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ねむっている家

 

 
 長い間
  ねむっている家の窓をあけたら
    あたらしい風が  吹き込む

 ねむっている家のなかで
  あたらしい風は ダンスを踊り
   ねむっている家は おどろいた

窓枠もドアも かたかたゆれて  ほこりが舞い上がる
 ねむっている家は
    あたらしい風に 頼んだ

「 おねがいだから 出て行って
  知らないリズムで おこさないで
 どうかしずかに 寝かせておいて
 そんな風な 変てこな 知らないダンスは大嫌い 」 

 あたらしい風は  かなしくなったけれど
  風だったので  止まることができなかった

 あたらしいリズムの  あたらしいおどり
  道ゆく人もふりかえる
  いつの間にか咲いた    あたらしい花のよう

 ーねむっていた家は  大きな声で


「 あたらしいから すべて良いとはかぎらないわ
  古いもののなかに  すばらしいものが たくさんあるのよ
  あなたはなにも わかってない
  あなたはまるで 知らなさすぎる 」

あたらしい風は 
しずかに 耳をかたむけて
ねむっていた家の話を たくさんきいた


つらい戦争や 大きな災害があって
命からがら   くぐり抜けてきたこと
大好きだった人が いつの間にか出て行って
その人の好きだった花が 庭で  毎年咲いたこと

あたらしい風は そんな彼女を抱きしめて
風の強い午後に いっしょに なみだをながした

いつのまにか彼女は あたらしい風のことが好きになり
  ふたりは  ともだちになった
 ともだちになるまで しばらく時間がかかったけれど
 ふたりは  とてもうれしかった


だってそれは 奇跡のようだったから
ふたりには はじめてのことだったから
 
 

 
 
 
 

☆お読み頂き本当にありがとうございます!とてもうれしいです (〃^ー^〃) ☆💕💕💕