのはお金をもたない大衆ではなく,富裕層に対してすべきであろう。彼の行為には注目を集めようとする意図が必ずおまけになっている。巧妙にさらなる知名度とデータを手に入れることでビジネスに生かそうとしている可能性が高い。

しかし簡単に騙されてしまうのが大衆心理であり,その一人が私なのではあるけれど。いまはフワフワして不安な大衆心理にするりと入り込もうとする人々が増えていく世相である。多くの人にはこういうときこそ5年,10年先を見据えた行動をとってほしい。何でもいい。お金がほしいなら,着実にお金が手に入る行動をとる。あわよくば人に貰えるかも,という情報はなるべくシャットアウトしていきたいものだ。

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