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かおは木刀

わたしが暮らす街は田舎なこともあり、人も少ない
ところ。当然、近所にも歳の近い女の子はゼロ。

子どもの頃はいつも歳の近い男の子と遊んでいまし
た。特に仲良くしていたのは裏に住む一つ下の男の
子でした。

学校が終わってその子の家に遊びに行ったトキのこ
と。


「今日はチャンバラごっこをする」


と彼は言い出しました。けど、わたしはお人形は持
っていてもチャンバラをするための刀がありません

「わたしは刀を持ってない。」

そういうと、その男の子はこう言いました。

「つまんねーの!遊べねージャン!!」

わたしはどうして良いかわからずそのまま家に帰り
ました。そして、祖父と祖母がいる部屋に入り2人
の間に座り込みました。

「どうしたん?今日は早いねぇ!!」

祖母に尋ねられわたしは答えました。

「チャンバラごっこしようやぁって言われたけど刀
 がなくて遊べんかった・・。」

祖母は黙ったままわたしを引き寄せ、抱っこしてく
れていました。祖父はいつの間にかいなくなってい
ました。

わたしはいつの間にか祖母のベッドの中に潜り込ん
だまま眠り込んでいました。目が覚めた頃にはもう
夕ご飯の時間です。

私はすっかり昼間のことは忘れ、祖母の作る美味し
いご飯を食べていました。祖父がわたしを呼ぶ声が
聞こえてきます。

聞こえないふりをして食べていたら、木刀を持った
祖父が現れたのです。何とも言えない香りと共に。

その香りは生々しい木の香りでした。

「かお!見てみぃ!!おじいちゃんがイイのを作っ
 てやったで!」
「これでかおもチャンバラごっこして来い!」
「そこらの刀よりかっこイイのをおじいちゃんが作
 ってやったで!」


それは裏庭にある木の枝を一本のこで引き、祖父が
手作りしたものでした。ついさっき切ったばかりと
いうこともあり、木の香りがプンプンします。

刀のブブンはキレイに手削りされ、それらしい形に
してあります。そして持ち手は木の皮を残し、部分
的に彫刻刀で✕印に飾り模様が彫られていました。

「おじいちゃん、ありがとう。」

わたしは祖父に言い、木刀を手にしてみました。
動かすたび、木の香りがします。

近所の男の子が持っていたプラスチックの可愛い刀
とは違っていました。

見た目が少し変わってるこの木刀に、恥ずかしいと
いう気持ちを通り越していました。祖父は何かにつ
け、わたしを気遣い、色んなものを作ってくれてい
ました。

もちろん翌日はこのお手製の木刀を握りしめ、元気
よく男の子の家に遊びに行きました。

それを見た彼は驚いて


「どうして木製なん?」


と尋ねられましたが、内心わたしは、

(そんなもん、おじいちゃんが作ってしもうたんじ
 ゃけぇ、しょうがないじゃろ!)

と言う思いから、


「もう聞くな!」


という気持ちを込めて

「カッコいいじゃろ!!」


とだけ答えておきました。

何かにつけ、わたしを気遣い色んなものを作って
くれた祖父。ただ、いつもちょっと行き過ぎてし
まう破天荒な祖父。

わたしの手先が器用なのも、型にはまらない人生
なのも、この祖父の血を受け継いでいるからかも
しれません。

祖父はわたしの誇りです。


↑ おもちゃの刀イメージ

~かおのことが気になるあなたへ~

分かりやすそうに見えて、
なにか掴みどころがないと言われるわたし。
他のnoteも手にとってみてくださいね。
そこにヒントがあるかもしれません。
大切にしてきたベースとなる考え方などお話して
います。どうぞこちらもご覧くださいね。


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