見出し画像

蜘蛛の尻尾を持つヘビ「クモオツノメクサリヘビPseudocerastes urarachnoides」



前書き 

 こんにちは!
 三日月あかりだよ! もうややこしいので三日月ミカヅキでも三日月ミカゲでもよいことにしたよ。
 今回紹介する生き物はPseudocerastes urarachnoides
 ただ、学名はわかりにくいので彼らがツノメクサリヘビ属であり、その見た目の特徴からクモオツノメクサリヘビと仮称するよ!

(スパイダーテイルド・クサリヘビなどと呼ばれることもあるけどダサいしね!)

第3回「クモオツノメクサリヘビPseudocerastes urarachnoides」

 蛇蝎だかつ、という言葉があるよ。
 ヘビやサソリのように嫌われている、ということなのだけど……本種を表すなら蛇蛛だちゅという言葉が相応しいかな。
(ヘビもサソリも素晴らしい生き物だけどね!!)

 さて今回紹介するクモオツノメクサリヘビはこんな感じのヘビ!

credit : hossein_nabizadeh / CC-BY-NC

 ……保護色になってるね!

和名:なし
学名:Pseudocerastes urarachnoides
(有隣目クサリヘビ科ツノメクサリヘビ属)

 クサリヘビ科に属するヘビはほとんどが有毒で、本種もその例に漏れず有毒で細胞性や血液凝固作用を有しているようだね!
 本種は2006年に記載されたばかりでヒトとの関わり合いもまだ少ない生き物。わかっていないことも多くこのNoteの情報もいずれアップデートするかも!

 生息地は一部のイラン西部とイラク東部との国境、すなわち非常に狭い範囲に固有の動物なんだね。


「クモの尻尾を持つヘビ」

 さて、そんな彼らの最たる特徴はその尻尾!

Credit: Avian deception using an elaborate caudal lure in Pseudocerastes urarachnoides (Serpentes: Viperidae)

 このように先端に丸いコブ状の、そしてそれまでいくつもの尖がったいくつかの突起を持っているんだ。
 この画像は左上から右下へ、全体の長さが短い個体から長い個体へと尻尾を並べたもので成長段階ごとにどんどん発達しているようなことが見て取れるね!

 この尻尾が「蜘蛛尾クモオ」と僕が仮称する理由だよ。
 彼らの尻尾はまさしくクモのような形状になっているんだね!

 ではこの尻尾はなにに使うのかというと……

Credit : Avian deception using an elaborate caudal lure in Pseudocerastes urarachnoides (Serpentes: Viperidae) (adapted)

 このように8の字に動かして使うんだ。
 ガラガラヘビの仲間などは尻尾を小刻みに揺らして威嚇をすることで有名だけど本種は威嚇とは真逆、むしろ獲物を誘引するためにあるんだね!
(ちなみに構造もガラガラヘビとクモオツノメクサリヘビでは全く別物なんだ)

(※捕食シーン。上記GIFのロングver)

 彼らはクモのような形となっている尻尾は獲物を誘うためのルアーの役割をしているよ!
 獲物となる鳥がいると尻尾を揺らす頻度が増えるんだ。
 尾の先を鳥に突かれてから攻撃するまでにかかる時間はたったの0.2秒程度と非常に素早いのが驚きだね!

 ただ、このルアーは地元の鳥には知られているみたいなんだ。
 2015年に発表された研究では彼らの尻尾のルアーに引っかかるのは渡り鳥だけ。地元にいる留鳥は引っかからないのである!

 こういう生き物の相互関係が一番興奮するんだから。
 間違いないね。

 また、このルアーも万能というわけではなく一部の個体ではおそらく鳥に突かれてそのまま破損してしまう例もあるんだ。
 自分の一部を囮にする、というのは危険も伴うわけだね!

 尻尾をくねらせることで獲物を引き寄せるヘビはほかにも多くいるんだけど、尻尾の先をここまで精巧に他の動物に似せたヘビはクモオツノメクサリヘビのほかに前例がないよ。
 僕がこのヘビを大好きな理由のひとつだね!


同属との比較

ツノメクサリヘビ属Pseudocerastesの3種類
Credit : Pseudocerastes urarachnoides: the ambush specialist

 ツノメクサリヘビ属には現在3種類のヘビが属しているよ。
 左の列がフィールドツノクサリヘビP. fieldi、真ん中の列がツノメクサリヘビP. persicus、そして右の列がクモオツノメクサリヘビP. urarachnoidesだね。

 同属なので当然姿は似ていて、名前の由来となった目の上のツノ状の突起が特徴的。
 また最下行を見れば左側二種の先端部分のウロコは黒く、そこまで発達していないのに対しクモオツノメクサリヘビの尻尾のウロコが異常に発達しているのがわかるよね!

 獲物となる動物も違っていて、フィールドツノクサリヘビやツノクサリヘビでは鳥類とネズミなどの地上の小動物を食べるのに対してクモオツノメクサリヘビは(おそらく)鳥類に特化しているんだ。
 鳥のみを食べることから他の二種の「咬んでから放すバイトアンドリリース」を行うための神経毒を一切持っておらず、強力な細胞毒性と出血凝固作用で獲物を仕留めるんだね!

 こうして比較すると独特の尾や毒などの捕食戦略を「属」単位のような広い範囲で進化させたのではない……
 すなわちクモオツノメクサリヘビという種で独自に発達した、ヘビの中でも屈指に興味深い特徴だと僕は考えるよ!


後書き

 以上、僕の推しヘビのひとつであるクモオツノメクサリヘビのご紹介!

 余談だけど動物に少し詳しい方なら「ヒヨケムシ」っていうクモガタ類の仲間を知っていると思うんだけど、本種の尻尾はクモというよりもヒヨケムシに似ているよね。
 クモオツノメクサリヘビが分布する地域にも何種類か生息しているよ。それでもこんな形態にもなるなんて生き物の世界は興味深いよね!

 上でも述べた通りヘビは発見されて日が浅い生き物!
 こういう面白い生き物は未発見でも世界にまだまだいるんだからたまらないよね!
 さて、次はどんな生き物にスポットライトを当てようかな!


クモオツノメクサリヘビと渡鳥と留鳥
……たぶん

<参考文献>

#三日月あかりの生き物紹介 #爬虫類 #ヘビ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?