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ニチアサの話がしたい vol,195


■今週のガッチャード

・第30話「邪悪降臨!三倍偉大な冥黒王」

 「夏映画前」というのは何かと難しいシーズンだと思う。夏映画と齟齬のないように本編のキャラクターの関係性や勢力図を調整しないといけないし、夏映画限定フォームがあるからそれ以上に印象的なフォームもちょっと出しずらいし、けどストーリーはクライマックスに向かって行くから広げた風呂敷も畳めるところから畳み始めないといけないしで、何だかやたらと説明過多になったり展開が足踏み状態になることもままにある中、「夏映画前」に突入した『ガッチャード』はどうなるのかなと思っていたが、今週40話「邪悪降臨!三倍偉大な冥黒王!」から、足踏みどころか「三冥黒王編」を新しくスタートさせるとは……ビックリである。「分かるぞ!理解する!」と悪ボスらしからぬ距離感でこちらのお気持ちを理解しようとしに来るギギスト様に加え、人間を「愛している」からマルガムにしたいと宣う凶悪でテンションの高いジェルマン、クールでセクシーな占星術お姉さんのガエリヤと、「個性豊か」を飛び越えて「クセが強い」までいってる新キャラ2人が登場し、101体のケミーを集め終わりひとときの平和が訪れたように見えたガッチャードワールドで所狭しと暴れ倒した30分だった。

・浅井ジェルマンさんオンステージ!

 その中でも今週40話の面白さを牽引していたのはやはり冥黒王の1人にして錬金術の始祖、ジェルマンではないだろうか。レインボーガッチャードの力で瀕死となったギギストの元へ「いいザマだねギギスト~。抜け駆けした罰だァ」と楽しげににじり寄って来た瞬間から、その何とも言えない不気味な雰囲気と、確実に「人間ではない」ことが一発で分かる奇妙な動きに「エッ超好き……!!スーツアクターさん誰なんだろう!」と胸をときめかせてしまったのだが、これがなんとまあ我らが浅井宏輔さんと聞いて、私はもう椅子から転がり落ちるほど喜んだ。「キミたちのお父さん……ごちそうさま!」とアトロポスとクロトーの神経を逆撫でするような手つき、首の周りから4本の腕が生えているスーツの造型を利用して、グワッと前傾姿勢になり、全ての手を前に突き出して「ケミーをよこせ」と迫ってくるケダモノ感。もう、さすがとしか言いようがない。浅井さん最高である。この浅井さんのいい意味で「イッちゃってる」お芝居を更に盛り立てる、声優の天﨑滉平さんの怪演も素晴らしかった。ライダーシリーズにおいてスーツアクターさんの演技と声優さんの演技が上手く噛み合うことで、想定していた何倍も魅力が跳ね上がる怪人は枚挙にいとまがないが、ジェルマンもまた、アクション界と声優界、それぞれの業界の実力者である浅井さんと天﨑さんがガッチャンコしたからこそ、これほどまでに面白いキャラクターが錬成されたのだろうと思う。

 番組開始初期から、アカデミーの一年生でも使える「基礎呪文」として唱えてきた「万物はこれなる一者の改造として生まれうく」を、このタイミングで悪ボスの1人であるジェルマンが、無機物からゴーレムを作り出す「最強呪文」として使う演出にも痺れたが、私が決定的に心臓を射抜かれたのは、「玉座は渡さん」と制したギギストの腹にジェルマンが強烈なパンチを喰らわせて馬乗りになり、「まだ傷が痛むだろォ~??大人しくしてよォ~~~アハハハ」傷をバシバシ叩き、両手でギギストの顔を掴んで締め付けるシーンだ。そもそも私が特撮の沼にここまで深く転がり込んだのは、『ビルド』7話で自由気ままなブラッドスタークをナイトローグが壁にガツンと追い詰め、胸ぐらを掴んで「いいから一緒に来い」と従わせるシーンがきっかけと言っても過言ではなく、そのくらい「敵幹部同士が実力でその時々のパワーバランスを決める」シチュエーションが好きな私にとっては大変刺激的なシーンで、もうなんか目の前がバチバチしてしまった。力でねじ伏せる怪人と屈服させられる怪人、そのどちらもが抗い難く好きすぎる。

 そして今回のジェルマンとガエリヤの登場によって強く感じたのは、ギギスト様はけっこう「可愛いひと」だったんだな、ということである。それまで魔王風情だった敵役が一度完膚無きまでに敗北することにより、人間臭さや哀愁を帯びて、なぜか不思議と愛嬌のようなものが帯びてくるのはよくある話だと思うが、ギギスト様もご多聞に洩れずそうなってきたように感じる。卵の中にある賢者の石の存在にいち早く気付き、「私のこの『お気持ちご理解パワー』があれば人間などイチコロぞ!」と思ったかどうかは定かではないが、ともかく自分の力を過信して2人より先んじてルンルンと下界に降り立ったのはいいものの、逆に返り討ちに遭い、元のチームに戻ったら戻ったで「奴は四天王の中でも最弱」扱いを受けワンパンで殴り倒されてしまうなんて……軽率で不憫で可哀想で、控えめに言ってもかなり可愛い。ホッパー1をマルガムにした時は「この三角頭、許さねえ!!」と本気で腹が立ったが、今はなんかもうアクスタとか出たら買っちゃうくらいには好きになってしまった。読者の皆様は薄々勘づいている通り、軽率なのはどっちかと言えばギギスト様でなく確実に私なのだが、今回の話で「ギギスト様ってちょっと可愛いかも」とキュンとした御仁はきっと私以外にもいると信じている。(いるよね??)

・スパナが問う現実と共生

 出し抜けにちょっとフェチすぎる話をしてしまった気がするが、気にせず進めよう。上記でも述べたように、40話は新キャラクターのユニークさを印象深く描くのと同時に、新章の始めにふさわしい丁寧なタスク整理もされている。「これから俺たちはどうすればいい?ケミーを集めるという至上命令は完了した」と、公式サイト曰く「まんま製作陣の声」だったという言葉を最序盤で錆丸に(正確に言うとアイザックに)言わせることで、残るクロトーとアトロポスと決着を付けねばならないこと、集め終わったケミーを「すみやかに返還すべし」と命じてくる上層部に対しどうするかなど、これからアカデミーのみんながやらなくてはいけないことを一度整理してくれたり、シーン的にはここより少し後になるが、ニジゴンの中には最強アイテムである「賢者の石」のカケラが眠っていること、それを奪いに来る冥黒王たちからニジゴンを守る必要がある、という風にこれから「誰が何のために誰と戦うのか」を明確にしてくれたりと、常に視聴者を置いてけぼりにしない『ガッチャード』らしい心遣いを感じた。

 その上で、宝太郎と風雅の「人間とケミーの共生」という理想に対して「俺はその思想に手放しで賛同することはできない」とスパナに切り出させたのが素晴らしかったと思う。仮面ライダーに変身するようになって以降、まだ若く突っ走りがちなアカデミー生たちの精神的な長兄となってチームを支えてきたスパナ。ラケシスという思わぬ妹弟子(?)を得て、このままお兄ちゃんポジションに収まるのも悪くないかと思いつつ、言ってもまだ最終回まで2ヶ月あるし、正直もう一展開くらいあってもいいんじゃないか?と思っていたところだったのでこの展開は個人的に非常にうれしかった。更に、これに続くスパナの主張がどれもとても地に足の着いた現実的なものだったのも良い。ケミーがいなければ変身すらできないというりんねに対して放った「仮面ライダーが必要でなくなる世界を作ればいい」などはそれの極みではないだろうか。真の平和とはその世界から「戦士」が消えた時であり、逆説的に言えばケミーと力を合わせ戦う仮面ライダーがいる限りそれは達成されないのだ。黒い炎という人とは違う力を持って生まれたスパナだからこそ、「人は自分と異なる存在を簡単に受け入れられない」というのもある意味自分の問題として捉えており、その難しさも人一倍分かるのではないだろうか。それならば、世の道理を超えたケミーの特別な力は生活を豊かにする一種の「道具」として割り切り、人の手で管理し、人のために使役させていくことが現実的な意味での「共生」なのではないかというスパナの考えにはきちんと筋が通っているし、次世代のために連合の組織解体を目指すミナトに付いていくと決めた今の彼だからこそ言える建設的な意見でもある。

 それを踏まえて最初の台詞に戻るが、「俺はその思想に “手放しには” 賛同できない」の“手放しには” というエクスキューズに彼のクレバーさが光る気がするのは私だけだろうか。今の自分の知見から言えば賛同することはできない。だが、事と場合によれば考えが変わることもあるかもしれない。自分の考えは遠慮せずにハッキリと言いつつ、宝太郎たちと過ごし、自分の美学が最優先だった頃に比べて考え方や物の見方が柔軟になってきたのがよく分かる物言いだ。スパナはこれまでズキュンパイア編や九ツ村編などギャグ回には(演出上の意図なのか、演者の藤林泰也さんのスケジュールなのかは不明だが)参加せず、それがまた「容易にクールキャラをポンコツ化させない」という硬派さに繋がり好印象だったが、ギャグ回はギャグ回で実はケミーと人の生活レベルでの深い関わり合いを描いたものが多く、それらを目の当たりにしていないスパナは、逆に言えば今後そのような機会があれば、あるいは……という可能性があるようには思えないだろうか?いや、だからと言ってここで突然スパナメインのギャグ回が来るはず!ということでもないのだが、黒い炎の力の大元であるギギストとの決着も含めて、黒鋼スパナのドラマはこれからまだまだ面白くなりそうだということだけは期待しておきたい。

・いい顔すぎるぜ、三姉妹

 今週のもうひとつの見どころは先週に続き関係性に大きな変化を見せる冥黒の三姉妹だ。ついに擬態ではなく本当の風雅と再会できたりんねが、父親であるグリオン(グリオンもまた冥黒王に作られた「人形」だったというオチがまた悲しい)の仇を打てばきっと「変われる」と思ったアトロポスに「ジェルマンを倒して」と頼まれ、もし自分がジェルマンを倒すことができたらもう誰かを傷つけないと約束できるかと問い、彼女と「ゆびきりげんまん」をするシーンは、ちょっと季節外れの満開の桜の背景も相まってとても幻想的だ。40話を担当した坂本監督曰く「桜があるのはわかっていたが、画の良さを優先した」とのことで、それ以上の意味合いは無いと思うのだが、死んだ父親の仇を討つであるとか、ジェルマンを倒すであるとか、死にまつわる会話の後ろで桜が咲き誇っているという画そのものが、梶井基次郎の短編小説「櫻の樹の下には」を思い起こさせて美しかった。

 また、「家族ねぇ……」と、ご近所にもすっかり馴染んだ様子で公園でひとりごちるラケシスに思い詰めた様子のクロトーが襲いかかってくる素面アクションシーンは、クロトー役宮原華音さんを「愛娘」を呼ぶ坂本監督だからこそ撮れた名シーンだろう。「家族はいつでもひとつだ!」と叫ぶクロトーからは、彼女の心根は本当は誰よりも純粋であることが伝わってくるし、それを痛いほど分かっているからこそ「もう……分かり合えませんのね」と、強い力に溺れていくどこまでも幼い姉
に、恐れや怒りよりも悲しみが先立つラケシスの面持ちも見ていて切なく、宮原さん、坂巻さん両者の自分や相手の役に懸ける想いの強さが表情のひとつひとつに現れていた。

 ついに実現した鉄鋼 vs 黒装で戦い合う2人。ジェルマンから邪気を更に送られ、長い髪を振り乱しながら(なんとこのヘアスタイル、宮原さんの地毛を使ったものらしい。カッコいい!)暴れ狂うパーフェクトクロトーの凶暴さを身体全体で表現する宮原さんの熱演に、「私を力ずくで連れ戻して家族だと言い張るつもりなんですの!?そんなの……!!」と涙ぐむ、坂巻さんの迫真の芝居、そして追い詰められたラケシスの元へ「勘違いするなよ!俺は鏡花さんの研究を守るだけだ!」と、もはやちょっと微笑ましいまであるツンデレ台詞と共に助太刀に入る中田ヴァルバラドさんのカッコ良さが混じり合い、いろんな意味でたまらないバトルシーンであった。

 終盤、行方不明になったニジゴンを探していた宝太郎とりんねがジェルマンとガエリアに遭遇し、ゴーレムと交戦するシーンでは宝太郎がプラチナガッチャードに変身。先週の予告にも出ていたので、どういう経緯で登場するのかが気になっていたが、なるほどニジゴンが居なくなってしまうという導入だったかと手を打った。最終フォームが出るとどうしても活躍の場が減ってしまう中間フォームだが、こうしてストーリーに沿ったかたちで再登場してくれるのは(筆者がプラチナ好きということもあって)すごくうれしい。アクションの面では特にガッチャートルネードを使ったシーンでの永徳さんの剣捌きが美しく、鍔迫り合いになった後に一旦距離を取り、一瞬だけ刀を納めてスッと居住まいを正すところがカッコよすぎだ。そして驚いたのは、ケミーと力を合わせて徐々に優勢になっていくガッチャードにブチギレたジェルマンが「低脳な人間ども……大人しく俺の愛を受け入れろよ!優しく飼い慣らしてやるからさァ~~!」とヤンデレの極地のような台詞を言いながら力をゴーレムに与え、かなり大規模な爆破が起こるラストシーンだ。ロケ地は公園か何かだと思っていたのでこんな大爆発が起こるとは思わず、見ながら「えっ!」と思わず声が出てしまった。

 今週は3人の冥黒王の紹介や、クライマックスで必ず必要になってくる重要アイテム「賢者の石」の説明など、やり方によっては非常に地味になってしまう「整理整頓」も兼ねた回であったが、最後の爆破撮影しかり、要所要所で坂本監督ならではのド派手なアクションを挟むことで全く飽きさせないまま30分を駆け抜けたところに、脚本・監督、そしてプロデューサー陣がまさに「三位一体」となったクオリティの高さを感じる一話であった。次回はこの緊張感のある引きからはちょっと想像がつかないダンスイベント回とのことなので、ついに始まった3ライダーと3冥黒王との因縁も含め、坂本組の2本目を楽しみに待ちたい。

■今週のブンブンジャー

・バクアゲ16「ムラサキの始末屋」

 前回、錠とキー太郎の切なすぎる友情の行方を見届け、ションボリしていたところに(なお、我が家の甥っ子は「キー太郎が可哀想だよッ!」と激怒&号泣でした。分かるよ、その気持ち……)まさに彗星のごとくやってきてビューンと私たちを追い抜いていったムラサキ色の閃光。ついこの前始まったばかりだと思っていたのに、もう追加戦士の登場とは気が早いぜ!と思ったのだが、よく考えれば(いや、よく考えなくても)今週でブンブンジャーはもう16話。例年通り通算50話前後であれば、もう全体の1/3は終了したことになるのだ。こう書いていてもにわかには信じられないが、どうやらそうらしいのだ。ま、まじで~~~~~!?そりゃ追加戦士も出てくるわ!!

・焔先斗、そのカオス

 というわけで今週バクアゲ16「ムラサキの始末屋」はとにかく焔先斗&ビュン・ディーゼルのムラサキ一色という感じであった。そんな彼の動向はまさに「カオス」。木に引っかかった風船を少年のために取ってやるという、いかにも正義のヒーローめいたことをしたかと思えば、今度は喫茶店のバイト中に転んだ未来をさっと抱き抱え、キザな色男ぶりを披露。逆に玄蕃や射士郎には彼らの仕事へのプライドを傷つけるような嫌がらせをするなど、ヒールのような冷たい横顔も垣間見せる。では彼は計算高く冷徹なスナイパーなのかと言えばそういうわけでもなく、大也と挨拶代わりにやりやった時の「こんな修羅場も楽しんでやがる!」と呟いた瞳は、まるで新しい遊び場を与えられた少年のようにらんらんと輝いていたし、出会い頭にいきなり大也に「おりゃ~!」と飛び蹴りで突っ込んできた、ちょっとお茶目なところも含め、意外と情熱的で興味のあるものには何でも飛びつきたくなる好奇心旺盛さも感じられるのがキャラクター造詣として面白い。

 何とも幅広い表情を持つ男だが、それそも彼の名乗る「始末屋」の業務内容自体がかなり幅広い。一見すると何とも物騒な響きの「始末屋」も、先斗の場合は揉め事や困りごとの「始末を付ける」トラブルシューターの意で「始末屋」を名乗っており、要するに「何でも屋」に近いらしい。仕事相手に(今のところ)敵味方の区別はなく、ハシリヤンの脅威から人々を守りながら「届け屋」をやっている大也たちとは違い、先斗は依頼があればハシリヤンとも仕事をするのが特徴だ。まだ真相が語られていないので断言はできないが今回のソードグルマーの件も、ソードグルマーが倒された後のキャノンボーグの「満足です。ギャーソリンが蓄積され、刃は鍛えられた」という言葉を聞く限り、先斗に依頼したのは惑星リフレクターの伝説の剣の調達だけではなく、ソードグルマーを倒すところまでだったようにも見えなくもない。また、やや余談だが、伝説の剣の到着を待ち詫びているのを昼食が届くのを待っていると勘違いされたキャノンボーグ様が「お昼じゃありませんッ!」と鋭く突っ込む声優のくじらさんの言い方がツボで何度観ても笑ってしまう。本作中盤の名乗りもそうだが、くじらさんがとても楽しそうにキャノンボーグ様を演じられているのが伝わってきて何だかこちらもうれしい。

 そんな多面的でミステリアスな先斗の魅力を支えるのが演者の宮澤佑さんだ。筆者がイケメンの顔を見分けるのが非常に苦手なため、申し訳ないことに人から言われるまで全く気づかなかったのだが、ニチアサでは『リバイス』22話の空気階段の後輩芸人役、『ガッチャード』32話で登場したハンドレッドの幹部アルファ役でご出演されていた宮澤さんがついにレギュラーキャラでご登板だ。モデルのお仕事もされていただけあってスタイルが大変良く、高校時代はサッカーで全国大会に出場した経験もあり運動神経も抜群、メンバー最年長というだけあって大人っぽさや落ち着きもありつつ、ニカッと笑う顔は純朴で可愛らしく、そんなギャップもまた先斗にピッタリだ。

 ところで、16話の放送が終わった直後からやたら甥っ子が「西松屋行こう!西松屋行きたい!」と騒ぐので理由を聞いたら「ブンバイオレットがいるから!!」と元気に返され、初めは意味が分からなかったのだが、どうやら聞き慣れない「始末屋」を、よく知っている「西松屋」に聞き間違えたらしい。家族でひとしきり笑って「そうだね~西松屋に蔦宗さんがいたらいいよねえ。そしたら絶対写真撮ってほしいよねえ」なんて言いながら何気なくTLを見たらなんとびっくり。我が家と同じように「始末屋」を「西松屋」と聞き間違えるお子様が全国的に同時発生し、「宇宙一の西松屋」がトレンド入りを果たしていたのだ。おそらくこんなこと製作陣の誰もが予想していなかったことだろうと思うが、こういう予期せぬことが起こるから、いくら配信やサブスクが進化してもやっぱりニチアサはリアルタイムで観るに限るよなとしみじみ思ってしまった。よかったら西松屋さん、ブンバイオレットの撮影会を開催してください。その際には家族で張り切って行きますので。

■今週のスーアクさん

・蔦宗ブンバイオレットさん、好きだ。

 どうしよう、蔦宗ブンバイオレットさん、好きだ。「え~すきかも~!」とかいうレベルじゃない。もう結構本気で好きだ。 
 
蔦宗さんのお芝居は前々から本当に素晴らしいと思ってきたし、蔦宗さんがやってきた歴代のキャラクターもみんな大好きだ。舞台での全方向に気を配るサービス精神の豊富さ、触れ合った人全員を笑顔にするファンサービスの手厚さ、最前列から最後尾のお客さんまで満足させるパフォーマンスのクオリティの高さ。それはまるでディズニーランドのミッキーマウスのようで蔦宗さんのことはいつだって尊敬と憧れと、まっすぐな「大好き」の気持ちを持って応援してきたつもりだが、今回はちょっと今までと様相が違う刺さり方をしている。そのことに、私じしんが一番驚いている。(筆者は元々ディズニーのオタクなので、そんな私が「ミッキーみたい」と評するのは最大にして最高の賛辞であることを強調しておきたい)シアターGロッソで時代から蔦宗さんを追いかけてきたファンの方に言わせれば何を今更という感じかもしれないが、「蔦宗さんが持つセクシーさ」を、ブンバイオレットを通じて私は初めてきちんと「理解」したような気がする。いや、正確には蔦宗さんのバイオレットのビジュアルとお芝居に「分からせ」られてしまった、というべきか……。

 もうどこから「好き」を言っていいのか悩むレベルだが、ブンバイオレット、まずスーツの生地感から好きだ。(まずそこ!?)あの、ヒーロースーツというよりも「服」感の強いマットなレーサースーツ。それを身体のサイズぴったりに着ることで浮かび上がる蔦宗さんのマッシヴな胸筋と豊かな臀筋群のシルエット。よく「スーツアクターオタクはお尻の形だけで演者を見分けられる」だとか「お尻フェチの人が多い」とか言われるものの、実は筆者はこれまでそんなに特段臀部に惹かれることはなかったのだが、蔦宗さんのブンバイオレットのがっしりした下半身のフォルムの良さはすごく良くわかる。この体型だからこそ、低姿勢の名乗りポーズも映えるというものだ。スーツの紫と黄色の補色カラーリングも目を引くし、もう9割タイヤのマスクさえイケメンに見えてくるから不思議だ。初登場がこのスーツを身に纏った状態で、相棒のビュンディーと共に屋上で人の世を見下ろしているというシーンだったのも良かった。久しぶりの故郷はどうかと聞かれ、「別に。どうってことねえよ……ビュンディよぉ」と、ヤンクー座りのまま肘をついて呟く気怠さと、2人を見下ろす晴れ渡った青空とのコントラスト。ビュンディーのスーツアクトを務めるのはアクション部のリーダー(だと私は勝手に思っている)高田将司さんで、「高田JAPAN」でもお馴染みの2人の息の合ったやりとりも見ていて心地良いし、やはり何と言っても「ミステリアスなスーツのキャラの横に、どデカいイケボのロボがいる」という画ヅラの良さがハンパない。

 Bパート開始直後、スモークがもくもく焚かれたハシリヤンのアジトにビュンディーとのしのし入ってくるシーンもめちゃくちゃカッコいい。腰ではなく太ももに手を当て、歩きながら襟元をグイと緩めてみせる。そういうちょっとしたひとつひとつの仕草のサマになり方がすごい。そして「色違いのブンブンジャー」をしげしげと眺めるイターシャの顎をそっと手に取ってゆるやかに壁に追い詰め「仔猫ちゃん、地球にもブンブンジャーがいるのか?」と聞いてみせる、このキザ・オブ・ザ・キザ・オブ・ザ・キザさ!!三度の飯よりキザがスーツが好きな私の脳内ではセカンド自分がゆっくりとナプキンで口元をぬぐいながら立ち上がり「素晴らしい。シェフを呼んできてくれたまえ」と拍手をし始めている。(と、同時に筆者はイターシャ役宮澤雪さんのファンでもあるので、サード自分は「イターシャちゃんを顎クイに壁ドンだと!?うらやましすぎる!!間違えた!!けしからん!!」と別の意味で騒いでいたのだが、話がややこしくなるので割愛する)

 そんでもって刮目したいのはこの後。「待ち侘びましたよ、宇宙一の届け屋さん」とキャノンボーグに言われると、「違うんだなぁ」と人差し指を左右に軽く振りながら歩き出し、ダン!と音を立ててサンシーターたちがテーブル代わりにしていた木箱に足を乗せ、「俺は宇宙一の始末屋だ」と天を指すと、すかさずそこから降りて「揉め事、秘め事、ヨゴレの仕事!」と言いながらデコトラーデ、イターシャ、ビュンディーにそれぞれ絡み、ドラム缶に置かれたトランプを指先でくるりと裏返し「表も裏も始末をつける」とデコトラーデの額にトランプを飛ばし命中させる。「今度の始末はハシリヤン本家からの届け物だ」と言って元の木箱の上に片膝を立てて座ってみせる。カ、カッコいい〜〜〜〜〜〜〜〜!!!もう、このシーンの蔦宗さんの一挙手一投足があまりにもカッコよすぎて、何回観返しても台詞をぜんぜん聴いていられない。私が3歳児だったらあまりのカッコ良さに知恵熱を出し月曜日の保育園をお休みしていただろう。3歳児じゃなくて助かった。

 初バトルとなるソードグルマーとの戦いもとにかくブンバイオレットがひたすらにイケてる。「カオスな方に、転がしてぇのさ!」というブンバイオレットのちょっと何言ってんのか分からない決め台詞も、蔦宗さんが蔦宗さんらしいキレの良さでギュッと拳を握って猛ダッシュで走り出せばなぜかバッチリ決まってしまうのだから罪な人だ。剣を振り下ろしたソードグルマーの一撃をかわしつつ、スライディングしてソードグルマーの左足を掴んでターン、そのまま左足で敵の腰と膝の関節を蹴って跪かせ、その身体を飛び込み前転で超えてクルリと一回転する。人の視線を惑わし、よく見ようとすればするほどかわし続けられるような飄々としたアクションについ目と心を惹きつけられる。そして極め付けはついに両腕の剣が折れてしまったソードグルマーに「同じ場所に一点集中食らったら、どんなに鍛えていようと脆くなるってもんだ」と、柱にもたれたままネタバラシをするその姿……。ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』のフリン・ライダー(ユージーン)を描いたアニメーターたちが、「セクシーな男っていうのは常にどこかにもたれかかっているもの」と言っていたのを未だに覚えているが、スーツのヒーローも同じだ。柱に背中と片方の足の裏をつけて、腕組みをしながら話すスーツが格好悪いわけないだろう。この辺はアクション監督の渡辺淳さんのディレクションなのか、蔦宗さんのご提案なのかは分からないがもう本当にありがとうございますという感じだ。

 ブンブンジャーと言えば、5人中3人がすでに「人たらしキザ」「素直クール一途キザ」「AMSR系しっとりキザ」と「三種のキザ」でお馴染み(?)の戦隊であるが、追加する6人目もワイルドカオスキザときて、もうキザの大渋滞だ。キラキラ☆キザアラモードだ。ただ、どんなに格好付けていても最終的にはコツPONダンスに合流し、JAFの交通安全コーナーに放り込まれると思うとそのキザが孤高なら孤高な分楽しみになってくるのは私だけだろうか。ともかく、これから先斗が転がしていくカオスにしばし身を委ねつつ、蔦宗さんの計算ずくではない、かと言って完全ナチュラルというわけでもない、絶妙な匙加減のセクシーキザを心ゆくまで堪能したいと思う。あーーー!!かっこいいぜ!!蔦宗さん!!!

▲大好きな詩人の最果タヒさんの新刊詩集を買いました。寝る前に一編ずつ読むのが楽しみです。


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