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アンティーク・タペストリーの若手ディーラー

クリスティーズの学校は、各専門分野の講師が来て講義をするタイプの授業。学校長はいるけれども、彼は時々、時代概論や、家具というか「木材」についての講義をするだけ。
学校の代表としては、貴族出身のマダムがいた。
ある日、生徒の一人のエレーヌの友人ということで、フランス人男性がやってきた。彼は、タペストリーのアンティークディーラーらしく、専門家として講義を行うようだった。
1、2週間後、彼の講義があった。タペストリーは、家具ではないし、私はあまり興味ない。ロンドンのサザビーズの学校に、タペストリー専門ギャラリーの娘がいたなあ、とぼんやり思い出していた。講義が一通り終わり、彼が持参していた実物を見に、教室の前の方に行った。彼が、何か話しかけてきた。小鳥のような話し方で、よくわからない。ゆっくり繰り返した後、フランス訛りの英語で話してくれて、やっとわかった。
このやりとりを見ていた、彼を学校に紹介したエレーヌが、私を「バル」に誘ってきた。
バル? バルbal とは、舞踏会のこと。ただし、おとぎ話の中の舞踏会とは違って、必ずしもワルツを踊る必要はなく、最初の1、2曲後は、ディスコ・クラブミュージックになるということだった。ドレスコードは、男性はブラックタイ、女性はロングドレスだけど、別に昔みたいなドレスを着る必要はない。ダンスの前にディナーもあり、同じテーブルの人とは仲良くなれるし、素敵な人が大勢来てるからどう?と。

舞踏会だなんて素敵❣️ どんな感じか見るだけでも、おもしろそう❣️と喜んでお誘いを受けることにした。参加費が数万円するけれども、フルコースディナー代が入ってると思えば、そこまで高くない。住所を伝え、招待状を送ってもらうことにした。これが、私の舞踏会ライフの始まりだった。タペストリーの彼にも連絡先を聞かれ、短期貸家具付きスチュディオという仮住まい状態なのに、俄かに賑やかになってきた。ヨーロッパはクリスマス前の社交シーズンに突入です❣️

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