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ライチの季節

ライチという果物はご存知だろうか?
わたしの住む農園にはライチの木がたくさんあり、毎年今頃の季節には真っ赤な実が食べ頃だよーと知らせてくれる。
歯で皮をひと噛みすれば、パリッという音がして白い実が顔を出す。
甘くてジューシー、湿度がある暑い日にはうーんと唸り声が出るほどにおいしい。
聞くところによると、ハワイ島ヒロのライチは特においしいらしいのだ。

さて、ライチが食べ頃になるとうちの農園でもSNSなどで告知をする。
我々は手助けの要請がある時には、木に梯子を掛けてライチをピックしたり袋詰めの手伝いをするが、だいたいは農園長であるパートナーのお父さんが老後の趣味程度でやっている。

今週は農園長と家族が1週間の旅行に出た。
ライチは我々の手に託された。
SNSに告知を出すと、ハワイのローカルがいかにライチ好きかがわかる。
ほとんどの注文が10ポンド、20ポンドだ。(4.5キロ、9キロ)

昨日今日とピックして洗い、乾かして5ポンドずつ計量して袋詰めの作業をしている。
ライチエリアには4頭の羊がいて、梯子の下で落ちてくるライチを狙っている。
うっかりバケツを置いていると、頭を突っ込んでムシャムシャ食べているので気が抜けない。
もう一つの敵はファイアアーンツ(火蟻)。
見えないほど小さな蟻だけど、刺されると泣くほど痛い。先日はこれが目に入った。
目に入ったらもう絶対刺される事は無い、と誰かが言ってた時は馬鹿にしてたけど、ほんとそう願う。

それでも木に登り赤い身を一つずつとる時、ふわっと幸せな気持ちになる。
汗をかきながら手を伸ばして、表面がツルッとした食べ頃の大きな実をポキっととる。
風が通り抜け一瞬で涼しさに包まれる。
かつての人生でもこうして自然の恵みに生かされてきた事があったのだろうと思う瞬間だ。
この作業をしている間はそこにある赤い実をとることだけを考えてる。
人生とはこれくらい単純で幸福なものなのだ。

農園長は週末には帰ってくるので、我々のライチ仕事は非常勤に戻るけど、時々手伝おうか。
今日も蒸し暑い午後、ライチをひとかじり。

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