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中谷芙二子「霧の街のクロノトープ」

「霧の彫刻家」中谷芙二子の作品が。2020年12月20日まで展示(というか実演)されている。2002年のスイスエキスポで、湖上に「霧でできた建築」というパビリオンが展示されているのをみたが、これも中谷さんの作品へのオマージュだったと後から知った。スイスの人工雲のような「建築」はレインコート着用で見学しないとビッショビショになったが、中谷さんの霧は、パナソニックの美顔器のようなきめ細かさ。匠の技ですね。

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会場は、京都のディープサウス東九条、通称「マンモス団地」跡地。土地勘のある人なら、ここがどういうプロフィールを持った場所だと知っているはずだ。以前一人でタクシーに乗ってここを行き先に告げたら「ややこしいところに行くんやな」とギョッとされたことがある。映画『パッチギ』の舞台である。チラシには、その土地柄について、こう説明がある。

この地域は、戦前戦後のの混乱、その後の都市開発による変容を受けながらも、違いを尊重しあい支え合う東九条ならではの文化を育んできました。

その文化とアートで交流がはかられていて、2019年には「東九条野外劇場 まちがつくる×まちがめぐる×まちがのこす」と、ひらがなだらけのイベントが開催されている。この霧の彫刻のチラシには「ヒトとヒト、ヒトと自然の新たな信頼関係へ向けて」と、カタカナだらけのコピー。この手のかな遣いから、何かを正面から見ることを避けおおせたようなドヤ顔を感じる、といったら意地が悪すぎるだろうか。

霧は付近の住宅にも盛大に流れて行っていた。

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新しい建物が並ぶ住宅地を霧が隠してしまったとき、今は「跡地」となって、見ることのできないこの地の歴史がもうもうと立ち上がってくるような心地がした。

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