#10 All Of A Sudden - 突発性難聴になった話。

ちなみに英語で「突発性難聴」はSDやSSHLと略すことが多い。それぞれ、Sudden DeafnessまたはSudden Sensorineural Hearing Lossの頭文字から来ている(Wikipedia先生による)。

なぜこんな話をしているのかといえば、「突発性難聴」になってしまったからだ。偶然にも今年の1月に妹が突発性難聴になっていた。まさかその3か月後に我が身にそれが降りかかるとは。まったく、「一寸先は闇」とはよく言ったものだ。放置していればどんどん悪化するのが突発性難聴なので、「あ、これもしかしたら突発性難聴くさいな」と思った時点で妹にどの病院に行けば良いかや治療はどういうふうに進むのか、治療費がどのくらいかかるのかなどを相談するために連絡を取れたのは良かったと思う。妹の突発性難聴のケースが私に役立ったように、ここからのエピソードが、臨床研究や、ある日突発性難聴になった人の役に立てば幸いである。

第1章 発症初日

思い出せば、それは昨日の朝始まった。起きたときに右の耳に何やら詰まっているような感じがしたのだ。耳かきをしてみたものの効果はなかった。しかし、どうせいつもの中耳炎っぽい状態でしょうと侮ってしまった。なんとなく耳に違和感はありつつも、大学に行き自習をした。自習中、学食で夕食をとった後だったので夕方の6時頃だろうか。突如として掃除機のような耳鳴りがした。ダイソンの掃除機のように吸引力が衰えないどころか、次第にその吸引力が上がっていった。やがて、聞こえ方に違和感が現れた。

その違和感の正体を突き止めたのは、帰り道にある音のなる横断歩道でのことだった。左耳を塞いでみると、鳴っているはずの歩行者用横断歩道の音が全く聞こえないのだ。少しだけ安堵したのは、しかしそれでも車の音は曖昧とはいえ聞こえたことである。「完全に聞こえなくなることはなさそうだな」と思えただけでも心強かった。

もうこの時間になると耳鼻科は開いていない。明日の朝までに何ができる?そう考え、先に言ったような内容を妹に相談したり、難聴の症状がこれ以上進行しないうちに推しの声を聞けるだけ聞いておきたいと、Sp○○nという配信アプリを聴いたりなどして今朝までの時間を過ごすのだが、一つだけ問題があった。寝るときに右耳を下にすると耳詰まり感が余計に増大したのだ。普段は右側を下にして横向きに寝るので、これはさすがに辛かった。

第2章 2日目-1: 通院か、あるいは入院か?

突発性難聴の予後はそれほど良いわけではない。3分の1が完治し、3分の1が回復しても難聴が残り、残りの3分の1は治らずに終わる。勝てる確率はジャンケンと同じだ。早期にステロイド薬を使った治療を行なった場合でも、全体の約3割が完治し、約5割が完全ではないものの改善するものの、残りの約2割は改善されないそうだ。もはやガチャとしか言いようがない。(※幸いにも妹は完治した)そして、場合によっては入院治療を行うこともある。私はこのパターンになった。1000Hzの音が70dB程度まで聞こえなかったのだ。

今朝は2つの病院に行った。1か所目は町の小さな個人病院だ。ここで「あー、やっぱり突発性難聴ですね」と言われた。正直、メニエール病などの他の厄介な病気でなかったことにはほっとした。そして2か所目が、1か所目の病院で紹介状を書いてもらった結構大きな病院だ。

2か所目の病院のガイドラインでは60dBの大きさの音が聞こえない場合には入院治療となっている。入院治療できない可能性ももちろんあった。ただ、コロナ禍のなか、運よく病床が空いていたため入院治療をすることになった。この手の悪運だけはつくづく恵まれているのだと思う。

入院治療では、飲み薬の処方に加えて強力なステロイド剤の点滴が行われる。どうやら通院治療であってもステロイド剤の点滴は行われるらしいのだが、それよりもさらに強いものだ。点滴なんて大嫌いだ。痛いのはまだ我慢ができる。気分が悪くなるのが嫌なのだ。点滴の途中でお腹がタポタポになって吐いた記憶がトラウマになっている。それから、血管の外に漏れて腕が痛くなるのだって当然嫌だ。

入院で怖いのはお金の話だ。妹の突発性難聴のケースでは軽症で済んだこともあり、入院治療は不要と言うことで治療費は5000円程度で済んだそうだ。だが今回のケースは入院治療を行うケースである。これは入院手続き後に知ったのだが、治療費の見積額が14万円だというのだ。高額医療費支給制度(高額療養制度)が効くので自己負担限度額を上回るぶんは払い戻しを受けることができるが、それにしても1週間の入院で14万円とは思っていた以上に高かっただけに、高額医療費支給制度のありがたみを感じた。(とはいえ、高額医療費支給制度が財政に与える影響について無視することはできない。医療経済学が取り組んでいる主要な問題の一つは、高齢化などにより財政が逼迫する中で、一般的には低所得者層ほど医療サービスのニーズが大きいという点を踏まえながら、財政問題と公平性のトレードオフに対峙することである。今回は経済学のブログ記事ではなく突発性難聴のブログ記事を書くつもりなので、その話は一旦棚上げにしよう。ってかそもそも医療経済学にはそこまで詳しいわけでもないし。ご時世を踏まえるとやっておく必要はあるんでしょうけどね。)

ともあれ、突発性難聴の入院治療には高額医療費支給制度(高額療養制度)が効くようである。近年では「コミュニケーション能力」が就活でも最優先事項となっていることを踏まえると、難聴がもたらすデメリットはあまりに大きいように思われる(←もちろんこれについて思うところはある)。それに比べれば、14万円の入院費用は意外と安いのではないだろうか。もちろん払わずに済むのであればそれに越したことはない支出ではあるが。

さて、こうして晴れて(?)入院生活が幕を開けた。どのような入院生活が待っているのだろうか。治療結果はどうなるのだろうか。この続きはまた明日以降。

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