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自分が本当にしたいこと

幼いころから絵を描くのが好きで、中学時代はイラストレーターなどの漫画やアニメに関する絵を描く仕事に就きたいと考えていました。とっても漠然としていて、ネットが普及していたといってもなかなかそういった情報が得られる環境ではなかったので、子供なりの「なりたい」という考えでした。

高校生になって美術部だけでなく、文学部にも入り、小説を書き始めました。絵を描くだけでなく、文字を書くという楽しさを見つけることができ、大変充実していたですが、より具体的に将来を考えなければならなければなりませんでした。もちろんイラスト関係の仕事に就きたいという思いはありましたが、そのことを考えるだけで、まるで目の前が深い霧に覆われたように感じました。当時、立て続けに家族に不幸があり、「自分の将来は本当にこれでいいのか。一人でも生きていける道なのだろうか」とより一層考えるようになりました。そんな時、私は心理学という学問に出会いました。私は早速心理学について調べ、目の前にあった霧が晴れたような気分でした。人にとって切っても切れないものが心理学であり、私はその中の一つの分野を学びたいと強く思うようになり、芸大ではなく、資格取得のための大学院を見越して心理系の大学を受験し、合格しました。

大学生となり、新型コロナウイルスという世界的な出来事が起こったりしましたが、私は順調に大学院への道を歩んでいました。
しかし、大学3年の時に高校生の時と同じように「本当にこのまま進んでいいのか」と悩みました。授業は順調でしたし、単位を落とすこともなく、次の学期で実習も受けることができるとなった時でした。講義を受けていくうちに、私がしたいことと今学んでいることに差が大きくなってきていると感じ、自分が壊れていくような感覚に陥ったのです。けれど、私は高校時代から資格のために大学院に行くことしか考えておらず、なにより親に大学へ行かさせてもらっているという意識が強くて、なんとしても大学院へ進まなければならない、親に怒られるとばかり考え、進路変更など頭の片隅にもありませんでした。どうしよう、どうしようと必死に一人考えていた時、当時取っていた講義の中に、大学のOB、OGの方を招いて進路について語っていただくというものがありました。特に興味はなかったのですが、その科目が取得推奨科目だったので、単位目当てでとっていました。最初この講義を受けた時、大学のOB、OGの方を招くとは知りませんでした。知らない人の自己語りを聞かされるのかと思っていました。けれど、ある一人のOBの方の話を聞いて、私の考えは百八十度変わりました。

その方は私と同じく、大学院を目指していた方でした。しかし、結局大学院へは行かず、大学時代に『自分が本当にしたいこと』を見つけ、進路を変更し、したいことをしているとのことでした。この話を聞いた時、私は目からうろこ状態で、自分の価値観が広がったような気さえしました。そのほかにも、進路を変更した、これから転職を考えているといった方々がいらっしゃり、私はそこで初めて、「進路って変えてもいいんだ。許されることなんだ」と本当に、心から嬉しくなりました。そして、私は『自分が本当にしたいこと』とは何かを考えました。けれど、答えはなかなか出ず、気分転換に忙しくて書けていなかった小説を書いてみることにしました。小説を書いているとき、本当に楽しくて、自然に「これが『自分が本当にしたいこと』なんだ」と感じ、趣味でも何でもいい、小説を書いて暮らしたいと願うようになりました。

それから少しして、趣味で一冊の小説を買いました。それを読み終わり、なんとなく一番最後のページを見てみると、小説大賞の応募要項が記載されていました。私は今まで、ネットに投稿したり、ネットで行われているハッシュタグに指定の名前を入れる系のものには参加したことはありましたが、受賞どころか応募できているのかすら分からない状況で、なんともいえないものでした。けれど、今回の小説に載っていた大賞は出版社に実際に送る形式だったので実感は湧きますが、ハードルが高く感じてしまい、どうするか迷ってしまいました。そんな私に祖母が、「送ってみたら?」と言ってくれました。たったそれだけの言葉でしたが、私には大変心強く感じました。

私は小説を書き、それを出版社に送りました。送って初めて、大きな壁を乗り越えたような感じがし、とても爽快な気分になりました。今なら何にだって挑戦できるような気さえしていました。そして、先輩方の話と小説への思い、謎の挑戦心が私の背中を押し、進学から就職へと進路を変更し、怖くて仕方がなかった親に「就職する」と打ち明けることができました。結果、無事に受け入れてもらうことができ、就職に向けての一歩を踏み出すことができました。
さらに、一歩踏み出したおかげで小説大賞で受賞し、作家としての道も歩めるようになり、私の夢が半分叶うという驚きがありました。就職に関しても、進路を変更したことで自分をがんじがらめにしていた枷が外れ、自分を見つめ直すことができるいい機会になったと感じています。


人生には数多の選択肢がある。私たちはその選択を選びとって今を生きている。その中で、善いことや悪いことなんて一つもない。あるのは成功と失敗だけ。一歩踏み出したからと言って、それはもしかしたら失敗かもしれない。けれど、その一歩を踏み出さなければ、人は何も得ることは出来ないし、何もなし得ない。しかし、新しいことをするのはとてつもない勇気がいる。だからこそ、一歩踏み出した世界には、素晴らしいものが待っているのだと、私は思う。

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