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ミヤケマイ「クロヤギシロヤギ通信」展


京都新聞 2023年 9月30日掲載

 童謡『やぎさんゆうびん』は、クロヤギとシロヤギが、お互いから受け取った手紙を読む前に食べてしまって「さっきの手紙のご用事なあに」というやり取りが続く、不思議な歌だ。
 工芸、現代美術、古美術、文芸とさまざまなメディアを使うミヤケマイ が、4人の工芸作家と制作するこのプロジェクトは、当初雑誌で発表され、今展は展示バージョンとなる。

ミヤケマイの掛軸。軸先と手前の壺は安齊賢太


 漆を混ぜた陶土を焼いては磨くことを繰り返す安齊賢太の、闇のように黒い陶板に、ミヤケは箔と金泥でフクロウを描く。化粧土がひび割れた横山拓也の白い陶片は短冊に見立てて自作の小説の一節を添えた。また、九谷焼の意匠を引用する上出惠悟、釉薬を絞り出して緻密な文様を描く澤谷由子、4人ともに軸先をつくってもらい、掛軸という表現の中で、絵とやきものと、連想、想像のやりとりが試みられている。

表具から立ち上がる文脈、その「ご用事」は?


 ミヤケは、表具裂にフランスレースを使ったり、本紙にオブジェを貼り付けるなど、ミクストメディア作品としての掛軸を創造し続けている。そこには視覚的な遊びがあるだけでなく、取りあわせられた素材の属性やイメージが出会うことで文脈が現れる。その化学変化は言葉で伝えられるものではなく、要素のやりとりそのものに愉しみはある。そして、肝心の「ご用事」は、見る人に委ねられる。(MtK=岡崎南御所町 10月20日まで、日休

ミヤケマイ「立春大吉」。澤谷由子が軸先を、、、、撮れてなかった。
ミヤケマイ「出会いもの」と、安齊賢太の壺

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