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勉強会「パースペクティブの脳トレをしよう」レポート

先日、ブランドマーケティングエージェンシー(株)エフアイシーシー / FICC inc.からご依頼をいただき、勉強会「パースペクティブの脳トレをしよう」を実施しました。社員の方と打ち合わせを重ねて、綿密に準備を進めていただいて実施に至り、勉強会の目的と内容、参加された社員の方々の振り返りを含めて、レポートとして丁寧にまとめていただいています。


さまざまな企業・組織のブランディングを手がけてこられている企業ということから、普段の業務の中で、コミュニケーションのあり方、ブランドと社会の関わりを真摯に考えてお仕事をされていることを社員の方々との対話の端々から感じ、私も大いに刺激を受けた勉強会でした。
これまで、大学や高校の授業、教員対象の研修を行ってきていて、日々の生活の中で気になる・違和感を抱く広告の中での表現や、情報の受け止め方、読み取り方についてお話をするのですが、今回の勉強会ではとくに「パースペクティブ(視点)」を意識し、それぞれの視点をどのように理解して対話を深めていくのか、ということに主眼が置かれました。
勉強会の中でお見せしたスライドの一部を紹介します。

拙著は「目線」「観察」と、勉強会のテーマ「パースペクティブ」に直結する内容なので、どのような視点を大切にしているのか、ということをまずお話ししました。表現活動に関心を持って仕事、文筆活動に取り組んできたこと、また社会的な存在としての人の活動という側面ではなく、「社会性に回収しきれない側面を持った生き物としてのあり方」に興味があるということ、明快に言語化できない側面にこそ、表現としての豊かさの源泉があると考えています。

「視点」を説明する上でよく引き合いに出すのが、ヘルベルト・バイヤーが展示デザインの仕事を手がける中で描いた「視界のダイアグラム」人の視界や行動の仕方を基準に展示空間を設計するという考え方が示されています。また、人以外の動物と触れることを通して学べることも多いと考えているので、馬の視界(馬は死角が尻尾の部分しかない)を例に出して、同じ空間を共有していたとしても、その空間の認知の仕方が生き物によって異なることを知ることの奥深さについてお話ししました。馬との触れ合いについては以前にも書いています。

この勉強会はコミュニケーションのワークショップとしての側面を持っているのですが、その中で他の人とのコミュニケーションを図る上で大切だと思っている手順やポイントをまとめておきました。

Perspectives(さまざまな視点)から考えるためのポイント

  1. 見えている情報の特徴を認識・理解した上で、同類の広告を画像検索し、提出された画像と表現の仕方の違いや、表現のバリエーションを提示する。

  2. 複数の参加者が同じ広告を挙げている場合は、それぞれのコメントの記を確認して、着眼点、意見の違いを確認する。

  3. コミュニケーションの結節点を作るための「手数」を増やす

  4. 素材として使われているイラストや写真などの視覚表現のあり方、ブランドの性格や方向性に注目し、その中に含まれている要素・価値観を言語化する。

コミュニケーションの不全・分断を少しでも解消するためには

  • 一つのコミュニケーションの方法が有効でない、限界がある場合、代替の方法を作ることや、記録をしておくこと、俯瞰的な態度が求められるのでは。

  • 閉塞感を強める・断絶が加速する世の中にあって、他者とのコミュニケーションの結節点を作る営みが新しい価値の萌芽になる。

  • 直接対話で可能なコミュニケーションもあれば、文字化して時間を置いて眺める・検証することで見えてくることもある

見るという行為は、社会的なコミットメントでもあり、またコミュニケーションの中に位置づけられることを示すために、ジェイムズ・ボールドウィンとピーター・ドラッカーの言葉を引用しました。活躍する分野は違えど、「見る」ことにおいて真摯な態度を追求し、洞察を深め、多くの人に影響を及ぼした偉大な先人と言えるでしょう。

コミュニケーションに関わる仕事を手がけている企業での研修などのお仕事を、これからも手がけていきたいと考えています。実施にご興味のある方は是非ご一報ください。

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