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割れた血流

#EngagedBuddism文学

水の一つ一つが紅く染まって、泳ぐ魚は影の隠しようがなかった。上空からやってくる爪先の誘いを断ることは難しく、彼らは次々と犠牲になっていった。酷く水分を欲していた私は、その色がよせと言うのも聞かず、手のなかに一杯の水たまりを作って一気に飲み干した。魚の群れが一列に並んで黒い線が一本、流れのなかに引かれ私の目には川が二つに割れたようにみえた。泳ぎの勢いは増し、渦が一つ巻き始めると中心から底の土が顔を出した。その穴に私は立って、歩き始めると魚たちも付いてくる。王者の気分とは、このように付き従う者が、道を開拓してくれるのだろうかと訝しんだ。いつかは溺れ流される運命だったとしても、足跡さへ残ればよかったが、それも紅に飲み込まれた。




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