アメリカで戦うということ 〜吉田実代選手の挑戦〜
「戦うシングルマザー」として、米国に渡ってきたボクシング選手がいる。IBF女子世界バンダム級とWBO世界スーパーフライ級の二冠を制した吉田実代さん。
波瀾万丈な人生を乗り越えてきた強い精神力と、底知れない体力。
そして、つい周囲が手を差し伸べたくなる魅力を持った素敵な女性。
昨年12月に彼女が勝ち得たIBF世界女子バンダム級王座の初防衛戦が、昨夜マディソンスクウェアガーデンで開催された。
相手は昨年吉田選手が判定負けの苦杯を舐めたシュレッター・メトカフ選手。
その際のジャッジにも不公平感があったという因縁の対決。
夜7時半から前座の試合が続き、10時半過ぎにようやく試合開始のゴングが鳴った。
身長差10センチの高い位置からメトカフ選手がリーチの長いジャブを出すけれど、
吉田選手はビクともせず、果敢に低い位置から強い右パンチで懐に飛び込んでいく。
地獄のように長い1ラウンド3分間、吉田選手の足はまったく止まらない。メトカフ選手は手数が多いように見えるけれど、確実にヒットしているのは吉田選手で、何度も相手をロープに追い込んだ。
両者ともダウンのないまま、10ラウンドが終了。
試合を終えた吉田選手はノーダメージで、メトカフ選手は暗い表情のまま。
ところが、判定は3−0でメトカフ選手の勝利を宣告した。
8割以上が吉田選手のサポーターで埋め尽くされた会場に大ブーイングが響く。
Netflixの「極悪女王」を見て、プロレスリング界は「演出だらけの出来レース」だと痛感したけれど、ボクシング業界にもお金が動いているのかと思わざるをえない。
この国の正義はどこにあるのだろう。
移民が作り上げてきたこの国だからこそ、移民が戦う姿を受け入れてほしい。
海外で戦う日本人のことを、日本は国をあげて応援するべきで、
小さな身体で世界に挑む彼女のことを、ずっと応援していきたいと心新たにした。
大統領選挙まで、あと2週間。
正義がまかり通る国であってほしいと、切に願う。