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2020.06.11地球にうまれた小さな家

わたしが藤野に移住したのが2009年。藤野のなかでも、小渕、名倉、牧野、小渕、そして牧野へ。
移動回数も多いな〜と思いながらふりかえります。
2008年にパーマカルチャーセンタージャパンで受講しながら藤野に毎月通い、里山長屋暮らしという4軒長屋づくりのプロジェクトに参加し翌年移住しました。
パーマカルチャーを知り、自分たちで小屋を作ったりして、購入することよりも、自分でつくることの楽しさを知りました。
コミュニティを知り、自分でつくれないものは、顔を合わせ知り合いから求めようと思いました。
そして、一人ではできないけれども仲間がいればできることも知りました。
今、振り返っても4軒続きの長屋と共有棟。すべての壁を竹小舞でつくり、土壁を塗る。そんなプロジェクト、ほんとにみんながいたからできたんだなと、つくづく思います。
その長屋に住むことでその思いが補完されていくのだと思うのですが、転居することになり、住み続けることが叶わなかったのは、いろんな意味でのわたしの浅はかさだったんだなと、無念に思っていました。

エコロジーでつながるコミュニティのかたち ~里山長屋
https://share-living.jp/country/post1463/

発端は、暮らし。地球一個分以上のエネルギーを使う毎日。
石油や、枯渇していくエネルギー、営利目的で地球の循環をないがしろにするシステムに依存したくない。自給自足はできなくても、一個分の地球の循環を意識した暮らしをしたい。地球の温暖化を容認したくない。
一人で暮らすことになったときに、これまでトランジションタウンの活動や藤野で培ったものを生かす暮らし方がしたいと思いました。
暮らす場所と家のイメージは、
・コミュニティがある場所
・森や林を散歩できるところに近いところ
・木や植物を植えられるところ
・木造住宅
・ライフラインをなるべく自然エネルギーで自給したい
というところでした。

母が家を駅の近くに家を建てていて、いっしょに住むのが順当なんだろうなと思ったのですが、どうしても場所が違うので、どうしようかと思っていました。
そこで、しのばらの地域が浮かんできて、中古物件を探してリノベーションして住みたいという想いが浮かんできました。
物件探しをしている中で、日当たりのいいところ、手頃な大きさなど、なかなか叶うところが見つかりません。
と、「ここの土地を売ってもいいそうだよ」という話が舞い込んできました。
おー、日当たりも環境も抜群!土地も高くない!
えー、リノベにもお金かかるけど、あっというまに建てるくらいかかるよね?!建てるのはどうだろう?!
という相談を母にしました。幸い、資金面は母が協力してくれて最後の財産をあてがってくれました。

小さな家にしよう。というのは、最初に浮かんだことでした。
長屋の一軒の建坪も11坪(2階建て)。今回は10坪とロフト。
設計は私がチョイスするものはきっとわかっているだろうな、と思われる親友の池辺潤一さん。
思った通り、自然のエネルギーを取り込める、南面をうまくつかえるような設計を考えてくれました。いろんな余白もあって、いい感じです。
工務店は、創和建設さん。里山長屋からお世話になり、自然住宅へと転換されました。
手間暇かかる自然住宅を尊重し、藤野らしい家づくりをされています。
今回の家の材は、井上製材さん、藤野の南の先、青野原の杉材を製材していただきました。

そして、自分やってみた家づくりのあれこれ。
・土地の登記変更
・外壁の焼き杉加工
・壁と天井の漆喰塗り
・焼き杉作業、漆喰塗りの作業をみなさんに手伝っていただきました
・タイル貼り
・キッチンまわり(業務用)、照明器具などの手配
・【外注】玄関扉 高橋政行さん
・【外注】手すり 高橋政行さん
・【外注】外壁の杉板加工 studio y.e'sさん
・【外注】食器棚、本棚、カウンター studio y.e'sさん
・【外注】つくりつけのクッション 石毛了一さん
・【外注】外構 鈴木豪さん
・【外注】薪ストーブ 山林舎さん
・【購入】ほたて漆喰(北海道豊浦) 大橋三千雄さん
・【購入】炭 篠原の里炭焼き部さん
・【指導】焼き杉加工 長崎克央さん
・【指導】漆喰塗り まる松組 山口由香さん
・【施工】オフグリッド 藤野電力 鈴木俊太郎さん
・【施工】物置小屋づくり 鈴木俊太郎さん
・太陽光温水器の手配
・雨水タンクの設置
・インパクトを購入したので、棚やパイプのとりつけはこれからやってみようと思います。
・コンポストの設置
・建物登記
・他は、引っ越しにともなういろいろな細かな作業。

今回、ちょうど新型コロナウイルス感染のための自粛に伴い、漆喰塗りのワークショップが大々的に開催できなくて、コツコツと自分で塗ることにしました。
仕事もあるので、合間を縫って、お手伝いも少しお願いしたりしながら塗りました。
ご縁をいただいた、左官屋さんのまる松組の山口さんは、何かと気にかけてくださって何度も来ては、漆喰を練ってつくってくださいました。
また、焼き杉の加工を教えていただいた長崎さんも、漆喰の山口さんも、指導のお礼は藤野地域通貨のよろづがいいとおっしゃいました。
ここでもよろづのつながりが。
ワークショップによっていろんな人と交流できるのもよかったとおっしゃってくださって、ほんとに嬉しいです。

そして、今回(も)ほんとにたくさん手伝ってくれたのは母でした。
今年80歳。健康で足腰も丈夫なので、ついついお願いしてしまうのもあるのですが、コロナ禍で家から出かけられず、家で暇そうにしているところを連れ出して、タイルを貼るときには受け渡ししてもらったり、ついには、壁塗り、漆喰塗りまで手伝ってくれました。来てくれたお友達に、となりの空き地に生えているフキをせっせと摘んでお土産にわたしたり、掃除やら後片づけやら。
のれんを縫ってくれたりもしています。
もう、30年前くらいから母娘でなんとか暮らしてきたという感があります。
感謝という言葉しかありません。

こんなかたちで、土地を購入したのが2018年の暮れ。約1年半がかりで家が完成しようとしています。

その他にもいくつかストーリーがあります。
扉について。
藤野の素敵なお家はたくさんあります。いろいろと見ているなかで、気持ちが上がる扉ってあるんだなと思っていました。
わたしの家のある場所の目の前に、藤野の緑のラブレターの制作者、高橋政行さんが住んでいらっしゃいます。移住当時からいろいろとお世話になっています。
今回、この場所でまささんにお願いしない手はないと思いはじめ、相談に行きました。
快く引き受けてくださり、どんなテーマにしようかと話したときに、わたしの頭に浮かんだのは地球でした。地球を意識した暮らし、家。循環やつながり、生きとし生けるものによって生かされていることがイメージできる、いのちのよろこびのようなものを思いました。
まささんからは、このお題は自分のテーマとまさにかぶっているので、かえって難しいな〜と笑っておっしゃいました。
そして、まささんからいただいた図案がこの扉のものでした。
すごいシンクロで目を疑いしました。
そこに描かれているのはわたしそのものと言ってもいいかもしれません。
一番最初に目に入ったのはタンポポ。
わたしの社会変革の師匠でもあるジョアンナメイシー女史が提唱する、ともに痛みを分かち合う、コンパッション(慈悲)の生き方、生きる源であり、産業経済成長型の社会から、生物持続型への社会への転換のための「感謝からはじめる、世界の痛みを感じる、新しい目でみる、前へ進む」このスパイラルを回していく説明に、タンポポの絵を使います。
その絵がわたしの中にあり、そしてタンポポは大好きな植物で、根っこ、花、葉全てを食することもできて、滋養にもなります。
命の源でもある太陽と月。そして、百合。
ゆりは、幼稚園でゆり組になったときから好きな花になり、マリア様に捧げるゆりがとても好きでした。
そして、その生きとし生けるものたちが生きる地球。
まささんからは、タンポポは東洋と西洋の生態系の多様さの象徴であり、花にあつまるミツバチを連想させる。ミツバチは種をつくるための大切な生物でもある。
バランスと多様性と循環性と和合。そんな意味が込められていると話してくださいました。
出来上がった扉の太陽はよく見ると笑顔です。
本当にすばらしいシンクロが生まれたと思いました。
手すりもお願いしました。
見た時には、家全体の統一感にしっかりとはまり、引き締めてくれる存在になりました。扉も手すりも栗の木。スタジオイエスさんにつくっていただいた本棚も栗の木。しっくりとなるわけです。これも偶然です。

そして、顔が見える人との家づくり。
里山長屋をつくったときに、たくさんの人との出会いがありました。
ワークショップをたくさんしたということもあります。おそらくのべ何百人の人が来てくれたと思います。
段取りや、告知ややりとり、送迎、ご飯作りなど、大変はたいへんなのですが、みんなといっしょにつくることが、わたしにとってはなんとも言えない嬉しさなのです。
今回も少しでもいっしょにできればとできたこと。
そして、藤野で知り合ったたくさんの出会いによって、それぞれの仕事が生かされていること。
地産地消。地元の職人さんに支えられる家づくり。
地元にお金を落とせること、つくる工程がみえること、メンテナンスが必要なときに頼みやすいことはとても魅力です。
里山長屋のコンセプトを、長年住み、知り合いが増えたからこそ、さらに多岐に渡ったてできた気がします。
家のなかのそこここにいろんな人の足跡があり、それを感じながら暮らすことの豊かさにつながります。
地元の職人さんとも知り会えます。長屋でお世話になった職人さんにも再び仕事をしていただけました。
みんなの家。そんな家づくりをしたいと思っていました。

この家ができたあとですが、もちろん、いろんな人が出入する家になればいいなと思っています。
ちいさな家ですが、大きな本棚をつくったのは、今まで活動してきたトランジションタウンの活動などで、いただいた資料やつくった書類がたくさんあるから。
そして、そのための資料や書籍がたくさんあります。
これらをみんなでシェアしたいから。
住みながら、家のまわりに循環をたくさん作っていきたいと思っています。
地球のエネルギーに配慮した家づくり、暮らしづくりのヒントを提案することができればいいなと思っています。

奇跡のようないえづくり。あと数週間で完成です。

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