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サーモンが好きだからと言って、たくさんあればいいという問題ではない

今も昔も、お寿司が好きだ。

小さい頃はよく、家族で外出した帰りに近所の「小僧寿司」に寄り、パック詰めのお寿司を買っていた。

物心ついてから最初に好きになったネタはいくら。そして小学生に上がってしばらくして、サーモンのおいしさに気づいた

私は好きなものは最後に取っておく派。小僧寿司で買った8貫入りのお寿司を、たまご、あなごの順に食べていき、最後にサーモンを食べる。あまりに大事そうに取っておくので、父はよく自分のサーモンを私の皿の脇に置いてくれた。


そんなある時、いつも通り小僧寿司で寿司を買いに行ったときのこと。お店の前に車をつけるので、誰かは車内に居ないといけない。この日は私が車内に残り、両親がお店で寿司を選んでいた。

そのとき、店から少し急いで母が出てきた。手には何も持っておらず、窓越しに私の名前を呼んだ。

「『サーモン尽くし』っていうパックがあるよ!」

普段食べる8貫入りの寿司のほとんどがサーモンという、夢のようなパックが売っているらしい。すごい。迷わず私はそれを選んだ。

家に帰って実際にパックを開けると、なんと8貫中4貫がサーモン
これはすごい。私はいつも最後に食べるサーモンを、この日だけは最初に食べた。それだけで何だか特別感があったし、「いけないことをしている」背徳感も感じた。


けれど、3貫目を食べながら私は気づいてしまった。

サーモンは好きだけど、こんなにいらないかもしれない

味に飽きたわけではないけれど、サーモンを入れることによって弾かれてしまった他のネタも食べたい。サーモンは1貫だから、おいしく食べられるのかも。子どもながらそう気づいて、母にも報告した。

それ以降、『サーモン尽くし』を購入することはなかった。


いつからか、私たちは小僧寿司に行かなくなった。
新しく家の近くに回転寿司がオープンしたし、パックの寿司はスーパーでも買える。

それでも、あの小僧寿司をふと見かけると、『サーモン尽くし』と「好きなものは、たくさんあればいいわけではない」という教訓を思い出す。

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